日航、退職後も家族向け航空券=早期募集で条件 (時事ドットコム)

日本航空が早期退職応募者に対して、退職後も家族向け航空券の支給を続けるとのことです。褒めるほどではないと思いますが、これは良い案だと思います。


そんな中、脊髄反射で書いてしまったような残念な記事もあります。
日航、早期退職者に“甘〜いアメ” 太っ腹だけど大丈夫!? (Business Media 誠)
大リストラの第1弾として、2700人の人員削減を進めている日本航空が、特別早期退職者に対し、“太っ腹”な条件を提示して話題になっている。退職金の割り増しに加え、退職後も家族向け航空券の支給を続けるというのだ。
 仮に国内線を羽田−札幌間の片道普通運賃3万5700円(16日時点)で換算すると、年間24枚なので85万6800円に相当する。また、国際線を成田−ニューヨーク間の往復エコノミー運賃30万400円(同)で換算すると、年間4枚で1割自己負担なので年間108万1440円。両方を合わせると、年間193万8240円相当となる計算だ。

 この条件で20年間支給された場合、総額は3862万8800円に達することになる。

 さらにこの水準で早期退職の予定人数2700人に支給した場合、1000億円を突破する計算になる。
今後は運航乗務員やグループ会社にも対象を広げる見通しだが、“特典”については見直し論議も出てきそうだ。
頭の悪い記事です。何が"太っ腹"で、どう見直せというだろうか?

日本では正規雇用者の雇用ルールが厳しいのは周知の通り。簡単に解雇はできない。
そこでリストラを実施する際には早期退職"募集"をかける。
例えば、私の監視銘柄であるプロパストは法人税を払えずに税務当局から資産差し押さえを受けるほどに経営状況が悪化している。そのような環境下のリストラでさえ早期退職制度になっている。日本ではそれほどまでに解雇は難しい。

早期退職制度は"募集"なのだから、応募者がいなくてはなりません。応募は自発的意思によるのですから応募するインセンティブ(割り増し退職金や何らかの特典)を提供しない限り応募者は集まらないでしょう。だから、早期退職でリストラをする時には、通常の退職金などの他に割り増し退職金や他の特典を提供することが必然となるのは当たり前の理屈です。


JALの話に戻ります。
上の記事にもある航空券が問題であるという主張がまったく理解できません。JALが提供できるものから考えると最良の条件の1つでしょう。
 日航は現役社員の福利厚生制度の一環として、毎年、国内線の航空券24枚(片道)と、国際線の航空券4枚(往復、1割自己負担)などの航空券を支給している。この航空券は社員本人のほか、配偶者や父母、子ら家族が利用できる。
 関係者によると、日航側は、特別早期退職に応じた場合、退職までの勤続年数と同じ年数の間、現役社員とほぼ同様の条件で航空券を支給すると提示している。
航空券の条件についてはに記事内に書いているように、現在の条件と同等の模様。

この条件であれば、航空券支給は企業側の負担を最小に抑えつつ、早期退職応募者には大きなメリットをもたらすWin-Winの特典になります。

早期退職応募者にとっては、上の試算にあるように最大限に利用すれば数千万円分の価値があるものになる。だから早期退職に応募するインセンティブとしては十分に魅力的。

一方、企業側にとっても魅力的である。
現在現役社員に支給されているものと同条件なら、この航空券は事前予約はできませんし、当日に空席が無い限りは乗れません。だから、空気を運ぶかわりに人間と荷物を乗せて多少の料理と飲み物を提供した程度の費用しかかかりません。そして、料金を支払う客がいた場合は、この無料航空券の客は飛行機に搭乗できないので、JALは料金を支払った客を取り逃すことにはなりません。


このように無料航空券支給案は、企業の負担は小さく、早期退職応募者の利益は大きいという素晴らしい案ではないだろうか。この手の特典付与は、こういうサービスを持っている企業の強みだと思います。
無料航空券をやめて、同じような経済的効用をもたらすだけの現金を支給するならば企業の負担はかなり大きくなるでしょう。
かといって特典をケチれば早期退職に応募する人がいなくなります。


さて、Business Media 誠の記事はいったい何をもって“太っ腹”な条件と言っているのでしょうか?何をどう見直せというのでしょう?


早期退職制度なんてやめて2700人を雇用し続けろ?
航空券なんてやめて現金で配れ?
法律を破って指名解雇せよ?(普段から企業の人員削減に文句を言うくせに?)