吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



雇用

「高齢者雇用義務化によって割を食う若者たち」へのコメントへの返信

(コメント欄では長くなって読みにくいので新エントリーとして書きます)

11月24日に高齢者雇用義務化によって割を食う若者たちを書いたところコメント欄に「年収200万」さんからコメントが寄せられ不思議なことになっています。

●最初のコメント (コメント番号7番)続きを読む







日本の雇用や日本への投資を守るのは外資の日本法人

【問題点】
●産業・雇用の空洞化
●外国からの投資のジャパン・パッシング



上のような問題点を受けて、「日本国内の雇用を守ろう」「外国から日本へ投資を呼び込もう」と叫ばれています。

この時に、「トヨタや日産など自動車工場の雇用」「シャープなどの家電メーカーの国内設備への投資」のように日系企業が注目されます。しかし、少し見方を変えると外資系企業の日本法人こそがこれを一番本気で考えていると言えるかもしれません。

日系企業のトップが考えることは企業全体の利益です。ですので彼らは国内生産に競争力が無いと判断すれば競争力のある海外で生産しようとドライに割り切れます。責任範囲が日本国内に限定されないからこそ外へ出ていく選択をできます。

一方、外資系企業の日本法人の責任範囲は日本国内です。外資系日本法人が考えるのは日本で自分たちの地位を守ることです。中国の事業活動は中国法人の担当なので、外に出ていくという選択肢はありません。

日本IBMで社長を務めていた椎名武雄氏が言った有名な言葉で、"Sell IBM in Japan, sell Japan in IBM"という言葉があります。

この言葉が示すように「日本で市場を拡大して売り上げを増やそう」「競争力があるということを示して海外本社から来年度の予算を確保しよう」と必死で働きます。
日本法人は外国本社に対して日本法人がどれだけ素晴らしいパフォーマンスを残しているかを示すために努力するのです。
そうしないと、日本法人のリストラが待っています。

このような視点で考えてみると、外資系企業の日本法人こそが日本における雇用や投資を確保することに一番必死と言えるのかもしれません。

 ※あくまで一つの見方です



「年齢差別禁止の規制」だけを設けてもほとんど効果がなさそう

就職内定率の低水準に思う「年齢差別禁止法」の必要性(山崎元のマルチスコープ/ダイヤモンド・オンライン)

どちらかというと一般的には規制緩和寄りの山崎元氏が、規制を設ける方向で意見を書いていたので目に止まりました。

自由主義的な競争原理を持ち出すと・・・「年齢や性別を基準にして採用制限をするような企業は、年齢が高い・女性であるという理由だけで能力がある人材を取り逃している。そのような能力の高い人材を取り逃している企業は競争社会からは自然淘汰される」なんて言ってもおかしくなさそうですが、違ったのは少し意外でした。

以下は山崎元氏の記事からの引用です。
  たとえば、同様の能力を持っている求職者に対して、23歳なら採用できるが、26歳なら不採用だというのは、明らかに差別的だ。企業としても、個人をより丁寧に評価すべきだろう。日本もそろそろ年齢による雇用上の差別を禁止すべき頃合いではないだろうか。もちろん、既卒業者で他の企業に勤めていた求職者も、分け隔て無く選考対象にすべきだ。

 候補者の選考に関して細かく規制で縛ることは望ましくないが、一定規模以上の事業所には、採用の際の選考基準の明示を義務づけることと、その中で年齢、職歴を基準にしないことを求めることが必要ではないだろうか。


私も応募要項に「23歳まで」と書くような露骨な年齢制限は規制されてもいいように感じています。しかし、企業の採用活動において年齢が一切の条件にならないという話は実効性があるのでしょうか?また、年齢を考慮しない能力評価の根拠に妥当性があるのでしょうか?

●実効性への疑問
全ての採用基準が定量的に測定できて点数化できるものなら能力での評価も可能でしょう。しかし、社交性やコミュニケーション能力のような測定が難しいものが選考基準になると、実は年齢を採用合否の判断に入れていても分かりません。企業は表向きは「コミュニケーション能力などを考えてAさんを選んだ」と言えます。
年齢差別禁止を設けただけでは、その実効性に疑問があります。

●年齢を考慮しない能力評価の妥当性への疑問
純粋にその時点の能力だけで評価するのは妥当かのように聞こえるかもしれません。しかし、本当でしょうか?
[16歳で3割25本80打点できる野球選手]と[38歳で3割25本80打点できる野球選手]で基準は同じになるべきでしょうか?
[14歳で100Mを10.1秒で走る選手]と[29歳で100Mを10.1秒で走る選手]は同じ評価であるべきでしょうか?
企業でも1年間の勉強で必要な知識を身につけてきた23歳と10年間の勉強でやっと必要な知識を身につけてきた33歳は同じ評価であるべきでしょうか?現時点では同じラインに並んでいてもその後には若い方が伸びると考えて採用してはいけないのでしょうか?
私は将来の伸びしろがあると思われる若い方の評価が高くても仕方ないと思います。この発想はいけないのでしょうか?
採用選考の判断から年齢を完全に切り離すのは難しいように感じています。


山崎氏も後ろの方で「正社員解雇のルール確立が必要」と書いていますが、このような雇用の流動化とセットでやらなければ、年齢規制は形骸化して変な違和感だけが残ることになりそうです。



日本企業の競争力と日本人雇用の両立は困難

日産がマーチの生産をタイにシフトしだしました。そして、トヨタが国産車の代表ともいえたカローラの生産を海外に持っていくというニュースも流れています。
このように日本企業の海外への進出が進んでいます。円高や他自動車メーカーが新興国で低コストで生産していることなどに対抗して競争力を保つための手段ということです。
この現象について産業の空洞化や雇用の喪失などといった憂う声が聞こえますが、仕方ないことでしょう。「日本は技術力はあるのに国内から雇用が失われていくのは残念」という声もありますが、だからこそ雇用が失われるのです。

一般的に熟練工の方が労働報酬は高くなります。日本人労働者=技術力があるとすれば、「日本人労働者=技術力ある(熟練工)=労働報酬が高い」という図式になります。さて、日本人労働者が高い報酬を貰うほどの仕事をやっているのでしょうか?
昔の新興国には一定の水準を満たした部品を製造するだけのスキルがありませんでした。車を組み立てるだけのスキルがありませんでした。ですからそれだけの技術がある日本で組み立てることに意義がありました。しかし、コストが安い新興国で組立てたり、部品を製造できるようになると、そこがMADE IN JAPANである必然性がなくなります。

Skill_Cost

この図は簡単なイメージ図です。縦軸がスキル、横軸が労働コストです。基本的にはスキルが上るほど賃金も高くなるという前提になっています。
3本の赤線のうち一番下の線が完成した部品を組み立てるのに必要なスキル水準だとします。左下の3つはこのスキルを満たしていません。しかし、それ以降は点はどれも必要なスキル水準をクリアしています。そうすると、左下の3つ以外のどこに仕事を依頼してもしっかりと車が組み立てられます。
部品の製造も同じです。真ん中の赤線が部品製造に必要なスキルとしましたが、これをクリアしていれば、どこで部品を作ってもよいのです。

このように考えていくと、日本で全てを完結することが極めて非効率であることが分かります。
技術力がある日本で部品の組み立てをやるのはオーバースペックです。部品の製造をやるのもオーバースペックです。マクドナルドのハンバーガー焼きに三ツ星レストランのシェフを使うのはオーバースペックです。

要求されるスキルセットを持っていて一番安いところに頼むのが一番合理的です。もし、その合理性を無視して高スキルの人に作業を依頼すると製造コストが高くなります。それでできた車は高品質なのでしょうか?低コストでも必要なスキルは持っている人たちが作った車と品質に遜色はありません。
同じ品質の車を高い値段で売ることになりますので、商品が売れなくなります。このようにして、利益が上らずに製造工を含めた日本人達の雇用を守ることが困難になります。日本人の雇用を守るために日本人で作業を完結した末に、日本人の雇用を守れずに会社も潰れるという結果に達します。

いくら心情的に日本人の雇用を守りたいと思っても、社会の仕組みがそれを認めません。

どうしても日本人に作業を依頼したいというのであれば、新興国並みの値段で作業を引き受けるしかありません。または、上の図で右上の人しか作業できない分野へ皆がスキルアップしていくかどちらかです。



日本に拠点は残しても雇用は外国人か

近年、製薬業界では外資系企業による日本の研究所閉鎖のニュースが多くありました。
つくばからGSK、ノバルティス、メルクが消えました。愛知のファイザー、神戸のバイエルも消えました。

一方、日本企業はそう簡単には日本から研究施設を閉鎖しません。しかし、それでも国際化の流れに抗うのは難しいようです。


製薬大手、開発力を底上げ、国内研究拠点を国際化 (日経新聞 2010/11/8)
武田は2011年2月に神奈川県藤沢市に開所予定の研究所の研究者の約1割を外国人にする。
武田は10月、研究部門のトップにポール・チャップマン氏を昇格させた。
スイス大手ロシュ傘下の中外製薬も来年度をめどに国内の大学と提携して採用に外国人枠を設け、毎年一定数を確保する方針。
国内に1100人の研究者を抱えるアステラス製薬は11年6月末までに統合予定の米製薬OSIファーマシューティカルズや傘下のアジェンシスなどの海外の研究部隊との100人規模の研究者の交流を進める。


日本の製薬会社のフラッグシップとも言える武田が研究トップを外国人にして、研究者も1割は外国人にするということです。ロケーションこそ日本ですが、グローバル化の波が来ています。その方がより良い研究成果を出せると判断すれば企業としては当然の仕方ない選択です。
この流れが進むと研究所が日本にあってもそこで働く日本人は少数派という時が来るかもしれません。

日本の研究者は日本に入ってくる外国人に負けないようにして国内での研究のポジションをを守るか、自らが違う国の研究のポジションに切り込むか・・・
現時点でも国公立大学の博士が無いと就職すら厳しいと言われる研究職ですが、このポジションを得るのはより厳しくなっていきそうです。



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