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「世界中の株式に分散。時価総額比で保有する」
「VTのように世界中の株式に時価総額費で分散することで,世界経済の発展を取り込む」

こんな感じの話を聞くことがありますが,ここで語られている「時価総額」ってなんでしょう?

【時価総額と浮動株調整後時価総額】バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)1本で世界分散投資OK? (2015/2/21) のUpdate版です。

VTの投資先

VT (Vanguard Total World Stock ETF) はFTSE Global All Cap Indexという先進国+新興国と世界の株式に幅広く投資するETFです。そして,FTSE Global All Cap Indexは時価総額型のインデックスと言われています。

そんなVTの国別の投資ウェイトは以下の通り。

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アメリカが52.4%の過半数であり,日本が2番目で8.4%となっています。同じアジアだと中国は日本の1/3以下の2.6%です。
これは基本的にFTSE Global All Cap Indexの比率とほぼ同じと考えていいでしょう。

実際の時価総額はどうなっている?

さて,では実際の株式の時価総額がどうなっているのでしょうか?前回の記事同様に世界銀行のデータを使ってみます。データは2016年のものです。

また,浮動株調整後の時価総額の数字は「わたしのインデックス」の世界各国のPER・PBR・時価総額 (毎月更新)にデータがありましたので,こちらを使います。このデータは2017年11月の数字です。

残念ながら世界銀行のデータにはUnited Kingdom(イギリス)のような主要国ですら幾つかの国はデータがないので,両方の数字を全部対比させることはできませんが,違いが分かりそうな表にしてみました。

■37カ国の中での各国のウェイト

世界銀行.わたしのインデックスともにデータがあったのが37カ国でした。その37カ国を全体として,各国のウェイトを表にしてみました。
時価総額_浮動株_01

1位はアメリカで変わりありませんが,時価総額では43.75%ですが,浮動株調整をした後だと57.72%と14%ほど増えています。

また,面白いのは中国です。時価総額では11.71%で2位になっていますが,浮動株調整後だと3.21%と1/3未満になっています。
アメリカ以外の国と比べると,日本の1/3未満にまで縮小しており,フランスやドイツにすら抜かれています。
香港も中国に含めて考えると,時価総額では16.82%と存在感のある中国ですが,浮動株調整後では4.65%とかなり小さくなっています。

国が株式を持っていることなどが多い新興国は,浮動株調整によってウェエイトが小さくなる傾向があります。


■対アメリカ比

少し違ったグラフを書いてみました。これは各国のウェイトをアメリカのウェイトで割ったものです。
上の表で,時価総額の中国であれば11.71%,アメリカが43.75%なので「11.75/43.75=26.76%」となっています。アメリカの何%に相当するかという計算ですので,これだと中国はアメリカの1/4強の規模があるということになります。(香港含めると38%強)

時価総額_浮動株_02


元の数字が同じなので,最初の票と異なる発見はないのですが,時価総額だと見事に階段になっているグラフが浮動株調整の方だと凸凹していて面白いですね。中国・香港・インドが大きくへこんでいるのが分かります。


どんな時価総額に投資したいか

さて,時価総額でも浮動株時価総額でも,どちらもただの数字です。どちらが良いとか悪いとかと言ったものではありません。各インデックスが時価総額から浮動株調整の時価総額に移ったからと言って単純な時価総額がダメということもありません。

私が気になっているのは,「投資をしている人がこの違いに気づいているか?」です。
特に世界経済の発展を取り込むといってVTのようなファンドに投資している場合です。
一般的に世界経済への影響度を見ると中国経済は無視できない規模になっています。上の表で見ても株式時価総額は世界2位ですし,GDPもそうです。しかし,浮動株調整後になると存在感が小さくなります。中国経済の世界への影響度と浮動株調整後の時価総額インデックスの中での中国の存在感には大きな乖離があります。

「いやいや,そんなこといっても世界中の経済はつながっているんだからそのような比重はテキトーで構わん」と言うならいいのですが,「浮動株調整後の時価総額 = 時価総額」のように話されると,それはちょっと違うと思うところです。


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