吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



吉本佳生

医薬品の輸入が貿易赤字の陰の主役だって?そんなバカな…

貿易赤字「陰の主役」は薬 輸入超過、10年前の5倍 (日本経済新聞)
 医薬品の輸入が拡大している。新薬開発で米欧の後手に回り、海外から高額な抗がん剤などを買う必要があるためだ。輸入が輸出を上回った額(輸入超過額)は2011年には10年前の5倍の1兆3660億円で、日本の貿易赤字(2.5兆円)の隠れた主役になっている。40兆円規模に膨らんだ日本の医療費を支える税金と保険料は、海外に流れ出ているのが現状だ。


日経新聞の記事によると「医薬品の輸入超過額が1兆3660億円で、2.5兆円の日本の貿易赤字の隠れた主役だそうです。
1兆3660億円÷2.5兆円と計算して「日本の貿易赤字に占める割合が50%超と巨額→主役」ということでしょうか。へー、凄い。


本当に医薬品の輸入は陰の主役と呼べるようなものなのでしょうか?
以下にJETROで公開されているデータを元に2011年の日本の貿易収支情報をまとめてみました。(通貨はドル)
Boueki_Shushi

輸出-輸入の貿易収支は320億ドル(約2兆5千億円)の貿易赤字となります。
そして、注目の医薬品は45億ドルの輸出に対し、216億ドルの輸入なので、差し引き171億ドル(1ドル=80円だと1370億円)の輸入超過です。

このデータを見ても確かに医薬品の輸入超過額は全体の貿易赤字額の1/2以上の数字です。

しかし、他の項目の数字を見ると違った光景が見えてきます。
非常にわかりやすいのが鉱物性燃料何と鉱物性燃料は医薬品の約15倍の2577億ドルの輸入超過です。日本の貿易赤字全体額と対比すると798%です。

他を見ても、食料品は688億ドルと医薬品の4倍以上の輸入超過です。原材料も538億ドルの輸入超過と医薬品の3倍以上です。
他にも衣類など輸入超過額が大きい項目は多数あります。

さて、医薬品の3倍や4倍や15倍という輸入超過になっている項目があるにもかかわらず、医薬品が陰の主役と言えるのでしょうか?
「主役」を作ろうとするなら、どう考えても鉱物性燃料であり、医薬品と同じレベルまで細分化してもその中の原油及び粗油です。医薬品は赤字項目ではあっても主役クラスには到底及びません。

日経新聞の陰の主役という呼び方は非常に残念なデータ解釈の典型例です。
2.5兆円が売上のような全てプラス方向の数字を積み上げる性質のデータであり、全ての項目の数字が正で合計が100%になります。その中で1兆3千億円超と約半分なら主役と言えます。
しかし、貿易収支のようなプラスマイナスがあるデータでは、合計金額に対する比率で主役/脇役を語るのは大きな間違いです。

このようなデータの読み方の残念な間違いは、以前も紹介した吉本佳生氏の数字のカラクリを見抜け!でも紹介されています。


[Note] 私は製薬関連の業界にいる人間です







データの読み方 (前期比の注意)

データを読むときの注意点です。

前期比、前年比、など前の期間と今回の期間の数字を比較することがあります。そして、今期は良かった(悪かった)などと判断します。しかし、そのデータには罠が潜んでいます。その罠に陥らないように注意が必要です。(参考:吉本佳生氏の『数字のカラクリを見抜け!』にも書かれています)


【商品Aの売上数の前年と今年の比較】
 ●前年: 18600個
 ●今年: 21300個

年末の集計でこのような数字が出たとします。前年と比較して今年は14.5%売上が増えています。
これを持って年末の納会で営業部長が「今年は去年より良かった。来年もこの調子で頑張ってくれ」と言えるのでしょうか?


実はここに罠があります。各月の売上推移をみると実は以下のようになっています。
Data_sample1

去年は1月の1000台に始まって、毎月売上数を増やしています。
一方、今年は2050台に始まって、毎月売上数を減らしています。じり貧状態です。
去年末は月間2000台も売れていたのに、今年末は1500台しか売れていません。つまり、去年末より今年末は状態が悪化しています。
「去年は製品が世の中に知れ渡って売り上げ台数が順調に伸びていた。しかし、今年になるとライバルが類似商品を発売したのでシェアを奪われつつある」という危機的な状況なのかもしれません。
「今年は去年より良かった。来年もこの調子で頑張ってくれ」と言っている場合ではありません。


このように一定期間に区切ったデータを使う時には非常に注意が必要です。
ある期間同士を比べる場合には、その期間内の推移が重要な意味を持つ場合があります。
特に前期の中で大きく上昇して終わった場合、次期は大きく上昇した数字から始まるので下駄が履かされた状態です。期間内のトレンドが下落傾向でもそれを1単位として集計すると数字としてはいい数字になってしまいます。

※通常の会社では月間の売上推移も見ているでしょうから、上の例のようなアホなことが起こるとは思いませんが、一例です

ある期間で区切ったデータ同士を比較する時には、その単位期間内の動きも気にする必要があります。(その内部での動きに意味があるのかないのか?あるならばどう見るべきか?)


なお、吉本佳生氏の『数字のカラクリを見抜け!』はこれ以外のパターンでもデータの読み方の注意点が示されています。お勧めです。



ファイナンシャルリテラシー向上の鍵はクイズ

「貯蓄から投資」
「ファナンシャルリテラシーを上げよう」
「投資・金融教育をしよう」

いろいろ叫ばれています。
しかし、なかなか効果はでません。
私が学校教育で一切興味を持てなかった古文が全然分からないように、興味を持ってもらわないとコンテンツを用意しても効果は期待できません。堅苦しくまじめなお勉強でセミナーをやってもなかなか食いついてはくれないでしょう。

そんな時には、媚びを売るわけではありませんが興味を持ってもらえるようにすることが重要です。身近なものでクイズやゲーム感覚で学ぶのは有力な方法だと思います。
ひとつ面白い示唆を与えてくれそうで、私がお気に入りの本が以下の『金融商品にだまされるな!』(吉本 佳生)



この本では、さまざまな"架空の"金融広告を提示して、そのどこに罠があるのかを解説するという形式になっています。広告Aと広告Bを見せてどちらが有利かと聞くようなクイズのような進め方もあり、楽しんで読める本だと思います。
普段なら自主的に漢字のお勉強などしない人でもテレビのクイズ番組では一緒に考えてしまうように、クイズ形式というのは読者を強力に惹きつけます。身近でお金のことに興味を持った人には真っ先に渡したい1冊です。
(いきなり『敗者のゲーム<第5版>』『ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理』『インデックス・ファンドの時代―アメリカにおける資産運用の新潮流』なんて読めませんよね!?)

吉本氏の本の宣伝はここまでにして、クイズ形式の方が有効というのは保険の営業のシーンでも見られます。国内生保から一気に保険契約を奪っていったカタカナ生保なども保険の説明でクイズのようなトークを使うケースも多々あります。従来の保険商品(定期特約付終身保険)の説明をして、その無駄な部分を考えてもらって逓減型の保険という結論に一緒にたどり着くというトークは定番です(結論は「保険に入ってね」で決まっているのでしょうが)。

いずれにしても、間違いや無駄を探すというクイズ性を持って説明すると強く興味を惹きつける効果があります。ファイナンシャルリテラシー向上の第一歩を、まずは興味を持ってもらうことと考えて、クイズ形式で話をしていくのはどうでしょう?

※吉本氏の著書では先に出された『金融広告を読め どれが当たりで、どれがハズレか (光文社新書)』の方がAmazonなどでも評価は高いです。『金融広告を読め どれが当たりで、どれがハズレか (光文社新書)』の方が内容も濃く、少し我慢できるという人はお勧めです。しかし、『金融商品にだまされるな!』の方が分かりやすく初心者にはこちらを薦めたい。



[ブックレビュー]  『金融商品にだまされるな! 』 (吉本 佳生)

##記事埋めの(?)読んだ本のレビューです


★★★★★
(星の5段階評価で★5つ)


この本への評価は、ちょっと甘めですが★5つとします。

面白いです。読みやすいのに基本知識がしっかりと網羅されています。

しかも「銀行預金はインフレで目減りする。だからリスク資産で運用しなくてはいけない」のような一般的によく言われているウソなどに対しても踏み込んでいます。


・仕組み預金のカラクリ
・ノックイン債(リスク低減型の投資信託)とはオプション
・一見高金利だが、割の悪い外国通貨建て債券
・変額保険の仕組み


いろいろな金融商品に対する情報が書かれています。

特にお勧めはノックイン債(ノックイン型預金?)の記述ですかね。今でも高金利をうたって素人に販売されていますが、これは「オプションの売り手になっているに過ぎない」という非常に重要な注意をしています。
ちょっと投資に慣れていてもオプションの買いに手を出すのは躊躇する人は多いでしょう。損失の上限が確定されているオプションの買いでさえこれです。オプションの売りなんて言われて「やります」なんて人がどれだけいると言うのか・・・

しかし、金融機関は名前を変えて個人投資家を「オプションの売り手」に仕向けています。
「ほとんど損することがないような安全な金融商品がいいな」と思っているのはまさに金融知識のほとんどない素人投資家です。そんな人に対して、知識のある投資家でさえ敬遠するようなオプションの売りを薦めるというのは、押し売りだとか詐欺まがいとか言われても仕方ないようなビジネスではないでしょうか。



金融商品営業の罠に陥らないためには一度は読んでおいた方がいい本です。



私の著書 - ズボラ投資
「毎月10分のチェックで1000万増やす! 庶民のためのズボラ投資」
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