先のエントリーでは神永氏の『不透明な時代を見抜く「統計思考力」』に触発されて、株式に代表される投資商品はベキ分布で平均や分散が無いかもしれない、ということを書きました。



では、




それを踏まえた上で




投資する個人投資家としてはどうしましょう?







長期分散投資の世界で絶対的なメジャーのごとく存在していた平均と分散がぐらついたのです。どうやってリターンとリスクを考えましょう?



困りました。






そこで



私は



どうしているかというと・・・






平均と標準偏差を使います。



「何じゃそりゃ!!?」という突っ込みはご勘弁を。



不正確を大前提とした超簡便法として使うということです。自分なりにアレンジして使っています。
リスクについては、当初より想定を1標準偏差くらいは広げます。±3σ位で95%の範囲に収まるくらいと見積もっています。
長期投資の覚悟の上での最悪のケースの想定は4σくらいまで。これだと日本株では単年度で-80%くらいまでは覚悟の上ということなので、覚悟として不十分ということは無いでしょう。(対数正規分布で考えると少し違いそうですが、このあたりも超簡便法としてご容赦を)
これを超えて下がったら・・・どうしましょう。バブルがきた時には+100%程度はありそうですので、±4σはそれなりに悪くない水準ではないと思いますが・・・これ以上に上下にぶれることもあり得るでしょうね。でも、1年で-99.9%のようなケースを考えていては何もできないので、そのようなケースには目をつぶります。

なお、平均こと期待リターンは、過去の長期リターンの平均より1-2%程度低い水準を想定しています。これはアメリカ株や日本株というのは経済的に成功した国々なので、現在になってその国の株式市場を選んでパフォーマンスを測定するのは後付説明の要素があると考えるからです。
現代まで生き残って資金の集まっているファンドだけを集めて、過去のパフォーマンスを測定するとパフォーマンスが高くなります。現在先進国として健在な国の株式市場だけを集めて過去のパフォーマンスを図ってもファンド同様な気もします。
ですから、期待リターンは過去データより少し低めに見積もっています。




上記の考えの中で、最重視しているのはリスクを過小評価しないことです。
家庭の事情等の要因を除いた、純粋な投資の世界における投資継続の危機はリスクの過小評価だと考えます。
昨今の株安(円高)局面では、何人もの投資信託保有者が途中で投げてしまったのを見てきました。しかも、彼らが降りたのは早々の損切りではなく、我慢して我慢して、その結果もう無理だという水準まで引っ張っての結果であることが多かった。
これはリスクの過小評価と損失への覚悟不足が大きな要因でしょう。この中にはちゃんとリスクを想定していた人もいました。しかし、想定していたリスクが現実より明らかに小さかったために、現実の大きな波の前に飲まれてしまったのです。


以前のエントリーでも書かせていただきましたが、最近の長期分散投資推奨論の中で気になっているのは、あまりにも正規分布・平均・標準偏差・±2σを簡単に当たり前の前提として話をしすぎていると感じています。

初心者向けなので簡単に説明したいということは分かります。リスクを数値化して伝えたいということも良く分かります。ほとんどの人は善意から投資のリスクとリターンを説明使用としていることも分かっています。

でも、でも、でも、でも、でも、でも、
善意だからこそタチが悪い面があるようにも思うのです。右も左も分からない初心者が「株式リターンは正規分布します」と書かれているのを読んで信じてしまうかもしれません。その結果、投資を開始して数年後に・・・痛い目にあってしまうかもしれません。

そう考えると、善意からの行為とは言え、初心者に(正規分布でも95%の確率しかない)±2σの最大損失はもとより、正規分布前提のリスクを信じさせてしまうのはよろしくないのではないでしょうか。

◎関連エントリー:
正規分布仮定で平均・分散を使うことの危険性 (参考:『不透明な時代を見抜く「統計思考力」』)
[ブックレビュー] 『不透明な時代を見抜く「統計思考力」』 (神永 正博)


【関連コンテンツ】