吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



就職活動

就活生組合の理念の矛盾

就活生組合の理念には以下のようにあります。

新卒一括採用の相対化

大学を卒業後すぐに就職するという画一化された進路だけではなく、多様な選択肢を多くの人が実質的に選ぶことができる社会を求めます

就職活動の実質的な機会の平等化

性別、年齢、出身地などによる差別のない就活を実現するための実態に即した政策の実施を求めます

就職活動の学業阻害撤廃

就職活動によって大学の学問が阻害されることのないよう、最終学年の2月以降の開始を求めます

彼らの理念が望む世界が良く分かりません。
3つの項目がありますが。1,2番目を総合すると「性別や年齢や出身地などによる差別がなく、多様な就職形態を推進する」ということです。
つまり、「大学卒業→就職」だけではなく、「就職→大学入学」も「在学中に就職」というスタイルがあってもいいということです。友人が起業した会社に賛同して在学中からその企業の社員になるという選択肢もあります。

しかし、何故か3番目で学生の採用活動は「最終学年の2月以降の開始」と学生への採用活動に非常に強い制限をかけています。在学中の就業という自由は失われるのでしょうか?
この規制は学生ベンチャーにとって大変厳しい。社長のみという会社ならいいのですが、大学の仲間などを誘うことは採用活動になるので禁じられます。学生起業しても学生以外しか採用できないことになります。
最近は増えている社会人→大学で勉強し直しという人が在学中に企業へ募集できないということになりかねません。私の知人でも就職後に専門性を身につけようと大学に戻っている人が何人かいますが、彼らは最終学年の2月以降にならないと就職先を探せないようです。
また、就業しながら通信制の大学に通っていたり、社会人大学院に通っている社会人もいます。彼らの取り扱いはどうするのでしょうか。
社会人大学院に通っていてどこかの企業を退職した優秀な人材を見つけ、「うちの会社に来ないか?」と誘うことが違法行為ですか?

大学を卒業後すぐに就職するという画一化された進路だけではなく、多様な選択肢を多くの人が実質的に選ぶことができる社会を求めます」なんて言いながら、実は自分たちが一番多様性を排除しようとしています。


また、彼らの主張する「合理的基準による採用」+「年齢や国籍や社会的身分による差別が無い」世界は、学生にとっては地獄です。
差別無き就職/採用活動ということは、「既卒、社会人経験あり、就業者」と「学生」の差別も無くさなくてはいけません。そうすると、新卒と非新卒という社会的な違いによる採用枠を廃止し、全てがフリーの応募枠(既卒、就職歴あり、現役の会社員などが応募可能)な枠になります。
この舞台で「合理的な採用基準(年齢差別禁止)」で勝負です。現役で10年間働いている会社員と新卒大学生が全く同じ基準で評価されることになります。
英語力、交渉力、実務能力等々で新卒性に勝ち目はあるのでしょうか?
研究開発の分野で数年間の実務経験がある人と学生で勝負になるのか?
弁護士や医師の採用枠で、未経験の新人君が経験者と戦っても勝負になるのか?
年齢や身分による差別があれば、「若くして学生という身分だから・・・」というポテンシャル採用が通用します。しかし、それが通用しないとなると、学生は無職40歳と同じ扱いになりかねません。

このような世界では、未経験者はいつまでたっても未経験のままです。「(1)経験者だけでは人手が足りない」「(2)未経験でも経験者以上に優れている一部の優秀な人材」のみが未経験でも就業できることになります。

しかし、他の主張を見ているとどうやら就活生組合そんな世界を望んではいないようで、あくまで「僕たち大学新卒が平和に就職できるようにしてほしい」という枠の中にいるようです。


最後に付け加ると、大学に進学しなくては人に非ずという風潮も見え隠れします。

採用活動基本法が中学・高校卒業後に就職する人のことを考えられているとは思えません。
ハローワークなどに情報を公開して年齢や身分によらない競争をせよといのが採用活動基本法の理念のようですが、これは大卒者の就職活動における改善案にすぎません。高卒後に就職する人たちは先生や学校の推薦などで就職する人も多いのですが、彼らの就職を支援するような記述ではありません。「高卒なんて眼中にない」とでもいうのでしょうか。


風呂敷を大きく広げるとそれをたたむのが大変です。がんばれ、就活生組合。







就活生組合は新たな利権団体の危険性

就活生組合に注目しています。就職活動に対する不満に対して活動を起こすという実行力は立派です。
その就活生組合から十七条から成る就職活動基本法の草案が発表されました。


これを見ての感想は「新たな利権団体?」というものです。

就活生の定義
ここで言う就活生とは、全ての求職中のもの・あるいは近い将来求職者になりうるものです。
特に、中学・高校・短大・専門学校・大学・大学院新卒者を主たる就活生として念頭に置きます。

就活生」はさんざんに出てくる用語であり、これは就活生組合の定義です。
就活生とは、全ての求職中のもの・あるいは近い将来求職者になりうるもの」という定義なら求職者でいいと思うのですが、就活生なる用語を使っています。この用語と共に「特に、中学・高校・短大・専門学校・大学・大学院新卒者を主たる就活生として念頭に置きます。」が重要なポイントになります。


就活生とは、全ての求職中のもの・あるいは近い将来求職者になりうるもの」という観点で就職活動基本法のいくつかの条文にコメントをさせていただきます。


(機会均衡の実質的担保)
第五条 前条、前々条実質的担保のために、新卒・既卒、顔写真、年齢、男女等の情報を履歴書・エントリーシート等によって開示させることを禁ずる。

これは就職活動を破壊するものです。仕事において各種要件が必要になる場合があります。例えば、Dr.を持っていることが必要条件な場合もあります。これを開示させることを禁ずるということは非常にくだらない。製薬会社のメディカルドクターなら医学部卒が必須です。


(営利目的の就活業排除)
第六条  何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就職活動に介入して利益を得てはならない。

これは法律の許可をすればいいのかもしれませんが、ヘッドハンティングの会社などが規制に引っ掛かります。転職斡旋の会社など多くの会社がありますが、彼らを規制するということでしょうか?
転職希望者や退職後に仕事を探すときにはどういう経路を活用すればいいのでしょうか?ハローワークしか利用できない?


(採用活動の社会化)
第七条  採用活動をするものは、一事業の短期的な利益だけではなく社会全体の長期的な利益が向上するような展望を持ち採用活動を行わなくてはならない。
 一 前項の目的を達成するために、特に大企業は、景気によらない中長期的な採用計画を提案しなければならない。

一企業が社会全体の利益向上を考えなくてはいけないというのは過剰な要求です。
学生や主婦たちが海外から安いものを仕入れて売るベンチャー企業を立ち上げる時に、彼らは社会全体の利益を考えて社員を募集しなくてはいけないのか?そんなことを考えて起業する人たちはほとんどいないはずです。「おもしろいことをやってみたい。それに賛同できるものは一緒に仕事しようぜ」「ここに儲ける機会がある。手伝ってみないかい」なんてものが多くのベンチャーの動機でしょう。
社会全体の長期的な利益が向上するような展望を持って採用活動を行える企業はほとんどありません。

大企業への中長期的な採用計画要望も意味不明です。
「景気によらない中長期的な採用計画を提案しなければならない」など到底無理な話です。
仮に予想外に好景気になって人手が足りなくなっても企業は雇用を増やせません。日本メーカーの予想に反してスマートフォンは急激に売れるようになりましたが、これらの変化に合わせて採用を変えることは認められません。コンビニなども長期的な出店計画を立ててそれに合わせた採用をしなくてはいけません。逆に、赤字に陥ってしまっても雇用計画通りに採用しなくてはいけなくなります。早期募集退職を募りつつ100人規模の採用をすることになります。
こんな不自由な環境では企業が生き残ることは非常に困難です。
これをやっていくと企業は非効率になり、景気は低迷して雇用は減少します。


(採用活動の期間等)
第九条  採用活動は、就活生の多様性に十分配慮するものでなくてはならず、特に大学新卒者の極端な優遇とそれ以外の就活生の極端な不利益を招来する「新卒一括採用」はこれを認めない。

一 特に大学新卒者の採用にあっては、その採用条件等の説明その他の日程は、採用日程は学事の日程に十分配慮したものでなくてはならず、採用活動それ自体は全学事日程の終了後に限らなくてはならない。 

支離滅裂ではないでしょうか。
「新卒一括採用を認めない」と言いつつも、「大学新卒者の採用日程は全学事日程の終了後に限らなくてはならない。」と新卒の採用時期は一括採用にせよと主張しています。
また、「大学新卒者の極端な優遇を認めない」と書きつつも「大学新卒者の採用活動に配慮せよ」というのも逆ですね。


(労働条件の明示)
第十一条  採用活動を行うものは、労働契約の締結に際し、就活生に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

一 特に営利目的の就職情報媒体は、努めて三十六協定の有無、過労死率やサービス残業時間等の「負の労働条件」を開示しなくてはならない。

企業いじめ。中小やベンチャー企業が就職情報媒体に募集を載せてもらうことが難しくなります。大手の大企業ならともかく、中小(特にベンチャー)ではサービス残業時間などを把握することは極めて困難でしょう。
そもそも、第二条で「就職活動の条件は、就活生と採用活動を行う者とが、対等の立場において決定すべきものである。」と宣言していますから、学生側も「負の採用条件」を開示すべきということでしょうか?


(採用基準の明確化)
第十二条 採用活動を行うものは、採用活動にあたっては、その仕事に必要なスキルを明確にし、合理的な選考基準を募集の際に明示すること。

無理。これはペーパーテストに慣れた学生の戯言です。
病院の医師募集で医師資格が必須のような最低条件は別にして合理的選考基準など存在しえない。
定量化できない要素が多すぎて全体の印象で決まるのが採用。例えば、独自性もある程度突き抜けていれば採用でも、突き抜けすぎていては問題となるから採用されないこともある。


(失業保険に当たる社会保障の給付)
第十条 前条の目的を達成するために、特に教育機関卒業後も就活を続ける者については、失業保険に相当する社会保障の給付を行わなくてはならない。
第十三条 採用活動にかかるすべての旅費については、採用活動が労働力のマッチングという公共性の高い目的をもつことに鑑みて、国または地方公共団体がその全額を負担しなければならない。

これはセットです。
General Electricの募集に応募しようとアメリカに行く旅費も国や地方公共団体が出すのですか?これは海外旅行が好きな若者には嬉しい制度です。失業保険相当のお金をもらいつつ、世界中を旅できます。上限額を設けるのでしょうか?そうすると本当に付きたい仕事のために金がかかってしまう就職活動をしてしまった人は年の途中で支援が打ち切りとなりますが・・・どうするのでしょう。


第十五条 中小企業を含む求人情報をハローワーク等で適切に提示することで、営利目的のナビサイト等に頼らない、企業間・学生間の公平な競争を実現すること。

就活生(全ての求職中のもの・あるいは近い将来求職者)の中から学生だけが公平な競争の対象であり、子育て後に仕事を探す主婦やリストラにあった人は公平でなくていいようです。
また、「中小企業を含む求人情報をハローワーク等で適切に提示する」ということですから中小企業は大変です。コンビニや飲み屋にアルバイトで就職というのも一つの就業形態です。地元の飲み屋は中小企業です。今まで彼らはちょっとした地元のフリーペーパー(営利目的ですね)などに掲載してもらうことなどはありましたが、今後はハローワークへの求人情報提供が要求されるようです。
ベンチャー企業も大変です。学生が起業して仲間に「俺、会社始めたんだけど一緒に働かない?」と個別に声をかけることは不法行為になるようです。(そもそも在学中の学生への勧誘が禁止)

また、投資銀行の幹部職の募集もアルバイト募集と混ぜてハローワークになるようです。特定業種の情報提供や交渉に優れた転職サイトなどがありますが、彼らは淘汰されるようです。(私の条件にあった転職候補企業を探してくれるコーディネーターは役立ったんですが・・・)


(就職活動の条件の決定)
第二条  就職活動の条件は、就活生と採用活動を行う者とが、対等の立場において決定すべきものである。
一  就活生と採用活動を行う者は、就職協約、その他両者間において決定された諸条件を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。
(罰則)
第十七条 本法律案に違反する採用活動を行う者については、罰金・過料などの罰則に加え、企業名の公表・有期・無期の採用活動の禁止などの行政処分が下される。

第二条では、条件は対等の立場で決定し、就活生と採用活動を行う者の両者に信義誠実の原則があると謳っています。しかし、第十七条では採用活動を行う者についてのみ罰則が規定されています。一方は信義則を破ると罰則有で、一方は信義則を破っても罰則無。これで対等な立場ですか・・・
しかも、採用側の罰則には採用活動の禁止という非常に重い罰もあります。採用禁止などの処分を受けると将来を見限って退職する人も出るでしょう。特に他社から引き抜きがあるような替えがいない優秀な人ほど辞めてしまうでしょう。社内唯一の専門家がいなくなっても代替の人を採用できないと会社はつぶれかねません。(すし屋がすし職人を採用できない等)


あくまで草案とのことですが、非常に気になる内容が満載です。
期待はしているんですが、個人的にはこの内容は気に入りません。



どう考えても中小企業より大企業がいい

一般論として書きます。
「就活学生はまずは大企業を目指すべきです」
最近の新卒内定率の低さにつけこんでか、大企業を叩いて学生は中小企業を目指すべきかのような意見が多く目に付くようになりました。
※参考:『城繁幸氏の発言に考える、オピニオンリーダーが過激になっていく理由

そこで当たり前の話を書いておきますが、どう考えても一般的には大企業の方が有利です。

まず、各種データから示されるように大企業と中小企業では給与が違います。以下は平成21年の民間給与実態統計調査の結果です。
1〜9人 : 344.3万円
10〜29人 : 407.5万円
30〜99人 : 405.7万円
100〜499人 : 429.3万円
500〜999人 : 473.2万円
1,000〜4,999人 : 507.4万円
5,000人以上 : 542.5万円

あきらかに規模に応じて給与が増えていきます。また、福利厚生などについても大企業の方が手厚い傾向が強くなっているので、報酬では大企業を選ぶのが極めて合理的です。
日本を代表する大企業の正社員ともなれば、そこそこの給与はもらえます。30代で年収1000万円が見える企業もありますし、そこまでいかなくても30歳でまず年収400万円は超えます。
世の中にはワーキングプアが増えているという話もあり、ワーキングプア層の人生への満足度が高いという話はありません。そして、30歳で400万円以上はもらえる大企業社員はワーキングプアには含まれず、非正規社員や中小企業社員などとなります。

大企業の終身雇用が崩れてきたことを理由に大企業を批判する向きもありますが、それを悪だといえば中小企業の方がもっと悲惨です。中小企業で終身雇用を考える方が無謀でしょう。

仕事の楽しさについても誤解があります。自立してユニークな試みをしている中小企業もありますが、多くの中小企業は大企業の依頼を受けたり、多くの妥協の末に仕事を受注しています。だからこそ下請けイジメという言葉があり、それを規制しようとする法律まであります。大企業の支配下にある中小企業は多く、顧客である大企業の言いなりです。このような大企業の満たす要求に応えることに精一杯な中小企業では自由な仕事はできません。

また、ブラック企業と言われる仕事環境の劣悪さでは中小企業も負けていません。2ちゃんねる発で映画化も書籍化もされた『>ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』という話もありますが、仕事環境が劣悪な中小企業は多数あります。大企業にも劣悪な労働環境はありますが、中小の方がその比率は多いでしょう。

先日、大企業代表のような企業に勤める知人たち何人かとも食事をして話をしてきましたが、全員が全員大企業肯定派です。給与はいいし、福利厚生はいいし、大きな仕事ができるし、リストラされても転職できそうだし・・・といい話ばかりです。

このように、個別企業の善し悪しは別にして、集団として比較した時には一般的には大企業の方がよいでしょう。

巷で増殖している「中小企業はいいぞ」という人たちの意見は重大な欠点があります。
確かに個別の企業を見ていけば中小企業でもいい職場はあります。大企業だと組織の歯車になる年代でも自由に自分のやりたいことをできる職場もあります。
でもね・・・そういう会社に勤めて自由な発想をできて楽しく仕事ができる人は、ある程度の能力があって大企業を受けても採用されるような人です。
選択可能な環境で中小企業を選ぶのは個人の選択です。しかし、大企業を批判して中小企業を狙えという人たちが話しかけているのは、なかなか内定を取れないような学生です。中小企業に行けば誰でも自由に仕事ができて稼げるわけではありません。能力があるからこそ自由に仕事ができて、大企業勤めの同期より稼ぐこともできるのです。その能力がない人に向かって安易に中小企業でいいというのは、優しい顔をして弱った人と更に叩く行為に他なりません。

不況による大企業のリストラのニュースや就職難を幸いとして、大企業叩きをするのはまだ構いません。
しかし、それをネタに社会のことなど分かっていないほとんどの大学生を中小企業に進めようとする行為は賛同できません。
「大企業がいい時代なんて終わった。これから中小企業だ」は違います。


もちろん、やりたい事が決まっていて中小企業を目指すような人は上の話は当てはまりません。上の話は何も社会のことなど分かっていない95%の大学生を念頭においての意見です。



「年齢差別禁止の規制」だけを設けてもほとんど効果がなさそう

就職内定率の低水準に思う「年齢差別禁止法」の必要性(山崎元のマルチスコープ/ダイヤモンド・オンライン)

どちらかというと一般的には規制緩和寄りの山崎元氏が、規制を設ける方向で意見を書いていたので目に止まりました。

自由主義的な競争原理を持ち出すと・・・「年齢や性別を基準にして採用制限をするような企業は、年齢が高い・女性であるという理由だけで能力がある人材を取り逃している。そのような能力の高い人材を取り逃している企業は競争社会からは自然淘汰される」なんて言ってもおかしくなさそうですが、違ったのは少し意外でした。

以下は山崎元氏の記事からの引用です。
  たとえば、同様の能力を持っている求職者に対して、23歳なら採用できるが、26歳なら不採用だというのは、明らかに差別的だ。企業としても、個人をより丁寧に評価すべきだろう。日本もそろそろ年齢による雇用上の差別を禁止すべき頃合いではないだろうか。もちろん、既卒業者で他の企業に勤めていた求職者も、分け隔て無く選考対象にすべきだ。

 候補者の選考に関して細かく規制で縛ることは望ましくないが、一定規模以上の事業所には、採用の際の選考基準の明示を義務づけることと、その中で年齢、職歴を基準にしないことを求めることが必要ではないだろうか。


私も応募要項に「23歳まで」と書くような露骨な年齢制限は規制されてもいいように感じています。しかし、企業の採用活動において年齢が一切の条件にならないという話は実効性があるのでしょうか?また、年齢を考慮しない能力評価の根拠に妥当性があるのでしょうか?

●実効性への疑問
全ての採用基準が定量的に測定できて点数化できるものなら能力での評価も可能でしょう。しかし、社交性やコミュニケーション能力のような測定が難しいものが選考基準になると、実は年齢を採用合否の判断に入れていても分かりません。企業は表向きは「コミュニケーション能力などを考えてAさんを選んだ」と言えます。
年齢差別禁止を設けただけでは、その実効性に疑問があります。

●年齢を考慮しない能力評価の妥当性への疑問
純粋にその時点の能力だけで評価するのは妥当かのように聞こえるかもしれません。しかし、本当でしょうか?
[16歳で3割25本80打点できる野球選手]と[38歳で3割25本80打点できる野球選手]で基準は同じになるべきでしょうか?
[14歳で100Mを10.1秒で走る選手]と[29歳で100Mを10.1秒で走る選手]は同じ評価であるべきでしょうか?
企業でも1年間の勉強で必要な知識を身につけてきた23歳と10年間の勉強でやっと必要な知識を身につけてきた33歳は同じ評価であるべきでしょうか?現時点では同じラインに並んでいてもその後には若い方が伸びると考えて採用してはいけないのでしょうか?
私は将来の伸びしろがあると思われる若い方の評価が高くても仕方ないと思います。この発想はいけないのでしょうか?
採用選考の判断から年齢を完全に切り離すのは難しいように感じています。


山崎氏も後ろの方で「正社員解雇のルール確立が必要」と書いていますが、このような雇用の流動化とセットでやらなければ、年齢規制は形骸化して変な違和感だけが残ることになりそうです。



新卒就職戦線 (ちゃんとやっている人はまだまだ余裕ということ?)

クローズアップ2010:円高、不景気 長引く就職活動 15万人、行き場ない (毎日jp)
 今春卒業した大学生の就職率は前年比で過去最大の下げ幅となるなど、就職事情は厳しさを増している。政府は、新卒者の就職支援を検討する特命チームを首相官邸に設置し、24日に初会合を開いたが、対策がどこまで実効性を持つかは未知数だ。加えて止まらぬ円高が日本経済の前途に暗い影を落とす。卒業単位を取得していても留年を認める希望留年制度や、既卒者対策に力を入れる大学も増えてはいるものの、就職難は展望の見いだせない状況が続く。
毎日新聞の記事です。上の引用部分にあるように、この記事では如何に就職状況が厳しいかということを言いたいようです。しかし、記事を読み終わった問いの印象は(この記事が事実として)「ちゃんとやっている人にはかなり余裕?」というものです。


 「まさかこんな時期まで就職活動をしているとは思わなかった。周りの友達もほとんど決まっていない」
この女子学生は100社以上に応募したが、内定どころか、面接に進めたのも5社だけ。
このエピソードで就職活動で内定を貰うことがどれだけ厳しいかを言いたいのでしょう。
しかし、毎日コミュニケーションズやディスコなどが発表する現時点での内定率の数字を見ると評価が一変します。
数字が低い毎日コミュニケーションズでも6月末時点で50%弱、7月末時点で54.5%が内定を貰っています。2011年卒業予定者の半分は内定を貰っています。
それなのに自身も友人もほとんど内定が決まっていないということは、申し訳ありませんがこの人と友人達が余りにも酷すぎる。10人中5人が内定が決まっているのに100社中5社しか面接に進めていないのは、更に踏み込んで言うと就職する能力が低すぎるのではないでしょうか。
厳しい言い方にはなりますがそう思えて仕方ありません。


 より深刻なのが既卒者だ。今春、都内の私立大を卒業した男性(22)は昨年は春から秋までメーカーなど十数社を受けたが、内定ゼロ。卒業後は「学校の支援もなくなり、どの企業がいつ募集しているのか、どこに行けばそれが分かるのか、情報も少ない」と話す。
上ほど強烈でもなく新卒でもありませんが、このエピソードも多少疑問を感じさせます。
具体的な程度は書いてありませんが、学校を卒業すると就職情報が分からなくなるというのは情報収集能力に少し低すぎませんか?ネットの就職サイトでもリクナビなどは既卒でも利用できます。また、一度就職活動してもいるのですからそのネットワークもあるはずです。



こういうエピソードを読んでいると、自分で主体的に動けない人や何か足りない人が就職できないだけで(表現がきつくてすみません)、ちゃんと自分で動ける人は就職できているように感じてしまいます。
インターネットがそれほど発達していない時代であれば、企業の情報を紙で調べて自ら足を運んだり連絡したりした人も多いでしょう。新卒サイトを利用できないから情報が不足するなら、そういう古典的な方法を使ってもいいはずです。十数社を受けた程度なら、情報収集がその倍程度しても40社。十分に電話やメールで確認することはできるはずです。

選考をかねた説明会がネットエントリーでエントリー開始からすぐに定員に達したから参加できない、既卒はどんなに手を打っても門前払い、というような話は同情できます。
しかし、記事中にあるほぼ皆が内定が取れていないグループの話を聞かされても、何だかなーという気持ちになります。


もちろん、今が団塊の世代の就職時期やバブル世代の就職時代のように楽なことは無いでしょう。

父親はその売り手市場の時代に就職したとのことですが、エピソードが素晴らしい。
 ●大学生の時点で自分から応募しなくても名だたる企業からうちに来ませんかのオファーがきた(今で言う財閥系商社、メガバンクのような人気企業)」
 ●デートで忙しいから面接を断ると連絡したら、「面接日を別の日にさせてもらうので来てください」と言われた
こんなエピソードに欠きません。
そんな時代に比べれば就職が厳しくなっているのは分かります。しかし、非内定者になるべくしてなっているような人が結構いるならば、妥当な能力がある人はそれほどあぶれていなそうに思えてしまいます。



私の著書 - ズボラ投資
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