吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)

投資信託を使った低コストインデックス投資/パッシブ投資(バイ&ホールドの国際分散投資)で資産形成を行っている一般サラリーマンの吊られた男が、主に投資やお金のことについて語るブログ。時々、投資やお金以外の話もします。



アセット・アロケーション

アセット・アロケーションがどれほどリターンに影響するのか?

2007年のエントリーでも書きましたが、投資のリターンに対するアセット・アロケーションの影響度について整理します。
というのも、常々思っているのですが、アセット・アロケーションが投資リターンに与える影響が拡大解釈されて、間違った説明がされていると感じているからです。

俗に、アセット・アロケーションとリターンの関係でよく言われているのは、以下のような意見です。
「長期投資のリターンはアセット・アロケーションがその大部分を決定し、どの銘柄を買うかということはそれ程重要ではない」
「アセット・アロケーションがリターンの90%を説明する」


この論拠になっているのは1986年のBrinsonの論文です(Brinson, 1986)。ある期間のあるファンドの変動率の93.6%がアセット・アロケーションの影響だという結論を導いています。その後も類似の研究がありますが、いずれもアセット・アロケーションの影響度がほぼ80%〜90台で非常に高い説明力を持っています。
 ・例: 88% (Ibbotson, 2000)
これをもって、「投資リターンの大部分はほとんど(約90%)はアセット・アロケーションで決まる」と説明する意見があるわけです。

では、「Aさん、Bさんは同じ金額で同じ期間運用しました。60歳の時にAさんの資産は3000万円、Bさんの資産は5000万円になっていました。このAさんとBさんのリターンの違いはアセット・アロケーションの違いで80%以上説明がつく」と言えるのでしょうか?

答えはNOです。


Brinsonにはじまり、各研究で80%や90%の数字を示したのは、Ibbotsonの研究の言葉を借りれば「Variability across Time」です。
これはあるファンドのある期間の価格変動の約90%がアセット・アロケーションのベンチマークに従うということです。
具体的に言うと、さわかみファンドの毎月の基準価額の変動はほぼ日経平均やTOPIXに従うということです。ある月にTOPIXが10%上がると、さわかみファンドもほぼ10%程度上昇するということを示しています。

つまり、Brinson他が言うところの80%や90%は、ファンドや個人間のリターンの違いについては言及していません。あくまで全く同じアセット・アロケーションを組んだ場合のパフォーマンスはほぼアセット・アロケーションで説明がつくという話です。
決して、異なるアセット・アロケーションのファンドや投資家間のリターンの違いの80%以上をアセット・アロケーションで説明できるとは言っていません。


ファンド間や投資家間のリターンについてのアセット・アロケーションの影響度は各研究でも言及されています。その数字は実は80%や90%という数字ではありません。イボットソンの小松原氏提供の第2回インデックス投資ナイトの事前資料にいくつかの研究の数字がまとめられていますが、ファンド間のリターンに対するアセット・アロケーションの説明力は、15%〜69%という数字があります。
 ・米国年金基金:35%
 ・米国投信:40%
 ・日本年金基金:15%
 ・日本投信:69%

小松原氏のこのレポートにも「日本においてもBrinsonたちの研究がファンドのリターン格差に関する研究と間違って解釈されていることが散見される」とも書かれているように、どうもアセット・アロケーションが大部分/90%/80%という言葉が独り歩きしている気がしています。







2010年3月末のポートフォリオ

2010年3月末のポートフォリオです。
201003-Portfoliojpg


ちなみに2009年6月時点のポートフォリオは下記。
200906_portfolio.JPG


主な投資対象は日本株、先進国株式、新興国株式ですが、この区切りではあまり大きな変化はありません。
変化としては新興国株内の割合で、インドの比率が下がっています。これは新興国株式の追加投資をSTAM新興国株式、eMAXIS新興国株式とMSCI Emergingに連動するインデックスファンドを使っていることが大きな原因です。一般的にはインド比率が高いとは思いますが、吊られた男としてはこのくらい(新興国株式内の5〜6割)がいい感じだと思っています。


なお、債券比率は低いのですが、これは定期預金などが債券替わりのアセットとも考えているので、あまり高くするつもりはありません。



6月末のポートフォリオ

2009年2Q資産運用状況でも書いたようにそろそろアセットアロケーションを整理するタイミングです。

そこで、6月末時点のポートフォリオを確認してみました。


200906_portfolio.JPG


















インド株が日本株より多い^^;
日本株、先進国株、新興国株と分けた時の比率は悪く無いが、さすがに新興国株内のインド比率が高すぎでしょう。しばらくはインドはおとなしくして、日本株・先進国株・新興国株のそれぞれのインデックスファンドの買い増しで調整です。


債券比率は・・・今だとセゾンバンガードの積み立て分だけで購入しているのでこんなもんです。



「アセットアロケーションが重要」の嘘 3

先の2つのエントリーについて、とおりすがりさんから素晴らしいコメントをいただきました。

とおりすがりさん、
ありがとうございます。

先のエントリー1
先のエントリー2

通常はコメント欄で返事を書かせていただくのですが、長くなりますので本エントリーで書かせていただきます。



↓↓↓では、以下がエントリーの内容になります↓↓↓


コメントへの返信の本題に入る前に、とおりすがりさんに
誤解させてしまった点への説明をさせてもらいます。

>検証期間については、月次や四半期というのは
>間違っています。

イボットソン氏の論文の検証期間について、前回のエントリーで触れておりませんでした。その前のエントリーでブリンソン氏やバンガード社は検証期間を長期に取っていることを示していたので、イボットソン氏の研究でも自明と思い、省略してしまいました。
これは不親切な省略であったと思います。


言いたいのは、5年や10年という長期間のデータを使って月次成績を検証した結果、○○という傾向が見られるという結論に達しているということです。
検証期間が1ヶ月や四半期のみという話をしたわけではないことをご理解ください。

.



さて、以下が本題です。
イボットソン氏の論文中の90%、40%、100%が何に対してかも補足させてください。

【1】Variability across Time = 90%
あるファンドにおける月次リターン差異の90%はアセット・アロケーションで説明がつく
About 90 percent of the variability of the
monthly returns of this fund can be explained by
the variability of the fund's policy benchmark


【2】40% (Variability among Funds)
ファンド間の10年リターンでは40%しかアセット・アロケーションで説明がつかない。残り60%は他要因で決定される
The mutual fund result shows that, because
policy explains only 40 percent of variation of
returns across funds, the remaining 60 percent is
explained by other factors, such as asset-class
timing, style within asset classes, securiy
selection, and fees.


【3】100% (Return Level)
これはファンドマネージャーの巧拙のような話です。
コストを考慮せずにファンドをベンチマークと比較すると期待されるリターンはベンチマークと同じ(=100%)になる
we would predict that, on average, a little more
than 100 percent of the level of total return
would be the result of policy return. Our results
conirm this prediction.



私が注目したのは【2】のVariability among Fundsです。
少し強引なところもありますが、FundsをIndividualsと置き換えてみます。そうすると…

「投資家間の10年リターンでの差異の40%だけがアセット・アロケーションで説明され、他60%はタイミングやコストなどの他要因に影響される。」となります。



私は40%といい、通りすがりさんは90%といっていますが、私はとおりすがりさんが間違っているとは思いません。

この差は、私(イボットソン氏の40%)という議論には無かった前提が、とおりすがりさんの主張にあるからです。それは「投資信託がインデックスである」です。


ですので、以下の2つの前提条件があってから初めてパフォーマンス差異の多くがアセット・アロケーションで説明がつくという話なのです。

(前提条件1)
 インデックスに連動しているファンドのみで全アセットを 構成されている(全インデックスファンドではない。外れ 値に該当するインデックスファンドを外す)
(前提条件2)
 コスト差異を考慮しない




しかし、このような前提を出さずにいきなり「長期投資においてアセット・アロケーションがその80%以上を決定します。だから銘柄選択に費やす時間があれば、アセット・アロケーションに時間を割きましょう」などと書いてある投資本が多くあります。


投資一般と考えた場合には、コスト差異や運用方針の違いや銘柄/商品という条件は決定されていないので、上に挙げた2つの前提条件は決まっていません。ですのでファンド(投資家)間の長期投資のパフォーマンス差の決定要因と区切るとコスト・売買タイミング・商品選定などが60%程を決定し、残り40%程度がアセット・アロケーションで説明されると
いうイボットソン氏の主張に賛同する意見を書かせていただいています。

つまり、コストを考慮しなければファンドの期待リターンはほぼベンチマークに一致する(100%)といった別の分析には言及しておらず、イボットソン氏のQuestion&Answer2についてのみ言及した主張になります。


以上で、適切な回答になっていますでしょうか?


にほんブログ村 株ブログ 投資信託へにほんブログ村 為替ブログ FX初心者へ


@吊られた男



「アセットアロケーションが重要」の嘘 2

先日のエントリーで「長期投資においてはアセット・アロケーションがそのパフォーマンスの大部分(8割とか90%とか)をしめる」という主張は根拠が無い嘘である。
と書かせてもらいました。


それでは、長期投資においてアセット・アロケーションが与える影響度はどの程度なのでしょうか?




ここである人物を紹介したいと思います。その方はイボットソン氏です。ご存知でしょうか?

イボットソン・アソシエイツの創始者です。

このイボットソン氏の研究からよく引用されて目に付くのは「アセット・アロケーションでパフォーマンスの90%以上が説明できる」という主張である。

しかし、これはブリンソン氏の研究の引用と同じように誤用されているようである。


では、イボットソン氏の研究成果はどうなっているのだろう?
なんとイボットソン氏の研究では

「10年間のファンド間収益率をアセット・アロケーションで説明できるのは40%であり、ファンド間ではアセット・アロケーションよりもタイミングや銘柄選択で差が出ている」

と結論付けているのだ!!

10年という長期投資ではアセットアロケーションより売買タイミングや銘柄選択の方が重要だというのだ!!


では、イボットソン氏が90%云々と言ったという話はどこからやってきたのだろうか?
これは、上記の研究結果を1年毎のパフォーマンスを見た場合に90%以上はアセット・アロケーションで説明がつくと言っているのだ。



つ  ま  り  …

アセット・アロケーションが多大な影響力を与えるのは四半期や1年という短期(中期)の運用においてであり、長期投資においてアセット・アロケーションの影響度は半分以下に低下する

のだ。
このように長期投資でアセット・アロケーションを無視していいとは言えないが、「長期投資でアセット・アロケーションが重要」という主張は非常におかしいのです。




正しくは以下のようになるはずです。

1ヶ月、四半期、1年といった限られた短期・中期投資においてアセット・アロケーションは非常に重要である。
アセット・アロケーションがそのパフォーマンスの8割〜9割を決定するからだ。
しかし、長期投資ではアセット・アロケーションの重要度は劇的に低下し、銘柄選択等他要因の影響度が10-20%程度から60%程度と劇的に増加する。しかし、それでもなお40%程度の影響度を持っているので低下してからといって無視できる要素ではない



にほんブログ村 株ブログ 投資信託へにほんブログ村 為替ブログ FX初心者へ


@吊られた男



私の著書 - ズボラ投資
「毎月10分のチェックで1000万増やす! 庶民のためのズボラ投資」
連絡先
私への連絡は下記メールアドレスまでお願いします
tsurao@gmail.com

tsuraolife_banner_s

follow us in feedly

にほんブログ村 株ブログ 投資信託へ


Recent Comments
ブログ内記事検索
PR
お勧め銀行・証券会社
■証券会社■
○SBI証券

○セゾン投信


■銀行■
○住信SBIネット銀行


■401k(確定拠出年金)■
○SBI証券
タグ
Archives