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投資信託に関して最近2つの面白いデータの話がありました。

1つは投資家の多くが投資信託で損を抱えているという話です。

銀行の投資信託、46%の個人が「損」 金融庁問題提起 (朝日新聞)
金融庁が主要行9行と地方銀行20行の窓口で投信を買った客全員の今年3月末と購入時の投信の評価額を比べた。顧客が払う手数料も引き、実質的な「手取り」を試算すると、46%の人の運用損益がマイナスで、損をしていたという。購入した時期にもよるが、株価が上昇基調で比較的「損をしにくい」環境のなかで、比較的多くの人が損をしていたことになる。


もう1つは実は家計が保有する投資信託の残高が33兆円も過大に計算されていたというニュースです。

日銀、33兆円も下方修正 家計の投信保有残高 (日経新聞)
 日銀は6月27日に1〜3月期の資金循環統計を発表した。目を引いたのは家計が保有する投資信託の残高だ。3月末時点で73兆円強と、3カ月前に発表した昨年12月末時点の残高(109兆円)から36兆円も減少した。個人が売却したり、運用成績が急速に悪化したりしたせいではない。「新たな基礎資料等を採用し、部門別の残高を精緻化した」(日銀)ためだという。

これらに関してはいくつかのブログやニュースでも取り上げられています。内容への解説はそちらへお任せしますが,この2つのニュースを聞いて面白いと思ったのはデータの見方です。

客(個人投資家)の損失ってなんだ?

これは,昨今の相場環境で損している人が半分というのは多すぎじゃないかと直観的に思うところです。案の定,内容を読んでみると今年の3月末時点で保有している投資信託が損失になっているかという話で,必ずしも投資家がトータルで損をしているわけではないという話です。

利益がたくさん乗った投資信託を利益確定し,新しい投資信託を買いなおして微損という,実際には大きく儲けている場合でも,このデータだと損失に入るわけですから,投資家の損というのはちょっと違いますね。

売却済みの投資信託の損益も調べないと投資家の損失・利益については何とも言えません。

そのデータは何に基づいてどうやって作られた?

日銀の資金循環統計はそれなりに信頼できるデータとして活用されています。しかし,家計の投資信託残高を33兆円も過大に見積もっていたということで,(少なくともこの数字に関しては)かなりボロボロのデータだったということになってしまいました。

貯蓄から投資を推進する人たちを中心に過大な数字になっていたデータを根拠にして,物事が語られていることもありましたが,そこもデータが大きく変わってしまったので話が覆ってしまうこともあるでしょう。
ここからわかる教訓は,あるデータを見たときにそのデータがどう作られているかが大事ということです。

新薬の承認申請を行う際も,人にその薬を投与した結果のデータを集めて安全性や有効性を測定してPMDAに承認申請しますが,いきなりその安全性や有効性を見てもらえません。まずはそのデータがちゃんと正しい手順で集められた正しいデータなのかといったことが調べられます。これは当然の話で,「この薬は効果があります」という根拠となるデータが実情を全然とらえていないものでは本当に効果があるかわかりませんので,効果があるというデータにどれだけの信頼性があるかが大事です。

日銀の資金循環統計に話を戻します。
このように考えたとき,日銀の資金循環統計というのも「日銀だから信じる」のようになるのではなく,そのデータがどう作られているかに少しは思いを巡らせてから見た方がよいでしょうね。




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