私の住んでいる地域も該当しますが、認可保育園の数が足りずに待機児童が多いという問題があります。そのために、保育園に子どもを預けたい各家庭では熾烈な保育園合格争いが起こっています。

これを緩和する方法として・・・点数制を廃止するという案はダメでしょうか?

保育の実施基準
保育の調整基準及び同一指数世帯の優先順位

上は世田谷区の基準ですが、他の自治体でもこのように世帯の状況を点数化して点数の高い世帯から保育園に預けられます。2番目の資料にもあるように、細かい条件がたくさん書かれています。
これはなるべく保育園を必要としている人へ枠を割り当てたいという気持ちから来るのでしょうが、逆にこれがおかしな問題を引き起こしてもいます。
例えば、以下のような条件は分かりやすい例です。

●ひとり親(同居親族がいない)又は父母不存在
●申込児を保育室、保育ママ、認証保育所、ベビーシッター等に有償で預けているのを常態としている場合
●申込児を有償で預けている期間の長い世帯(転園申込の場合は、適用しない)

これに該当すると加点になったり、同点の時に優先されたりします。さて、そうすると何が起こるか?

ひとり親なら加点されるということで偽装離婚する人がでます。保育園の申込の時に離婚して、実態は何ら生活が変わっていないという方法を取ることで点数が上がります。区役所が生活実態まで調査はしません。

申し込み時点で先に認可外保育園などに預けていると加点されるとなると、認可申込時点では子どもを認可外保育園に預けるようにします。

同じく子どもをすでに預けている世帯同士だと、預けている期間が長いほうが優先されるのですから、申込1ヶ月前よりも申込2ヶ月前、申込2ヶ月前よりも、申込3ヶ月前・・・とどんどん早くから預けることになります。これは激化しています。
本当は有休が1年以上取れるので、子どもが1歳になってから保育園に預けたい。しかし、1歳になってから申し込んではまず認可保育園の枠から落ちてしまう。だから、1歳から認可保育園に預けるために0歳の時から認可外保育園に預けて仕事に復帰してしまう。こんな世帯がたくさんいます。先日は私の住む自治体の保育課との懇親会に参加しましたが、このような親がたくさんいました。

しかも、本来なら1歳から預けたいにも関わらず1歳での認可枠を確保するめに0歳で認可外保育園に預ける親も増えているせいで、本当に0歳から子どもを預ける必要がある人が認可外からあふれる現象も出てきています。
また、認可外保育園も本来なら1歳からの保育を希望する人が0歳から預けてくるせいで0歳児保育へ人もコストも取られてしまいます。そのせいで一番需要が多い1歳児保育へより多くのリソースを振り向けることもできません。


何故、子どもが小さいうちは一緒にいて1歳から預けて仕事に復帰したい人が0歳児から預けて仕事に復帰するようなおかしなことになっているのでしょうか?
これは、1歳から預けやすくなるというインセンティブが働くからです。

ここで発想の転換をしてはいかがでしょうか?
長く預けていようがいまいが、1歳児の申込で一切の優遇をしない!!

そうすると何が起こるか?
「子どもが小さいうちは一緒にいて1歳から預けて仕事に復帰したい人が0歳児から預けて仕事に復帰する」意味がなくなります。どうせ早く預けても優遇されないのだったら、希望通り0歳児のうちは家で一緒にいて、1歳になってから預けようとします。こういう世帯が0歳児から預けなくなることで、0歳児での競争も緩和されて本当に0歳児から保育園を利用したい人たちが申し込みやすくなります。
こういう方法はダメですか?

最低限の基準はあってもいいですが、今くらい複雑な基準はおかしな不整合やズルを生み出します。経済困窮度を測る指標で所得を使っていますが、親から引き継いだ家や金融資産のストックがある年収400万と一切のストックがない年収600万では前者の方が裕福でしょう。また、所得把握が難しい自営業者だと収入が少ないように工作をする人もいます。赤字を装っていた多くの法人が追徴課税を受けたというニュースもありました。このように、いろいろ指標を設けたところで本来の意図する通りには動いていません。

大学受験のような場合は、ある程度厳しくても競争があっていいのです。競争することで競争参加者の学力が向上し、たとえ東大を目指した人全員が東大に入れなかったとしても全体としての達成度は上がります。こういう競争はありです。
しかし、偽装離婚してみたり、1日でも隣の人よりは認可外保育園に預けてみたりするという競争はポジティブな成果を生みません。認可保育園の枠を確保できなかった人が得るものはありません。
こういう不毛な競争をしても認可保育園に入れる枠は増えません。だったら不毛な競争をせずに同じだけの枠に子どもを預けられた方が全体としては生産的ではないでしょうか?

不毛な競争で少しでも点数を稼ごうとする親達も多いせいで、親同士でもストレスや不満がたまっています。親同士の会話を聞いていると、「あの家は実はおばあちゃん達が面倒を見ているのに・・・」とか、「年収は低いことになっているけど、家は会社持ちの社宅で実は生活は楽なのに・・・」とか様々な文句も出ています。保育園の枠を争うライバルということで、同世代の子どもを抱える親達の仲が険悪になるのがいいことなのでしょうか?これは本人達の人間の器が小さいということも言えるのかもしれませんが、制度がこういう方向に進むことを助長しています。
努力して点数を上げられるわけではなく、運で左右されるようなくじ引きのような形だったら、皆で「誰が受かっても落ちても恨みっこなしね」で終わることもできそうな気もするのです。

この結果、悪い方向に影響を受けてしまう人もいるかもしれませんが、全体としてはより良い方向に代わる可能性もあると思うのですが、いかがでしょうか?
完全に基準を撤廃するという極論から、3か条、5か条のような簡単な基準だけは設けるといったようにどこか今よりいい落としどころがあるように思うのです。