##記事埋めの(?)読んだ本のレビューです

★★★★★
(星の5段階評価で★5つ)

おまけしてというところもありますが、これは星5つとさせていただきます。

この手の統計本を何冊か読んだ人には目新しいことは無いかもしれませんが、そうでない人には以下のようなポイントだけでも「なるほど」と思うところはあるのではないでしょうか?

○ジニ係数が高いから格差社会
→ジニ係数は独占率を表すに過ぎない。実際の社会の格差とは必ずしも一致しない。

○コーンエタノール(バイオ燃料)はエコ
→石油燃料の方がCO2排出量が少ない(ケースがある)。大事な前提が抜けている

○小泉内閣で格差は拡大した
→データを見ると何とも言えない。小泉内閣の十年以上前から格差は拡大しつつあるようなデータも多数。

○インターネットの広がりで若者の読書離れ
→そんなデータは無い。



本書の1つの特徴は数式を使わないところです。統計の計算をするということではなく、タイトルに【統計思考力】とあるように「相関関係があるからと言って因果関係があるとはいえない」のような思考力を重要視しています。
そして、本書ではソースデータに当たる重要性データの読み方を説いています。これは非常に重要ですが、この点を強調して説明する本はそんなに多くなかったと思います。データはすでに正しいもの・あるものとして議論が始まる本が多い中、基本的ですばらしい視点です。

いや、マジでソースデータに当たらない人多すぎると思います。記事を読んでデータを読まない人が多いようですが、データを説明している記事ならば神永氏も言われているように記事を無視してもデータを読むべきです。そして、そのデータの信頼性を確認すべき。
これをちゃんと述べられているだけでも十分に素晴らしい本です。


それに加えて、本書でおもわず星を5つにしてしまったのは、自分の投資方法のサポートセオリーを弱体化させるような主張なのですが、信仰とも言えるような正規分布の過剰な利用に疑問を投げかけている点です。

まず、平均収入や共通一次試験の結果など、釣鐘の裾野がどちらかに偏っような分布の場合には正規分布は適切ではないと言っています(ポアソン分布等)。これだけでも素晴らしい指摘なのですが、この程度であれば他の本でも書かれています。星を5つにするほどではありません。

星を5つにしたくなったのは、ベキ分布と正規分布の違いについて、裾野が大きい以外にも書かれていたからです。
正規分布もベキ分布も何も知らない人が2つを重ねたグラフを見ても、「多少裾野の大きさが違う」程度に思うかもしれません。しかし、「ベキ分布には平均も分散も存在しないことがある」というように大きな違いがあることを示しています。

→金融の世界で無条件に正規分布を仮定して平均と分散を使ってリスクを計量しようとするのは危険と言っています。

これはこの後のエントリーで。 (続く)


◎関連エントリー:
正規分布仮定で平均・分散を使うことの危険性 (参考:『不透明な時代を見抜く「統計思考力」』)


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