吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



基準価額

基準価額? 基準価格? 勝手な考察

梅屋敷商店街のランダム・ウォーカーにて、『投資信託の「基準価額」?「基準価格」?』というエントリーがありました。これに触発されたエントリーです。(そこでのやり取りもベースになっています)

基準価額
基準価格


投資信託では、この2つの言葉が同じような意味で使われています。どちらかが素人の誤用ならば誤用と言い切って結論付けられるのですが、梅屋敷商店街のランダム・ウォーカーでも書かれているように、日経新聞などがあえて基準価格を使っています。


さて、基準価額と基準価格、どちらが正しいのでしょうか、またどちらを使うべきなのでしょうか?


まず基準価額と基準価格の違いが日本語だと分かりにくいので、英語にしてみます。

野村證券のページによると基準価額=Constant Valueとなっています。基準=Constant価額=Valueですね。基準価格は正式とはされていないので英訳が見つかりませんが、Market Priceのように価格=Priceでしょう。それでは、これらの言葉を順にどういう意味かを考えてみます。

"基準=Constant"
"価額"や"価格"だけではそのものの値段も価値も分かりません。
「新米が3000円」で高いか安いか、どれほどの価値があるかは分かりません。1kgなのか、3kgなのか、5kgなのか。10kgなのか・・・量が決まらないと分かりません。ある日「新米が(5kg)3000円」で、翌日には「新米が(10kg)4000円」かもしれません。この時に「3000円だから安い」とは言えません。
投資信託も同じです。常に過去と比較をするためには共通の基準となる単位が必要です。これが基準=Constant(通常は1万口)でしょう。

"価格=Price"
日用品の売買で牛乳の価格が200円とあるように、一般的に価格=Priceは売買するときの値段を指します。ですから投信においても価格=Priceとあれば、売買するときの値段と考えていいでしょう。

"価額=Value"
Value≠Price。タイムセールで150円になった「明治おいしい牛乳1000ml」とタイムセール直前に220円で買った「明治おいしい牛乳1000ml」(賞味期限同じ)は、価格は違ってもモノの"価値=Value"は同じです。
Valueは、ETFなどでよく使われるNAV(Net Asset Value)のように、投資信託が保有している有価証券等の価値を表す意図が強いと考えられます。投資信託では運用会社が毎日保有する資産を値洗いして基準価額を算出しているのですから、それを表すには価額=Valueという表現がふさわしいのでしょう。



さて、上で分解して考えたように、["価額=Value"]≠["価格=Price"]なので、基準価額≠基準価格と考えて、より正確にファンドの売買を説明する文を書いてみます。

【「基準価額12000円」のファンドは「基準価格12000円」で買える】

これが基準価額と基準価格を区別したより正確な表現ではないでしょうか。
さらに調子に乗って、上の文章の「(かっこ)」の中を以下のように基準価額/基準価格と言う言葉を使わずに書いてみます。
 ・「基準価額●円」=「1万口当たり●円の価値がある」
 ・「基準価格●円」=「1万口当たり●円の価格」

【「基準価額12000円」のファンドは「基準価格12000円」で買える】
【「1万口当たり12000円の価値がある」ファンドは「1万口当たり12000円の価格」で買える】
(投資信託の場合は左と右の価格が同じですが、マーケットの裁定に任せているETFの場合はこの左と右の数字に乖離が起こりえます)

"基準価額""基準価格"という言葉を使わずにくだけた表現で説明する正しい表現でしょう。でも、これでいいのでしょうか?
"基準価額""基準価格"を使っても使わなくても回りくどい。投資家には分かりにくいですね。「何で同じ金額を2つの似たような表現で説明するんだ!これだから金融商品は分かりにくい!」となりそうです。

基準価額だけを使うと、運用会社が値洗いしたファンド保有資産の価値に重点を置いた考え方になるでしょう。「保有しているファンドにはこれだけの価値があるんだ」と伝えるにはいい表現でしょう。ただ、モノの取引の時の価格に注目しがちな個人投資家には「価額って何?」という疑問が付きまといそうです。

基準価格だけを使うと、売買する投資家に分かりやすくなります。しかし、取引価格だけに着目した視点になるのでファンドの価値というニュアンスが弱くなります。「取引価格は●円だけど、本当にそれだけの資産を持っているの?」のような素人質問が増えるかもしれません。
また、ファンド運用側に「俺達が算出しているのは取引価格じゃない。ファンドの価値だ」なんて反感も生まれるかもしれません。目論見書に取引価格とは書きたくないでしょう。



どのやり方も一長一短です。決め手は何を重要視するかだと思います。個人的には金融商品ということもあり、ある程度の正確さは必要と考えて基準価額だけを使う方法が好みです。
皆様はいかがでしょうか。


なお、基準価額になったのは投資家ではなく、金融機関側(金融機関及びそちらに違い人たち)が用語を作ったからと推測します。







投資信託の誤解:「人気が集まると基準価額は上がる」

「人気があって、資金が流れてくる投資信託は基準価額が上がる」

なんて誤解があります。


これは株価と基準価額を混同している誤解ですね。

人気があって資金が流入すると基準価額が上がるのは株価です。
一方、投信は有価証券のバスケットであり、資金流入が基準価額上昇とはなりません。
日経平均連動インデックスファンドで人気ファンドAと不人気ファンドBがあったとしても、両ファンドの基準価額は人気に関わらず日経平均に連動して同じパフォーマンスになります。(運用巧拙やコストなどの差を無視した場合)


しかし、経済や金融で食べている人でもこの誤解をしている人がいます。以下は何冊もの経済・金融関連の著書がある須田慎一郎氏の『投信バブルは崩壊する』のグロソブに関する記述です。
実は分配をすると、そのつど、投信の価格である基準価額が下がる傾向が見てとれる。ところが、資金が次々と流入することで資産増加に伴って基準価額が再び上がるために、そのような事態は見過ごされてきた側面がある。
本来、5兆円以上もの資金が集まれば、もっと値上がりしてもよさそうなものに思える
グロソブだけで世界の債券市場に対して圧倒的な影響を与えるほどの資金量なら基準価額も動くでしょうが、世界の債券市の前ではたったの5兆円にすぎず、その金額が何年もかけた資産規模ですから債券価格を吊り上げるほどにはなりません。
基準価額が上がったのは実質ベンチマークのシティグループ世界国債インデックスが上がっているようにそのアセットの評価額が上がっていただけです。
ですから「ファンドを通じた資金流入が債券高をおこす」なんて言い訳も通用しません。
須田氏の完全な誤解です。そうでなければ意図的で悪質な嘘です。

しかし、嘘とは考えにくい一面があります。
何も高いコストを払ってまで、投信の手を借りることはない。自ら外国株や債券を買って、国際分散投資をやればいいだけの話である。
同じ著書の中で、このように外国株式や債券を直接買えと平気で書いてしまうほどですので、無知ゆえの誤解ということだと推測されます。
国際分散投資を自力でやるとどれだけコストがかかるんでしょう。ヨーロッパ、ベトナム、ブラジル・・・と投信組み入れの外国株や債券を個人で直接買えばいいなんて発想は正気の沙汰とは思えません。



おっと、須田氏の話になってしまいましたね。松尾健治氏の著書ほどではありませんが、非常に"面白い"本ですので、つい脱線してしまいました。本題に戻ります。


分配金の誤解ほどの圧倒的存在感はありませんが、専門家(?)の須田氏も堂々と著書に書いてしまうぐらいですので、「人気があると基準価額が上がる」という誤解は地味に残っているようです。



ふと思う:人気投信の基準価額は上がり、不人気投信の基準価額は下がるという勘違いもある?

ふと思ったことです。

投信購入者の中には、「人気があって資金が流入している投信の基準価額は上がり、不人気投信の基準価額は下がる」という勘違いがあったりもするのでしょうか?

株価については上記のような"美人投票@ケインズ"が成り立ちます。皆がほしがる株の株価は上昇し、皆がいらないという株の株価は下落します。


それを踏まえて・・・
投資信託でも同じように「皆がほしがる投信の基準価額は上昇し、皆が要らないという投信の基準価額は下落する」と思っている人がいるような気がしてきました。
今まで特に気にしてはいなかったのですが、中にはそのような勘違いをしている人もいるのではないでしょうか。

仮にそのような勘違いをしている人がいるすれば、そのような人は多くの資金を投信に投入している人に多いかもしれません。
毎月分配がお得なお小遣いという感覚の人も多いと言いますし、あながち根拠無い仮説ではないのでは。



=== 補足 ===
人気の有無は投資信託の基準価額には影響はありません。
投資信託の基準価額は、その投資信託を構成するモノ(株式、債券等)の価格で決まります。

トヨタ自動車、MUFG、NTTの3銘柄に1/3ずつ投資する2つのファンド(Aファンド、Bファンド)があったとします。
この1年でAファンドには資金が1000億円流入しました。Bファンドは500億円資金が流出しました。しかし、運用の巧拙や信託報酬等のコスト要因などの微細な影響を除けば、この期間における損益はどちらのファンドも変わりません。
Aファンドが+20%ならBファンドも+20%です。何故なら投資信託を構成する株式の値動きはAファンドでもBファンドでも同じだからです。



投資信託の基準価額とは

今日は投資信託の基準価額について書いてみます。


まず、基準価額とは基準価格ではありません。

それがどうした?と思われるかもしれませんが、これは重要なポイントです。

基準価額を簡単な式で表すと以下の通り。
[基準価額] = [ファンドの総資産額] ÷ [口数]

上の式で、ある時点での基準価額が分かります。

では、資産が集まる前、つまりファンドを設定した時の基準価額はいくらになるのでしょう?
投資家から資金を集める前では、総資産額を口数で割るわけにいきません。


答えは10,000円です。



ファンド設定時の基準価額を10,000円と設定します。
だから、現時点で基準価額が30,000円のファンドは、ファンド設定時から200%の利益を出したことになります。
##分配金や税金を無視してます



では、問題です。

【質問】
中国株式に投資しており、基準価額の異なるファンドが2つあります。
 ・投信A:基準価額20000円
 ・投信B:基準価額40000円
共に中国株式市場の急騰に乗ってここ1年で年100%近い利益を出しています。さて、中国株式に投資したい貴方はどちらを買うべきでしょうか?
##分配金やコストなどは考慮しません



【答え】
どちらも同じ。
投資信託同士を比較する場合、その基準価額同士を比較して「Aの方が割安でお買い得」「Bの方が高いから運用成績がいい」とは言えません。



ちょっと缶コーヒーなど商品の価格を考えて見ましょう。
 ・缶コーヒーA:価格60円
 ・缶コーヒーB:価格120円
この場合、
 「Aの方が安くてお買い得だ!!」
 「Bの方が高いということは品質がいいはずだ!!」
なんてことが言えたりします。

これはA、B共にコーヒーという同一の尺度の元に比較されているので、割安や割高という比較ができるのです。


しかし、投資信託の場合は基準価額とはそのファンド自身が設定された日を10,000円としているので、他のファンドと比較できません。

インド株に投資する基準価額15000円のファンドを「買い」と思うのであれば、同じインド株に投資する基準価額40000円のファンドのも全く同じく「買い」なのです。
中国株に投資するあるファンドの基準価額が50000円を超えたから危なそうというのであれば、同じ中国株に投資する基準価額15000円のファンドも全く同じく危ないのです。


このように同じ対象に投資する投資信託同士でも、その金額で比較できないから、基準価格ではなく、基準価額なのです。





基準価額が低いと割安でお得か? その2

##間違いがあれば訂正コメントをお願いします

前回の続きです。


前回は「基準価額が低い方がたくさん口数を買えて割安」を検証して、これは間違いと書きました。

しかし、前回のケースは分配金を想定していません。分配金は「1万口当たり○円」となるので、口数が多い方がたくさん分配金が出て有利にも思えます。

本エントリーではこれを検証してみます。


分配金が毎月1万口当たり100円のインデックス投信2本を比較します。
##分配金は毎回変動するものですが、ここでは検証を
##簡単にするために1万口当たり100円で固定します。


 ・投信C:基準価額10000円、分配金100円
 ・投信D:基準価額15000円、分配金100円

 ・安田さんは投信Cを15万円購入しました(=15万口)
 ・高田さんは投信Dを15万円購入しました(=10万口)


1ヵ月後には共に2%の利益が出て分配金を出す日がきました。分配金が出る前の基準価額は
 ・投信C:10000円*1.02=10200円
 ・投信D:15000円*1.02=15300円

このようになります。
ここから1万口当たり100円の分配金がでます。そうすると安田さんと高田さんの分配金受取額は
 ・安田さん:100円*15=1500円
 ・高田さん:100円*10=1000円

安田さんの方が500円多く分配金を受け取れます。
安田さんの方がお得!!」と思いませんか?

そう判断する前に、ちょっと待った。

分配金後の投信Cと投信Dの基準価額と安田さん・高田さんの投信の総額を見てみましょう。まず基準価額dです。共に100円の分配金を出したので
 ・投信C:10200円-100円=10100円
 ・投信D:15300円-100円=15200円
となります。

次に安田さんと高田さんの投信保有額を見てみます。
 ・安田さんの投信保有額:10100円*15=151500円
 ・高田さんの投信保有額:15250円*10=152000円

分配金とは逆で、分配金後の投信保有額は高田さんの方が500円多くなっています。

この差はどこから生まれたのでしょう?
これは支払われた分配金を見れば分かります。

投信A(安田さん)の方が分配金が500円多い
→投信B(高田さん)の方が分配金が500円少ない
→その少なかった500円は保有投信の中に残っている

こういうことです。投信Dは、投信Cと比較して分配金が少ない分だけ投信本体にお金が残っているのです。

言い換えると、投信Cは投信Dより多く投信を取り崩して購入者に還元しているのであって、運用での値上がり率が同じであれば、分配金をいくら出そうが投信Cと投信Dは資産総額としてはなんら変わりないことになります。
つまり、より多く現金化したか投信として持ち続けているかだけの違いで、「分配金が多くてお得」ということはありません。



●補足:複利の力

翌月も2%上昇と運用成績が同じだったとします。その場合、分配金と分配金後の投信保有額、累積損益は以下のようになります
【安田さん(投信C)】
 今月分配金:1500円 (100円*15)
 投信保有額:153030円 (10202円*15)
 累積損益:156030円
【高田さん(D投信)】
 今月分配金:1000円 (100円*10)
 投信保有額:154550円 (15455円*10)
 累積損益:156550円

なんと、共に毎月2%↑の運用成績を残している投信なのに投信Dの方が520円利益が多くなります。

これが複利の力です。

運用で利益がでる投信では、この複利の力がプラスに働くので、分配金が少なく投信内に留保する額が多いほど資産総額は増えます。
また、分配金受取時には税金がかかることがあるので分配金を再投資する場合、再投資できる金額は分配金より減ることが一般的です。

##通常、中長期的にマイナスになる投信を選択する
##ことは少ないと思いますので、基本的に複利の力を
##利かせたほうが資産は増えます






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