吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



生き残りバイアス

過去に儲かった≠良い投資方法2

先のエントリーでも取り上げた、過去に儲かった≠良い投資方法の続きです。


過去では優れていた手法が将来に適応できない大きな原因として「カーブフィッティング」と「生き残りバイアス」を取り上げます。

●カーブフィッティング
主にシステムトレードなどで最適なトレード方法を見つけようとする時に起きる現象です。
「曲線を合わせる」という意味にあるように、バックテストで良い結果が出るようにパラメータを追加したり設定値をいじったりすることです。
様々な条件を組み合わせれば、過去の為替や株価の推移に対して、素晴らしいパフォーマンスが出る取引手法を作りだすことはできます。

あるパラメーターを加えたり、閾値を調整すれば、サブプライムショック/リーマンショックを早々に回避して安値で買うシグナルを設けることも可能でしょう。

移動平均20日でも25日でもダメだけど23日なら良くて、損切りラインを高値から15%や20%じゃゃダメで17.3%に設定すればOK・・・と過去の値動きに最適化することは可能です。特に複数のパラメータを組み合わせれば、より最適化は可能です。

しかし、これは過去の値動きに最適化した仕組みですので、将来にわたってうまくいくとは限りません。特に条件を複雑にすればするほど、ほんの少し条件が変わっただけんでも結果が大きく変わってしまいます。


●生き残りバイアス
カリスマ投資家になる方法で紹介した方法もここに入ります。

世の中には様々な投資方法があります。
テクニカル分析だけでも、RSI、RCI、ストキャスティクス、ボリンジャー・バンド、ピボット、移動平均、トレンドライン、エリオット波動、等々と様々な手法があります。また、同じ手法でもパラメータの設定値や期間の取り方で違いが発生します。

無数の投資手法があれば、ある期間で区切った時にいくつかは素晴らしい成績を収めるでしょう。
コストを考慮しなければ、全く逆の取引をする2つのトレード手法があれば片方が大損になればその逆は大儲けになります。

宝くじだって皆で買えば誰かは1等を当てるのです。
優勝確率が1万分の1のじゃんけん大会も誰かが優勝するのです。







カリスマ投資家になる方法

世間では「●万円を▲か月で■万円に増やした」というようなカリスマ投資家が紹介されることがあります。

誰でもそのようなカリスマ投資家になる方法があります。古典的な方法です。


仮に資金を500万円持っているとします。

(1) 25個の証券/FXの取引口座を開設します。
(2) 各口座に20万円ずつ入金します。
(3) それぞれの口座でバラバラのリスクが高い取引をします。
(4) 数ヵ月後(例えば2ヶ月後)には20万円→200万円のように大きく増えた口座がでます
(5) 4の成功口座だけを公表します

これで「20万円を2カ月で200万円に増やしたカリスマ投資家」の出来上がりです。
3→4の流れは保証されていませんが、口座数をある程度多くしてリスクの高い取引を行えば実現可能性はかなり高いでしょう。

お気づきの方も多いと思いますが、これは古来からある「競馬の予想を連続で当てる方法」と同じです。

失敗ケースが切り捨てられ、上手くいったケースだけを取り上げる生き残りバイアスを利用したカリスマ製造方法です。

輝かしい実績を誇る人は、このように上手くいった取引だけを前面に出している可能性もあります。
また、ある人が成功していても、その人は同じようなことをやっていた100人の中でたまたま成功していたケースと言えるかもしれません。

カリスマ投資家が本当に実力によるものなのかは十分な吟味が必要でしょう。



マルキールがヘッジファンドを切る (ヘッジファンドのバイアス)

先のヘッジファンドのパフォーマンスで、ヘッジファンドの生き残り/バックフィル・バイアスに関する実証研究として挙げた、インデックス投資の大御所MalkielとSahaの『Hedge Funds: Risk and Return』の紹介です。

●レポート全文:Hedge Funds: Risk and Return
 MalkielとSahaはTASSのデータベースに登録されたヘッジファンドの数字を使って検証しています。

株式のパフォーマンスを測定するには株式のトラックレコードがあります。
ヘッジファンドにもトラックレコードがあり、いくつかのデータベースも存在します。

しかし、ヘッジファンドのトラックレコードには大きなバイアスの存在が指摘されています。代表的と言われるのが生き残りバイアスバックフィル・バイアスです。


【生き残りバイアス】
資産運用の世界ではパフォーマンスが悪ければ市場から撤退を迫られます。その結果、パフォーマンスが良いものが生き残り、データに残ります。その結果、全体の実態以上に好成績になることがあります。
特に成功報酬を収益源とするヘッジファンドの場合は拍車がかかります。一度パフォーマンスが悪化すると、成功報酬を得られる水準まで回復するのが困難になります。そこで、ファンドを解散して新しいファンドで資金を集めればゼロからのスタートです。

MalkielとSahaは1996年-2003年のヘッジファンドで「生き残っているファンドのみ」 vs 「生き残り+退場」のパフォーマンス差を計算しました。
Malkiel01
※Note: Backfilled returns were not included in this analysis; live versus defunct status was determined
as of April 2004.

結果は、上のように平均で4%ポイント以上の差がありました。


【バックフィル・バイアス】
事後に、運用してみて調子の良かったファンドの成績だけ報告し、調子の悪いファンドの成績は報告しないというバイアスです。(ヘッジファンドのパフォーマンス報告は任意かつ内容の正当性は問われないので、ヘッジファンドが好きに選べます)

MalkielとSahaはバックフィル・バイアスに関しては1994年-2003年のデータを分析しています。
「バックフィルのあったモノ」「バックフィルのなかったモノ」を比較しています。
Malkiel02

Malkiel03

上は平均(mean)、下は中央値(median)です。
「バックフィルのあったモノ」「バックフィルのなかったモノ」では平均では7%以上、中央値では6%弱の差があります。



トラックレコードを使ってヘッジファンドのパフォーマンスを測定する場合、そのデータには十分な注意が必要です。

ちなみにタイトルはRisk and Returnであり、後半ではヘッジファンドと投資信託のリスクも測定しています。



私の著書 - ズボラ投資
「毎月10分のチェックで1000万増やす! 庶民のためのズボラ投資」
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