吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



確率

論理的に考える(不適切な比較対象)

興味深い記事を見つけました。

「宝くじなんて損」は本当orウソ…カジノより儲けられる! (Business Journal)

論理学の少しマジメな話として、「宝くじは損だ」という主張を否定しています。
とはいえ、その論理的なはずの反論の中に論理的な問題点が散見されます。

ここでのギャンブルの目的は儲けることだとしよう
 わかりやすくルーレットの例で説明しよう。1万円を元手にルーレットで儲けるためには、次のふたつの戦術のうち、どちらが正しいだろうか?

(1)100円ずつ一晩中、赤の目に賭ける
(2)1000円ずつ10回、1の目に賭ける

上のような2つの方法で比較して、(2)で36000円を手にした瞬間にゲームをやめると1/4は儲かるから(2)が正解で、だからこそギャンブルで儲けることを目的にするならば、確率よりもボラティリティ(変動の激しさ)が高いことのほうが重要だ、と言っています。

ここに大きな論理的な問題があります。この問題点は不適切な比較対象を設定していることです。

新薬開発の治験でも、新薬候補と対照薬を比較することがあります。
当然、この時に何を対照薬とするかは重要です。すでに効果が薄くて市場で流通していないような薬を対照薬に選んで、それより新薬候補が優れていると立証しても意味がありません。(現在の標準治療薬となっている薬の方がはるかに安全性も効果も高いかもしれない)

上のように考えた時、(2)の有効性を検証する時の比較対象として(1)は適切なのだろうか?

以下のようにマーチンゲールの法則(倍々プッシュ)を追加してみます。
(3)まず100円を赤の目に賭け、当たったらギャンブル終了。外れたら倍の200円を赤の目に賭けて、当たったらギャンブル終了。外れたら倍の…を繰り返す。

1万円の持ち金だと、3200円をベットする6回目の施行まで挑戦可能です(7回目の6400円は資金不足でできない)。
18/38というルーレットの赤or黒の的中確率で、(3)を実施した場合、6回目終了時点で全部外れになっている確率は2.1%です。つまり、97.9%の人は翌朝に「儲ける」ことができています。

儲かっている人の比率は以下のようになります。
 (1) ほぼ0%
 (2) 23.4%
 (3) 97.9%


ここでのギャンブルの目的は儲けることだとしようという当初の目的を考えた時、勝利を手繰り寄せる正しい戦術は(1)でも(2)でもないことは分かります。(マーチンゲールの法則が最強かは別問題)

「つまりギャンブルで儲けることを目的にするならば、確率よりもボラティリティ(変動の激しさ)が高いことのほうが重要なのだ」という言葉を借りるなら、「(マーチンゲールの法則が勝った。)つまりギャンブルで儲けることを目的にするならば、ボラティリティよりも勝率が高いことの方が重要なのだ。」となります。


【おまけ】
「確率的には宝くじに当らないだろうけれど、万一のことがあるから宝くじを買っておこう」という人は、「きっと交通事故にはあわないだろうけれど、万一のことがあるから生命保険に入っておこう」と考えるべき。これが論理的に正しい解釈だ。

これも論理的誤りでしょう。
「可能性が高いかどうか(確率)や期待値が掛け金に近いかどうかよりも、可能性があるかどうか(ボラティリティが十分に高いかどうか)のほうが重要」として確率や期待値を無視して可能性の有無で万が一を考えていてはキリがない。
その論理が正しいなら「今日、子どもが暴漢に襲われて撲殺される可能性もあるからボディーガードを雇っておこう」です。

確率を無視してボラティリティの大小のみで判断するなら、生命保険なんてものよりもボディーガードだろう。家に武装集団が侵入してきて家族全員が殺されたらどうするんだ。その可能性は0じゃないぞ。
「きっと家が襲撃されないだろうけれど、万一のことがあるからボディーガードを雇っておこう」と考えるべき。これが論理的に正しい解釈だ。







日本が初戦で勝利。3戦全敗を予想した勇者達は・・・

南アフリカで開催されているワールドカップ、日本はカメルーンとの初戦を1-0で勝利。

さて、日本では3戦全敗を予想していた人が結構居たように思います。
セルジオ越後氏は堂々と3戦全敗を公言し、杉山茂樹氏は「3戦全敗の可能性はかなり高いだろう」と言っていました。他にもブログやコメントなどで3戦全敗を予想する声も結構あった。
私の身近な人の中でも3戦全敗をほぼ断言するかのような口調で予想する人もいました。


セルジオ氏とか杉山氏などはサッカーに詳しいのですから、どちらが強いかという戦力分析はある程度の制度でできているのでしょう。しかし、全敗というのは勇気ある予想です。かなりチャレンジングです。

サッカーは意外なほどに前評判どおりに進まないことがよくあるんです。後付け解説ならジャイアント・キリングの説明はできても、前評判時点でそれをするのはかなり難しい。(セビージャがバルサに勝ったことやPSVの躍進を後付けで解説できても、事前予想でそれを織り込むのは困難です)

しかし、今回書きたいことはそういう2チームの戦力差が勝敗を決定付けないというだけではありません。



以下の予想が秀逸。
英国ブックメーカー予想は「日本全敗」(デイリースポーツ)
いよいよ14日に迫ったサッカー日本代表のW杯初戦(対カメルーン)。英大手ブックメーカー「ウィリアムヒル」で日本戦のオッズを調べてみると…。優勝候補と目されるオランダとの試合(19日)は、「オランダ勝利」の賭け率が0・75倍。圧倒的にオランダ勝利を確信する人が多いことが分かる。日本は14日のカメルーン戦、24日のデンマーク戦といずれも相手チームの勝ち予想が約2倍に対し、日本の勝ち予想は約3・5倍。賭け率だけでみると、1次リーグの日本は3戦全敗予想となっている。
どう考えても、ウィリアムヒルの各試合のオッズから【1次リーグの日本は3戦全敗予想となっている。】とは読めません、
ブックメーカーの取り分を無視して考えると、デンマークとカメルーンの勝ちオッズが2倍だと日本が負ける確率は50%です。
デンマークとカメルーンの両方に負ける可能性は50%×50%=25%です。その上でオランダにも負ける可能性を考えると・・・
実際はブックメーカの取り分があるので、日本の対戦国の勝率をもう少し高めにする必要はありますが、それでも日本全敗という確率は30%程度です。
どの相手に対しても不利なオッズになっていることから日本が"最弱"とか"予選脱落候補最有力"とはいえても「3戦全敗予想になっている」とは言えません。

同じウィリアムヒルの予選突破オッズで日本の倍率は3.75倍でした。オランダは1.14倍。カメルーンとデンマークは2倍。これを見ても日本が最弱だという評価なのは一目瞭然です。これに胴元取り分の補正をして計算すると日本の予選突破確率は約25%です。75%の確率で予選落ちという予想です。
しかし、予選落ちでも3戦全敗のほかに、1分2敗、2分1敗、1勝2敗、1勝1分1敗、1勝2分、2勝1敗といろいろなパターンがあります。それを含めての75%なので、やはり3戦全敗の確率はそう高くありません。


日本が他対戦国に負けるという1つ1つの事象が起こる確率は高くても、それが全部同時に発生する確率は全く別です。確率90%の事象でも10回連続で起こる可能性は35%弱、20回連続だと12%です。


事実、過去のワールドカップ予選のデータを見ても3戦全敗でグループリーグを敗退する国はそう多くありません。弱いと思われたチームでも必ずしも全敗で終わるわけではなく、1回くらい引き分けたりもするものです。
プレミアリーグでも上位チームが意外と下位チームに取りこぼします。今期のマンUは昇格組のバーンリーにまさかの黒星を喫しています。プレミアリーグではなくFAカップでは下部リーグのリーズにやられたりと意外と順当に行きません。





投資ブログでなんでこんな話を書いたかというと・・・

「感情ではなく、確率をちゃんと冷静に判断しようね」ということです。

行動経済学でも言われていますが、ちょっとした差が過大に評価されることが多いように感じます。
 ・格下の日本代表は勝てない (実際は日本の方が不利だが、それほど圧倒的な差は無い)
 ・就活では大学格差があって学歴は重要 (実際に大学の差はあるが、言うほどの差は無い)


これは投資の世界でも同じことでしょう。
ちょっとした危機があるとそれを恐れてパニックになってしまったりと、過剰に反応することがしばしばあります。そういう時に冷静に判断しましょう。

デイリースポーツの記者のように3戦全敗を導き出すのは危険です。



P.S.
杉山氏は自身のブログの「可能性はある」という空虚な答にて
可能性は「ある」に決まっている。
問われているのは、それがどれほどかってこと。
1%なのか 80%なのか。50%以下なら難しい。可能性は「低い」と答えるべきだろうし、50%以上あると思えば、可能性は「高い」と答えるべきなのだ。
のように書いています。ただ可能性が高いだけで50%以上なのだから、かなり高いと言うからには70%や80%の確率で3戦全敗を予想していたのでしょうか。いや、断言するからにはそうなのでしょう。どういうロジックで日本の全敗確率がそれほどと予想したのか解説してほしいものです。
また、
だから僕は、20%以下なら「低い」ではなく「ない」と言うことにしている。
確率20%以下が「ない」なら、Pinnaclesportsの直前優勝オッズから優勝確率を算出すると、ワールドカップで優勝する可能性がある国は1国も無くなります。
杉山氏はこのように何やら数字に弱い気がしてします。



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