(山崎元氏がダイヤモンド・オンラインのコラムで同じようなことを書かれていますので、こちらもどうぞ)

週刊ダイヤモンド(2011年10月8日号)は「日本を見捨てる富裕層」という特集がありました。
この中で、富裕層の資産運用について書かれた箇所がありました。特集中では明確には書かれていませんが、記事全体から「富裕層の投資」=「洗練された良い素晴らしい投資」という印象で書かれています。
しかし、富裕層の投資が私を含む非富裕層より素晴らしい投資環境にあるかというと決してそうではありません。

記事の中では以下の資産配分でここ1年で+13.94%のパフォーマンスの人が紹介されています。
 ・40%:先物ヘッジファンド
 ・15%:新興国債券
 ・15%:アジア株
 ・15%:先進国株
 ・15%:資源株

今の相場環境で利益が出ている結果はたいしたものです。しかし、ヘッジファンドや投資信託も膨大な数があります。ある期間を取った時、良い成績を残すものや悪い成績になるものもあるでしょう。
たまたまこの期間では成績が良かっただけとも言えます。

日本の大学が円高で損失を出したというニュースが一時期話題になりました。どんな商品で運用していたのかといえば、何てことはない為替デリバティブでした。機関投資家といってもこの程度の商品で運用しているのです。

「海外のヘッジファンドには優秀な成績を残しているファンドがあり、それに投資できる」という声もありますが、海外に優秀なファンドがあることは有利とは言えません。
ヘッジファンドは無数にあり、投資対象はいろいろです。
投資手法もロングショート、マーケットタイミング、グローバルマクロ、プライベートエクイティのように様々なものがあります。
それだけあれば、良い成績を残すヘッジファンドがいくつもある方が自然です(その裏側には悪い成績のヘッジファンドもある)。
例えば、1990年代はアメリカの大型株に投資していれば大成功でした。たまたまアメリカ株に資産を偏らせておけばよかっただけです。そして日本株に偏らせた人がバカを見ただけです。
優秀なヘッジファンドを見抜けばいいという声もありますが、"事前に"LTCMやマドフファンドをダメファンドとして避けることができるのでしょうか?

「金持ちは証券会社から美味しい情報を貰っているに違いない」のような機関投資家や富裕層は特別な投資をしているという幻想もあるようです。しかし、富裕層や機関投資家に与えられた選択肢は特別に有利なモノではないでしょう。
金融資産をたくさん持っていることは羨むことかもしれませんが、投資そのものは羨むものではありません。