吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



給与

日本郵政の春闘記事が面白かった - 待遇改悪?格差解消?

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先日,Twitterでトレンドを見たら「日本郵政」という文字が目に飛び込んできました。なんだろうと思いタップしてみると,以下の朝日新聞の記事を元にしたツイートが多数ありました。

正社員の待遇下げ、格差是正 日本郵政が異例の手当廃止 (asahi.com)
日本郵政グループが、正社員のうち約5千人の住居手当を今年10月に廃止することがわかった。この手当は正社員にだけ支給されていて、非正社員との待遇格差が縮まることになる。「同一労働同一賃金」を目指す動きは広がりつつあるが、正社員の待遇を下げて格差の是正を図るのは異例だ。
政府は非正社員の待遇が、正社員の待遇に引き上げられることを想定。非正社員の賃金を増やして経済成長につなげる狙いもある。ただ、日本郵政グループの今回の判断で、正社員の待遇を下げて対応する企業が広がる可能性がある。


記事の論調と同じで,ツイートも非正規の待遇を上げるのではなく正規の待遇を下げることで格差縮小するというのはとんでもないというものがほとんどでした。

しかし,私は記事を読んでいて違和感がありました。そんな簡単に組合がほとんど引き下げばかりの改定で折り合うのか,と。そこで同じことを報じている記事はないかと「日本郵政」でGoogle先生にお伺いをしたところ,日経新聞の記事が見つかりました。
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日経ビジネスの給与システムに対する理解が不安になる

2013年4月17日の日経ビジネスに、データの読み方の題材としてちょうどいい記事がありました。
実は知らない「給料」が決まるホントのルール
「あなたの給料はこれから15年、ずっと下がり続けます」

 そう言われたら、どう思いますか? ただでさえ生活が厳しいのに、これ以上収入が減ったら生きていかれない! そう感じる人もいるでしょう。しかも、15年間も下がり続けるということは、15年後の自分の方が今よりも少ない収入でやりくりしなければいけないということになります。

 「もし、そんなことが起きたら、大変だ」

 残念ながら「もし、そんなことが起きたら」ではありません。これは過去15年間に起きた現実なのです。
HeikinKyuuyo_NikkeiBP
 これは日本のサラリーマンの平均年収の推移を表しています。ピークだった平成9年(1997年)の467万円から下がり続け15年で約60万円減りました。月収に換算すると5万円減です。

 ご自身の給料を想像してみてください。いまの給料から毎月5万円減るのです。いかがでしょうか? しかも、自分は15歳も年齢が増えています。25歳の人は40歳に、35歳の人は50歳になっています。でも、今の月収よりも5万円下がってしまうのです。

平均給与の減少傾向を見て、「(このトレンドが続くと)あなたが受け取る給与は下がっていきますよ」という主張です。
私が良い題材として取り上げる時は残念なデータの読み方をしている場合がほとんどですが、これもまさにそのケースです。

平均給与の考え方は平成9年のサラリーマンと平成23年のサラリーマンのように、別の集団を比較しています。
個人に当てはめれば、以下のように「平成9年のX歳の人と平成23年のX歳の人」のように同じ人ではなく別の2人の給与を比較しています。
NikkeiBP_Salary00


ところが、その後に導かれる話は「ご自身の給料を想像してみてください。いまの給料から毎月5万円減るのです。いかがでしょうか? しかも、自分は15歳も年齢が増えています。25歳の人は40歳に、35歳の人は50歳になっています。でも、今の月収よりも5万円下がってしまうのです。」というように、ある個人の給与が15年間で下がっていたというように書いています。

では、平成9年に25歳だった人は40歳になった時に給与は減っていたのでしょうか?つまり、以下のようになっているのでしょうか?
NikkeiBP_Salary01


「民間給与実態統計調査」には5歳刻みの年代別で平均給与がありますので、平成8年の25歳〜29歳と平成23年の40歳〜34歳で比較してみました。
同じ人が15年間働き続けて給与が減っていたのか増えていたのかが分かります。
NikkeiBP_Salary02


はい、増えています。

上で面倒くさいことをやっていましたが、【賃金カーブ】で片付く問題です。

基本的にサラリーマンは年齢が上がれば給与が増えていきます。多少全体の賃金が減ったところで、自分の年齢上昇に伴った賃金の上昇のスピードの方がはるかに上回ります(あくまで全体のトレンド)。


「給料が決まる本当のルールを教えてやるぜ」という記事のようですが、【賃金カーブ】を知らないようで非常に不安なスタートです。




P.S.
個人的には【(出典:国税庁 平成23年 民間給与実態統計調査結果)】としたグラフの出元も気になります。
グラフの作りを見ても、年収ラボのサラリーマン 平均年収の推移(平成23年)に酷似しております。
データの出元が【国税庁 平成23年 民間給与実態統計調査結果】とのことですが、この調査では平成13年からのデータです。【国税庁 平成23年 民間給与実態統計調査結果】から独自に作ったのであれば、平成13年のデータになりそうなものですが…
【国税庁 平成23年 民間給与実態統計調査結果】からではなく、年収ラボの数字をExcelに打ち込んでグラフを作ったのではないだろうか…という疑念があります。



現在価値を考慮しないアドバイスは無視しよう(騙されないで)

日経に興味深いコラム(老後を支える じぶん年金のつくりかた)がありました。
 ・総収入は一緒でも働く年数で手取りが変わる (2013/4/5)
 ・社会保険料と所得税はどのように決まるのか (2013/4/12)

総額では1億円の額面を稼ぐ↓の2人を比較してどちらの方が手取りが多いのかの試算をしています。
 ・年収500万円で20年働くサラリーマン人生
 ・年収1000万円で10年働くサラリーマン人生
そして、以下にあるように前者の年収500万×20年の方が金銭面ではお得と結論付けています。
今回の試算では、年収480万円の場合の手取り額を計算すると年401万3604円。それに対し、960万円の場合の手取りは年773万8640円。
<ケース1>のその他の支出
国民年金保険料20年分…353万4000円
国民健康保険料20年分…約100万円(年間5万円で計算)

<ケース2>のその他の支出
国民年金保険料30年分…530万1000円
国民健康保険料30年分…約150万円(年間5万円で計算)
 今回の私の試算では、60歳になるまでの手取り額にはなんと500万円以上の違いが生じました。試算の条件によって、金額は異なってくるものと思いますが、「より多くのお金を手にしたい」というだけで選択をするのであれば、年収500万円で20年働く方がお得になるのです。

しかし、着眼点は良いもののこのコラムの試算には重大な欠陥があり、その結果ミスリードする結論を導いてしまっています。

その欠陥とは現在価値の概念が無いことです。日経の試算を表にして計算してみると以下のようになります。


500x20vs1000x10_1

確かに割引率が無いこの試算では年収500万で20年の方が累計額が多くなっています。


しかし、【今の100万円≠10年後の100万円】です。
そこで、同じ条件で割引率を考慮して現在価値として再計算してみました。割引率は金利指標でよく使われる10年国債の平均金利(1.347%)を採用しました。


500x20vs1000x10_2

この試算では【6774万 vs 6795万】と狙ったかのようにほぼ同じ水準になりました。

短期であるなら割引率は誤差の範囲なのでほぼ無視もできますが、この話のように何十年というスパンでは無視できない要素です。たった1.347%の割引率でも500万円以上の差がひっくり返ります。

長期のマネープランでは現在価値と将来価値の違いをしっかりと考慮する必要があります。
時間軸を考慮せずに【今の100万円=数十年後の100万円】とするアドバイスは無視してよいでしょう。残念ながら役に立ちません。



公務員の給料は高すぎるのか? (2)

前のエントリーである『公務員の給料は高すぎるのか?』は予想外に反響が多かったので、追加エントリーです。

まず大事なのは公務員のサービスに何を要求するかです。
世の中には政府(地方自治体含む)でないと実施が難しかったり、政府がやった方が望ましいとされるサービスがいくつかあります。警察、消防、国家防衛、道路計画や維持管理、上下水の整備、税金の徴収や管理、公共教育の計画管理等々。電力や電車などは国によって違うところですが含まれることもあります。
このような政府が行った方が良いとされるサービスを実施するのが公務員の仕事でしょう。(厳密に言えば、国家防衛のための兵器開発は民間企業が担っていたりもしますが、中心という意味では自衛官と考えます)

上のようなサービスには安定供給が期待されます。
「今年はリソース不足なので、警察業務は停止します」「今年はリソース不足なので確定申告の還付は行えません」「今年はリソースがあるのでたくさん取締りをやります」なんて話では困ります。

そのようなサービスを提供するために公務員がいると考えると、継続的にそのサービスを提供するにはどういう仕組みにするべきかを考える必要があります。

公務員が同種のサービスを提供する多くの企業のうちの一つであれば、大した問題はありません。公務員がダメでも他の企業が行えばいいことです。
しかし、問題なのは公務員のサービスは替えが効かないことです。
競争がある分野の民間企業であれば、1社のサービスが停止しても替えがあります。Just in Time方式で部品の在庫を持っていないメーカーが部品供給ストップで業務を停止しても他メーカーがいます(トヨタ、日産、ホンダの代わりにはGM、フォードなどがいます)。また、民間企業は必ずしも毎年の業績が安定している必要もありません。今年はダメでも来年頑張ればいいとも言えます。しかし、上に書いたように公務員のサービスでは「一昨年、去年は裁判できなかったけど、今年はその分たくさん裁判をこなした」では困ります。

・公務員のサービスは替えが効かない
・公務員のサービスは安定している必要がある

公務員のサービスは、自動車メーカーのように部品供給が止まったから生産ストップとするわけにはいかず、サービス供給のための資源を確実に確保できるようにしなくてはなりません。リソースの基本はヒト、モノ、カネですが、安定的にヒトを確保できるでしょうか?
安定的に人材を確保できるだけの魅力的な条件を掲示することが重要です。そうすることで安定的に人材が応募してきてヒトの面でのリソース不足のリスクを回避もしくは軽減できます。

私の関連する業務関係で独立行政法人の例ですが、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の審査官は不足しています。これは待遇が十分ではないからです。本来であれば産学の世界で生まれた最新のセオリーなども用いた審査に対する知識も持って対応できる人材がいなくてはならないのですが、そんな人は民間なら遥かに高い水準の収入を得られます。
そうすると人材が集まりません。独立行政法人医薬品医療機器総合機構の年収は民間全体の平均よりははるかに高いですが・・・その結果、新薬等の審査に遅れが生じたりもします。


いずれにしても、普通の民間企業と違って安定的にサービス提供を要求されるとなると、その安定性のためのコストが余計にかかるのが自由経済の世界の流れでしょう。
部分的にバス運転手の給与が安定性を維持する以上に高すぎるならそこは是正されるべきです。ただ、そういう部分の問題を全体の問題と同一視されるべきではありません。

(対極とまでは言いませんが、私自身はいきなり全社員が集められて「ここはクローズすることが決まった。これは最終決定だ」と言うような外資系の民間企業で働いています。また、親族も民間企業の倒産で仕事を失ったりもしています。ですのでポジショントークで公務員を擁護するつもりは一切ありません。)



公務員の給料は高すぎるのか?

「公務員の給与が高すぎる」という話もよく聞きます。

少し古いですが、ここにあるような数字で、上場企業平均よりも高いなんて、というような批判もあります。
計算を間違えていなければ公務員の給与が民間より高くなるデータが出ても間違っていません。しかし、データをどう解釈するかは別問題で、即「民間並みに引き下げろ」という結論に達していいものか疑問に感じています。

日本が好景気だったバブル時代に戻ってみると、民間が高給取りで公務員は不人気職種でした。地方公務員は人が集まらず必死に人材募集をしていたと聞きます。民間は景気に連動する形で給与が上がっていったにもかかわらず、公務員はそれについていけなかったのです。
バブル以降の日本は逆に不景気であり、それに合わせるように民間企業の給与は下がっています。
単純に以下のような仕組みでしょう。

・好景気では民間が有利
・不景気では公務員が有利

不景気が続いているからディフェンシブ株や公務員の方がパフォーマンスがよくなりがちということです。公務員の給与が良くなる条件の時に公務員の待遇について文句を言うのであれば、好景気の時の公務員の待遇について文句が言われるべきでしょう。好景気を謳歌して「公務員なんかになる奴は落ちこぼれ」のように言っていた民間が、不景気になると公務員の給与はおかしいということが正しいのでしょうか。
公務員の給与を引き下げろという主張があってもいいですが、単純に今の条件で民間より高いというだけでの批判はアンフェアです。

また、好景気になると公務員人気が衰えて人材確保に困るというケースも考慮されないと国家運営上まずい。今の待遇でさえも景気がよくなれば人材が集まらない中で、どうやって公務員の人材を確保すべきかを考えないと問題になります。


== 2011/5/2 0:50追記 ==
予定外に人気エントリーとなったので、続編を書きます。



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