吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



リスク

重要な流動性リスク

流動性リスク

あまり注目されておらず過小評価されがちですが、重要なリスクファクターです。
流動性リスクを取ると以下のような危険があります。


(1) 何かあった時に現金化できない
自身や親族の不幸かもしれません。また生活環境の変化もあるでしょう。流動性が極端に低い資産を持っている場合は注意が必要です。
仮に海外転勤が決まった場合、不動産をどうするか?納得できる値段で売れたり貸せたりすればいいが、そうなるとは限りません。住宅ローンを払いながら空の家を保有し続けるわけにもいかず、納得の値段で売れないかもしれません。
「しっかりと計画しているので大丈夫」という人はいるでしょう。しかし、人の人生は案外と思い通りにいかないものです。決めたはずの自分の心が変わることもあります。
いざという時に資産が拘束されていて活用できないということにならないように注意。


(2) 他リスクのレバレッジ効果がある
こちらは注目度が低いリスクですが、暴落時に起きる流動性の枯渇は重要です。
株式のトレーディングなどでは「損切りを徹底してリスクコントロールをするべし」という解説もあります。平常時はこれは正しい。
しかし、損切りを許さないのが流動性リスクです。
企業の存亡にかかわる重大な不正会計が明らかになった時などには、売り手が増えて買い手が減少します。その結果、買い手不在で売りたくても売れない現象が起こりえます。
空売りの踏み上げの場合はさらに危険です。良いニュースが出てストップ高連発の暴騰銘柄を空売りしていた場合には損失に上限がありません。100円の株価の株をショートしていて300円まで踏み上げられれば200円の損失です。

「流動性の枯渇」の怖いところは、平時には問題がなく、異常時に発生することです。
99.9・・・%の平常時には全く問題なりません。それに安心して投資をしていると、いざという異常時に損失を膨らましかません。
ただでさえ異常な暴落時は損失が大きくなります。そんな時こそリスクをコントロールしたいのですが、そういうタイミングでこそ流動性は枯渇します。
値動きリスクや信用リスクなどに注目が集まりがちですが、流動性リスクは他リスクの影響を大きくするリスクのレバレッジ効果があります。


リスクを考える時には流動性リスクも十分に考慮されるべきでしょう。







FX、債券、株式等のリターンの考え方 (回答)

先の『FX、債券、株式等のリターンの考え方 (予告)』で書いたとおり、『FXはノーリターン(税・コスト調整前)』というエントリーにいただいた意見への回答を書かせていただきます。
(多くはコメント欄でも回答済みですが、コメント欄は埋もれがちなので、新規エントリーにしています)


(1)FXや債券のリターンはゼロサムか?
債券はプラスサム、FXはゼロサムです。

まず、基本として現金をゼロサムと定義します。財布の中にある1万円は明日も1万円です。
そうすると現金と同じく国の信用度で成り立つ国債は金利がつくので、金利分だけプラスサムになります。このように債券はプラスサムです。
外国債券では日本の債券より表面利回りが高いものがあります。しかし、これらの外国債券の期待リターンは決して日本の債券より高くありません。特定の国の債券の方が期待リターンが高いのであれば皆がそちらに流れますので、利回りは低下します。
高い利回りのまま放置されているのは、それだけ為替で損する可能性があるからです。(高金利通貨が有利なら抜け目のないヘッジファンドや投資銀行がこぞって買いに回って先に書いたように利回りが低下します)
ですから、いくら金利差があっても期待リターンは「外国債券=日本債券」「外貨預金=円預金」です。
1への回答に戻ると、債券のリターンはプラスサムということです。

そして、FXのスワップポイントは金利差です。
外貨金利をそのまま受け取れる外貨預金の理論値が円預金と同水準の期待リターンです。外貨金利-日本円金利のFXではゼロサムになります。


(2)株式のリターンはゼロサムか?
株式のリターンはプラスサムです。
ニュースが株価に織り込み済みでも、その結果がゼロサムとはなりません。
人々は利益を出したいと思って企業に出資します。損するかもしれないリスクを負っているのですから、確実な利益より大きなリターン(リスクプレミアム)を要求します。確実に儲けたいと思っているなら1で説明したようにプラスサムな国債を買いますし、ゼロサムならなおさら誰も出資しません。
この「無リスク資産リターン+リスクプレミアム」の水準が、ニュースが適切に織り込まれた株価になります。
株を買っても利益が得られないゼロサム水準まで株価が上がってしまったら、人々は株を手放してプラスリターンの国債か銀行預金に資金を流します。そうすると株価は下がって、適切なプラスサムリターンの水準に戻ります。
このようにニュースを織り込んだ価格がプラスサムになっています。


(3)タイミングによっては損をするインデックス投資は丁半博打と同じか?
違います。タイミングによって損することがある=丁半博打ではありません。事前確率が重要です。

1回1万円で、当たりを引くと2万円もらえて、外れを引くと何ももらえないとします。
 ・箱Aは当たりが99本で外れが1本
 ・箱Bは当たりが50本で外れが50本
 ・箱Cは当たりが1本で外れが99本
箱A、箱B、箱Cはどれも失敗すれば損する可能性があります。しかし、「どれも当たりくじと外れくじがあるのだからどれも同じ。丁半博打と同じ」という人はいません。
箱Bはちょうどゼロサムで丁半博打と同じですが、箱Aは明らかにお得な箱、箱Cは明らかに損な箱です。
タイミングによっては損する可能性があっても、損する可能性が低ければ丁半博打とは違います。(より正確には、期待リターンを考える場合には、想定されるリターン×その実現確率の総和です)
インデックス投資に存する可能性があっても丁半博打と同じとは言えません。


(4)先物の一種であるFXがゼロリターンなら、同じ先物である(株式)先物もゼロリターンではないか?

これは誤解があります。先物とは債券先物、株式先物、金先物、原油先物のように、ある投資対象の先物です。先物商品の理論上のリターンは、その原資産のリターンに準じます。
株式先物であれば、株式のリターンに対応します。債券先物は債券のリターンに対応します。金先物は金のリターンに対応します。
債券先物=債券現物≠株式現物=株式先物です。
為替先物と株式先物は、原資産が違うのですから同じ先物でもリターンは異なります。
「先物は原資産が何であれ全部期待リターンが同じ」とはなりません。


(5)為替取引には「実需組」と「投機(FX)組」がいて実需組が損して投機組が儲けることはあるからプラスサムの場合もあり、その逆でマイナスサムの場合もあるのでは?
確かに為替取引に関わる人間をある区切りで分類すれば、儲かっているグループと儲かっていないグループに分けることもできるかもしれません。「今日は日本人はプラスでイギリス人はマイナス」とか。
しかし、それは投資における期待リターンの考えとは違います。一般的には投資の期待リターンを語る場合には事前確率で話をします。
宝くじで、橋本町1丁目で1等が出て橋本町1丁目のプラスリターンになることもあれば、1等が出なくてマイナスリターンになることもありえます。しかし、「宝くじのリターンはプラスともマイナスとも言えない」とは言いません。宝くじの期待リターンは事前確率であり約50%です。


(6)為替ヘッジなどのために高いコストを払うような人がいるのだからそれがFXの追加リターンになっているのでは?
残念ながらそうなりません。企業などが為替リスクを避けるために為替ヘッジをする際などに追加コストを払っているとしても、それはその為替ヘッジを売る銀行などの手数料に消えていきます。
株式において証券会社が株の売買取引手数料を取るのと同じです。証券会社に払った株式取引手数料は他の株式投資者のリターンにはなりません。
同様に為替取引において余計なコストを誰かが負担していても、それはFX投資家の手元には来ません。


(7)FXが「一方が儲けて一方が損するからゼロサム」と言うならば、株もゼロサムでは?
これは少し違います。AさんとBさんで為替取引と株式取引をしたケースで考えると違いがあります。

[AさんとBさんで為替取引をした場合]
為替がどちらかがに動いて、Aさんが利益を出せば、同時にBさんは同額の損失を出しています。逆にBさんが利益を出せば、Aさんは同額の損失を出します。

[AさんとBさんで株式取引をした場合(AさんがBさんから株を買った場合)]
この場合、株価が上がるとAさんは利益を出しますが、Bさんは損はしません。逆に株価が下がるとAさんは損失を出しますが、Bさんは得もしません。
この時に前者の株価上昇で利益が出る可能性の方が強いので、株式のリターンはプラスサムということになります。
株式でFXと同等になるのは「現物買い&空売り」の組み合わせ場合で、一般的な現物の株式取引を考えるとFXとは全く違う光景になります。


(8)スワップポイントがあれば低金利側の預金金利程度のプラスにはなるのでは?
1にも書いたように、この解釈は違っており、期待リターンは0になります。
外貨預金の期待リターンは円預金と同じ水準になります。
今の日本では日本円の低金利及び外国債券や外貨預金の手数料もあって、FXがほぼ債券代わりに使われている面もあります。そうすると、「外貨預金の期待リターンは円預金と同じ」 + 「FXは外貨預金/外国債券代わり」 = 「FXの期待リターンは円預金並み」という結論になりがちなのかもしれません。
しかし、スワップポイントは金利差となる外貨金利-日本円金利のFXではゼロサムになります。



年齢に応じてリスクを減らさないのも合理的

●参考:最近ベーシックインカムなどで熱く議論させて(ふっかけさせて)いただいている乙川乙彦の投資日記の『外貨建て投資と円建て投資の比率

ポートフォリオを年齢によって変えていく(年を取ったら債券を多くする)というのも変だと思います。寿命が来れば死ぬしかありませんが、その財産は子供が相続します。だとすると、高齢者でも何でもなくなるわけで、そう考えれば、いつも同じように投資していくことで何ら問題がありません。

これは乙川氏のブログの引用ですが、私も思っていたことです。
マネー雑誌などの教科書的マネープランニングだと、個人の生涯でクローズされた形でマネープランニングされていることがほとんどです。「あなたの想定されるライフプランだと支出はいくら。退職後は年金収入だけになることを考えると退職時には●円必要」なんて感じですね。

しかし、マネープランは個人毎に最適化される必要はなく、むしろ全体最適された方が効率的とも言えます。世代を超えた最適化もできるはずです。幾らかの財産を子どもや孫に残して死ぬような場合、実際にそのお金を使うのは20年や30年後かもしれないのです。自分が高齢者で死期が近いからといってその資産運用を債券や円建資産に寄せる必要はありません。

「許容できるリスクの中で最も合理的な方法で運用して、その結果で残った財産を下の世代に引き継ぐ」
これも1つの運用の姿だと思います。

もちろん、万人に当てはまる話でもありません。資産を相続する配偶者や子どもがいない人もいます。いたとしても資産を渡したくない関係の場合もあるでしょう。子どもに財産を渡すどころかこのままだと相続できるのは負債になってしまうという人もいるでしょう。ただ、皆が皆「俺の人生。私のお金。」と、自分という狭い枠に閉じこもる必要はありません。
「いくら金を持っていても使い切れずに死んだら意味がない」なんて言う人もいます。でも良いではないですか。ウォーレン・バフェット氏もビル・ゲイツ氏も資産を使いきれずに死ぬでしょう。「自分はお金をたくさんあまらせて死んだ。そして残ったお金の一部は家族などに渡り、あとは寄付された。」これもひとつの生き方でしょう。



リスク管理とは、想定できるリスクに様々な対処をすること

リスク管理

今や一般的になっている言葉です。しかし、リスク管理という言葉は案外正確に把握されていません。

リスクを「ありとあらゆる将来の不確定要素」と拡大解釈する人もいます。ありがちな勘違いの一つです。
リスク管理では、リスクの「把握・特定」と「対応」がセットです。つまり、把握・測定可能なものがリスク管理の対象であり、事前に想定できないものまでリスク管理の対象に含める必要はありません。

また、リスク管理ではありがちな誤った解釈は、「リスクに対応しなくてはいけない=リスクの影響を回避しなくてはいけない」となることです。こうなると思考が停止してしまいます。
しかし、リスクは完全に回避することはできませんし、全てを回避する必要はありません。リスクが実現しても影響が軽微なものであれば、あえて対策を取らずにその影響を受け入れるという方法もあります。
リスクに対する対応は一般的には以下の4つのカテゴリになります。
 (1)Avoidance(回避)
 (2)Reduction(低減)
 (3)Sharing (移転)
 (4)Retention(受容)

投資におけるリスク管理も大きく分けるとこの4つにカテゴライズされます。

(1)Avoidance(回避)
「元本割れしたくないから、1千万円以下の定期預金」「為替変動が怖いから国内債券」のような場合は回避に該当します。これは完全にそのリスクを排除しています。一番強力なリスク対応です。(厳密には銀行預金の元本保証も国の制度であって完全な100%ではありませんが、ここではその手の議論は割愛します)

(2)Reduction(低減)
「銘柄分散投資」「残存期間が長期の債券をラダー型で購入」などが該当しそうです。また、「リスク資産への投資金額を減らすことで、大損を避ける」も該当するでしょう。これは、リスクがあることは認めてリスクの影響は受けても影響度を下げようとする対応です。株価変動の影響は受けても多数の銘柄に分散することでいきなり倒産で紙切れのような事態を避けます。

(3)Sharing (移転)
保有ポジションに加えてコールやプットオプションを持つことで、ある水準に達した時にオプションで損失分を回避する方法などが該当するでしょう。その投資家本人にとっては損失を回避したことになりますが、Avoidance(回避)とは異なります。保有ポジションが損失方向に動くリスクを回避したのではなく、そのリスクが生じた際の影響をオプションの売り手に移転していることになります。

(4)Retention(受容)
言葉の通り甘んじて受け入れることです。株式投資をすると株が無価値になる可能性があります。それを知っての上で新興企業の有望企業に投資するのは受容です。分散投資においてもマーケットリスクは排除できないので、それを受け入れることも受容になるでしょう。


このようにリスク管理といった場合には上のような4カテゴリの対応方法があります。
リスク管理なんて言うと、いろいろ分析して難しいモノのようにも聞こえますが、知っての上での「全部受容」も立派なリスク管理です。

銀行や証券会社の営業マンの薦めにのって投資して損してから他の人にどうしたらいいのかを相談するのではなく、投資をする前に「自分が投資しようとしているものにはどのようなリスクがあるのか」を考え、そのリスクをどう管理するかを考えてから投資して欲しいものです。



長期分散投資の各アセット間の相関係数は何を使うべきか?

「複数のアセットに分散投資しておくと、あるアセットが値下がりした時に、あるアセットが値上がりしたりするのでリスクが軽減できる。」

分散投資の意義を伝える時にこのような説明がされます。
これは真でしょう。昨今の金融危機下でも、この効果は発揮されました。分散投資していても損していた人は多いですが、集中投資で外した人よりははるかにダメージは小さかった。


この分散投資の分散効果を試算するために相関係数を使うことがあります。相関係数がマイナスや0であるようなアセットを組み合わせるとリスク分散効果が高いということです。

さて、それでは相関係数はどんな数字を使えばいいのでしょうか?
相関係数の誤解(梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー)にもあるように、相関係数はその時々で大きく異なります。一定ではありません。どのデータを使うかで大きく異なります。


私の、長期分散個人投資家へ対する推奨は今回の金融危機の時のように「(1)相場不調時(2)相関が強まった時の数字」を使うことです。
これは、「個人投資家が一番懸念すべきことは許容できる最大損失額を超えないこと」と考えているからです。

2008年頃からの金融危機でも見られたように、世界的な金融危機下では各アセット間の相関が強まるという主張もあります。世界的に景気が悪くなると株式も下がれば、不動産価格も下がり・・・といろいろ相関も高まっても不思議ではありません。
長期分散個人投資家にとって最大のマイナス時はこの時です。この時に許容最大損失額を超えなければ、長期投資を続けられます。


悪いケースは、相関係数の長期間の平均値のような一見妥当そうな数字を使って分散効果を想定したのに、今回のような金融危機にぶつかった場合です。
数学的にはこれで正しいでしょうが、個人投資家が懸念すべきはリスクの大きさではありません。個人投資家が最も気にかけるべきは損失方向の可能性です、特に最大損失です。
最大損失=ワーストケースですので、「今回の金融危機の時のように、(1)相場不調時(2)相関が強まった時の数字」を使うべきでしょう。



私の著書 - ズボラ投資
「毎月10分のチェックで1000万増やす! 庶民のためのズボラ投資」
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