吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



損切り

損失●%での機械的な損切りは巧くない方法

株式トレードにおいて、損切りの重要性を訴え、「●%下がったら機械的に損切りしよう」みたいな声もありますが、このような機械的な損切りルールはトレード手法としては決して巧い方法ではありません。

これは、行動ファイナンスにおける自身の買値へのアンカリングに他なりません。

AさんとBさん、二人の投資家を想定します。
二人とも今日時点で全く同じ910万円をX社の株に投資しています。

ただし、一つだけ違うのは購入額です。
  • Aさんは1000万円で購入して、株価の下落によって910万円になりました。
  • Bさんは910万円で購入して、910万円の評価額です。

二人の資産はX社の株910万円と全く同じですが、Aさんは-9%の含み損での910万円、Bさんは損益無しでの910万円という違いです。
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勝間和代氏の損切り理論はおかしくないかい?

勝間和代氏の日経マネーのムック(『勝間和代あなたも「お金」に愛される 』)をちょっと読みました。

この中で勝間氏の考えがいくつか書いてあるのですが、疑問に思う点がいくつかありました。特に損切りについては大いに疑問に感じたのでここでエントリーを書いてみます。

手元に本が無いので引用はできませんが、勝間氏は本の中で損切りの重要性を説いています。その内は以下のような趣旨です。
「最大の許容リスクは標準偏差±2σとする。その外に出る可能性は5%でこれは例外扱い。だから20%までの変動を許容できる人は標準偏差が±10%のポートフォリオを組むとよい。
2σ(-20%)を超えてしまった場合は、損切りすればいい。
これっていいの?

まず前提条件に対していろいろな突っ込みがあります。
  1. 株式リターンが正規分布するとしている
  2. 上の正規分布が単純なリターンの加減(期待リターン10%のアセットが2.2倍になる可能性と0になる可能性を同一)の分布としている

そして本題の損切り。
勝間氏は損切りの重要性をここ(1)や、ここ(2)等でも訴えています。

私の推測ですが、勝間氏が損切りが有効と主張する根拠は特にここ(2)で書いているような統計データがあるということも大きいのではないでしょうか。
 この3年間で、上げ相場の'06年、持ち合い相場の'07年、下げ相場の'08年と、市場環境は大きく変わりました。どんな人が勝ち組になるのかを調査したところ、3年間にわたりどの投資環境でも必ず出てくる鉄則がありました。それは「損切りをルール化して守っている人と、損切りを守っていない人では、投資パフォーマンスに大きな差が出る」ということです。株式だけでなく、FXでも同じことがいえました。どのくらいの差なのかというと「統計的に1%で有意水準」。「100回、同じ調査をしたとしても、99回は損切りルールを持って、実行している人が勝つ」というほどの強い法則です。
 毎年同じ結論が出て『日経マネー』上で「損切り順守の重要性」を発表しているのですから、
「どの投資環境でも必ず出てくる鉄則」「統計的に1%で有意水準」と如何にも損切りが大事なんだと言いたいかのように強調しています。


でも・・・
このデータは意味が無いですよ。

ムック本の投資方法は許容損失幅を定めてそれに達しないようなアセットアロケーションを組んでいくという話。
一方、日経マネー上のアンケートは個人投資家というだけで、あらゆる投資手法を含めたデータかつ日本株の成績。そうなると、日経マネー上のアンケートは中長期保有するとかなり大きくマイナスになる可能性がある商品への投資に関する話。(TOPIXや日経平均に分散しても-40%や-50%が当たり前の世界で、実際には数銘柄でスイングをするような人も多数。)
リスクが大きな資産を保有し続ければどこかで大きくマイナスになるのは当たり前の話で、出口戦略が重要になるのは当たり前。

全く性質が異なるデータで損切りが有効だとしても、中長期でアセットアロケーションを利用した分散投資でも損切りが有効とは言えません。

「中長期でアセットアロケーションを利用した投資でも損切りが有効だ」と言いたいのであれば、[1.中長期アセットアロケーション、損切り有りスタイル]と[2.中長期アセットアロケーション、損切り無しスタイル]で比較してほしいものです。
仮に-50%で損切りと決めたとして、今回の金融危機のような-50%を超えたの時点で損切りするような人と損切りせずにいる人でどちらが儲かるのか・・・という話です。



また、ここが一番重要なポイントですが、損切りを薦める行為そのものが無責任すぎると考えています。
勝間氏の主張する損切りラインは許容リスクを超えたらラインです。もうこれ以上は資産を減らすことはできないというところまで追いつめられての損切り発動です。そこで損切りしたら市場から退場です。
損切りしたので資産は残っていますが、これ以上減らせないのですからリスクのある市場には飛び込めません。そこで「損切りすれば良い」と薦めるのは無責任ではないだろうか。
##勝間氏は「損切り退場しても再入場できる程度の位置に許容
##リスク(2シグマ)を設けましょう」とは言ってませんよね?



仮に、ある投資家が常に勝間氏想定の正規分布で-2σを許容最大損失としてポートフォリオを組んでいるする。そうすると
  • 1年で-2σを超える確率は2.5%
  • 10年で年次リターンが1回でも-2σを超える確率は22%
  • 20年で年次リターンが1回でも-2σを超える確率は40%
  • 30年で年次リターンが1回でも-2σを超える確率は53%
のようになる。
勝間氏は30年投資したら半分の確率で許容リスクを超えた損失で退場していいというのだろうか。



そもそも・・・
長期投資において年次リターンの単純な正規分布仮定の95%の範囲外を例外とすること自体がおかしいのではないだろうか。「全投資期間の一部の期間でほとんど発生しない=全期間で大丈夫」ではない。上のように長期投資をすると1年に5%程度の確率で発生する事象に遭遇する可能性は高く、その程度のことは想定に入れておくべきだろう。
30年を投資期間と定めるとして、最大許容損失を超える損失が50%の確率で発生するようなアセットアロケーションを組むことは賢くいとは言えない。それはリスクを取り過ぎだろうし、その結果として損切りするのは愚かだろう。


×年次リターンの-2シグマを超えたら損切りすればい
○年次リターンの-2シグマを最大許容損失にしなければいい

だと思うんですけどね。


=========2009年12月3日追記===============
ムック(勝間和代あなたも「お金」に愛される)からの引用。
1年で20%の値下がりに耐えきれないと思う人は、変動幅が、マイナス10%までになるような資産配分を意識する必要があります。
個別株でも投資信託でも、損切りルールを設けるのです。
例えば、20%以上の下落が耐えられない人は、標準偏差を10%で抑える一方、逆指値を使って下落幅が20%を超えるところに損切りラインを置いてしまうのです。そうすれば、最悪のケースでも20%までしか損失を被らないので、穏やかな気持ちになれます。




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