吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



無分配

投資信託の無分配と公平性と租税回避

相互リンクをしている高配当ETFで戦略的インデックス投資日記にて投資信託の無分配期間についてのアンケートというアンケートを実施しています。


先日の分配金を出したSMTインデックスシリーズで触れましたが、投資信託において利益が出ているのに無分配を続けるのは許されないような空気があるようです。

実際にそのような無分配を続けたファンドがあって、それに対して金融庁が指摘したとか指摘したことがないという話が無いので、実際のところは分かりませんが、ずっと無分配は難しいという声は運用会社などからもちらほら聞こえています。


ここからが本題。
以下は、私が推測する永久無分配の投資信託を認めることが難しい理由です。(関係者なら真の理由をご存知かとも思いますが、私は知りませんので推測)


●課税の公平性
まず証券投資の基本として株式や債券への直接投資があります。
無配当株やゼロクーポン債などを除くと、株式は保有していれば配当金が出て、債券は利金があります。これらは課税対象です。現物株・生債券に投資していると通常は自然と課税されます。
ここがベースラインです。

その株式・債券を投資信託という皮で包むと、今の投資信託という制度上、配当金や利金がファンドの皮に守られて課税されません。そして、そのまま非課税のまま再投資できます。

これは株式投資や債券投資をしている人から見ると不公平な話です。



●租税回避スキームの禁止
上に関連しますが、投資信託なら非課税という仕組みを悪用して租税回避のツールとして利用されることも考えられます。

仮に三菱商事普通株にのみ投資する【三菱商事ファンド】という無分配ファンドを想定してみます。三菱商事株の配当利回りは約3%としましょう。

三菱商事の普通株へ直接投資すると、3%の配当金に対して20%の税金がかかるので、投資元本の0.6%相当が年間に税金で取られる試算になります。再投資しても税金で取られた分は返ってきません。

一方、三菱商事の株式を投資信託というスキームで包んだだけの三菱商事ファンドの場合、配当金へ課税されません。
信託報酬を0.2%取られても三菱商事株に投資するより投資家は有利に再投資できます。最終的に積みあがった資産を売却した時には課税対象ですが、税の繰り延べ効果で複利運用した分のメリットが出てきます。

このように、無分配型ファンドを認めてしまうと、節税スキームとして投資信託が利用されかねません(実際には1銘柄のみ放り込む投資信託を組成するかはわかりませんが、財閥系商社ファンドとかなら…)。

また、金融庁や国税としても、本来なら税金として取れるはずのものをファンド販売会社や運用会社にかすめ取られることも看破できないでしょう。


投資信託の無分配を認めにくいのは、上で書いたような株式投資や債券投資との公平性、また租税回避スキームとしての利用を禁じるという理由はあるのではないでしょうか。
そのような理由であれば、ある程度の正当性があるように考えられます。無分配型投資信託の登場を強く期待してはいますが、そう簡単に無分配にすればみんなハッピーというものでもなさそうです。







分配金は現金化でリスク低減効果がある?

毎月分配型ファンドを支持する意見として、「分配金は適宜現金化をしていくので、リスクを低減する効果がある」というものがあります。裏を返せば「無分配型は全てファンド内にあるからリスク低減効果が無い」ということになります。
相場の上下が激しい時にリスクを低減するのは良いことだとして、毎月分配型にメリットがあるという主張に繋がりやすい主張です。

この主張には「いくら投資するか」という大切なポイントが抜けています。

リスクコントロールの第一歩はアセットアロケーションです。
先の「アセットアロケーション≠投資資産の配分比率」でも書きましたが、アセットアロケーションは現金とリスク資産の比率を決めることです。

具体的な数字を使ってみます。
同じアセットに投資するファンドで、無(低)分配ファンドと毎月分配型ファンドを考えます。グロソブの毎月決算と1年決算のようなイメージです。
計算しやすいように毎月分配型ファンドは分配金利回りが12%(1ヶ月の分配金が基準価額の1%)とします。
無分配、毎月分配共に100万円ずつ投資して、基準価額が変わらないまま毎月分配型の分配日を迎えたとします。
そうすると毎月分配型は99万円の投資と1万の現金になります。リスクが少し下がりました。一方、無分配型は100万円全部を投資しているのでリスクは変わっていません。

「ほら、やっぱり分配型にはリスク低減効果がある」
・・・とは残念ながらなりません。

この間違いは投資金額を同額に設定していることです。無分配型が必ずしも同額の100万円と投じるとは限りません。
少し時間軸を伸ばして12ヶ月で考えてみます。
毎月分配型は上と変わらずに100万円投資し毎月1万円ずつ分配金を貰います。一方、無分配型は95万円を投資して5万円は手元に持っていたとします。
分配落ち以外の基準価額の変動が無いと仮定すると、投資信託への投資金額は以下のようになります。
Bunpai_MuBunpai
※グラフの凡例が逆です

さて、どちらの方が低リスクでしょうか?
投資開始当初は無分配型の方がリスクは低くなっています。毎月分配型が分配落ちを繰り返して95万円を下回ってからが毎月分配型の方が低リスクになります。どちらの方が低リスクかは言えません。

このシミュレーションは運用成績による基準価額の変動を考えていないので普通分配金の税金は考慮されていません。また毎月分配型ファンドで現金がたまってきた時に再投資する際の手数料も考えていません。これらが無ければ、無リスク資産をどういうタイミングで再投資するかという駆け引きだけの話になるので、どちらの有利不利もありません。
しかし、現実では税金や購入時の手数料があります。わざわざ手数料や税金をかけてまで「投資して引き出す」というプロセスを取ることは、非効率でしょう。
100万円をフルインベストメントして、リスクを下げるために毎月1万円ずつ引き出すことが正しいリスク管理でしょうか。
フルインベストメントして1ヶ月も経たないうちに資金の一部を引き出してリスクが下がって良かったと言うのは、最初からリスクの取りすぎでしょう。

「相場上昇時には無分配型より投資効率が悪いが、相場下落には強い」
これは、無分配型に投資しつつ現金比率を増やしてはいかがでしょうか。現金比率を増やすことで、「相場上昇時の資金効率は悪いが、相場下落に強い」は実現できます。
初めから「投資95万円、現金5万円」はさすがに投資効率が悪すぎると言うのであれば「投資97万円、現金3万円」「投資98万円、現金2万円」でもいいでしょう。
いずれにしても投資する以前に決めるアセットアロケーションの段階でコントロールすればいい数字です。
わざわざアセットアロケーションの部分で投資資金を多めに取りつつ無リスク資産に戻してまでコントロールする類のものではありません。

そのような非効率を分かった上で分配型をやっているならいいのですが、「非効率ではない。そこに意義がある。それぞれ有効な局面は違う」という主張をされると困ってしまいます。



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