gpif

まず、最初に言っておきたいのは、通常だと7月第1週には行われるGPIF (年金積立金管理運用独立行政法人) の年度運用成績の公表を、今年に限っては7月29日と参議院選挙後にずらした安倍政権のやり口は姑息かつ汚いやり口です。リスク資産での運用なのですから儲かることもあれば損することもあります。損も堂々と公表すればいいのですが、このあたりは人としての器の小ささか。


しかし、それよりも困ったのは民進党です。民進党が「年金運用『5兆円』損失追及チーム」なるものを立ち上げたようです。年金5兆円の損失の責任を…などと言っていますが、意味が分かりません。

「ポートフォリオの変更をして株式の運用比率を50%に上げた初年度だから問題視しているのです」
「ポートフォリオの変更は判断ミス、失敗だということになります」

公的年金の運用は単年度で評価されるようなものでいいのでしょうか?
この初鹿議員の話を聞いていると、まるで民間のファンドマネージャが評価されているみたいです。年金運用って資産割合を変更した年に、その変更が上手くいかないといけないようなものでしたっけ?

以下に抜粋しますが、初鹿議員他、民進党の議員は年金関連の法律や理念を読まれた方がいいでしょう。
国民年金法第75条
積立金の運用は、積立金が国民年金の被保険者から徴収された保険料の一部であり、かつ、将来の給付の貴重な財源となるものであることに特に留意し、専ら国民年金の被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うことにより、将来にわたつて、国民年金事業の運営の安定に資することを目的として行うものとする。

厚生年金保険法第79条の2
専ら厚生年金保険の被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うことにより、将来にわたつて、厚生年金保険事業の運営の安定に資することを目的として行うものとする。

2. 年金積立金運用に対する年金制度からの要請より
このような年金制度からの要請に応える年金積立金運用のあり方ですが、まず、「長期的な観点からの安全かつ効率的な運用」という基本的な考え方については、安全性と効率性の両面を考慮することが求められます。仮に、安全性のみを重視し、現金のまま保有するとすれば、名目額で積立額が減る心配はありませんが、長期的には、物価や賃金が上昇する分、実質的な価値が目減りしてしまうことは避けられないので、効率的な運用という要請に応えることにはなりません。

長期的に、実質的な価値を維持し、さらに実質的な価値を増大させていくためには、収益率の変動幅という意味での一定のリスクをとりつつ、リスクに見合った収益率が期待できる資産に投資を行っていくことが求められます。

この場合、「できる限り低いリスクで必要な収益を得る」ための最も基本的な考え方が、特性の異なる複数の資産に分散して投資を行うという「分散投資」と、長期的な観点から基本となる資産構成割合を決めて、これを維持していくという「基本ポートフォリオの策定・管理」という二つです。

国民年金法及び厚生年金保険法の関連条文を引用しました。また、長いですがGPIFのサイトから、その法律の要請を受けてどうGPIFとして応えるかという部分を引用しました。

国民年金法、厚生年金保険法共に「長期的な観点から安全かつ効率的に行うこと」を定められています。長期的な観点という大前提がついています。そして、GPIFのサイトで「安全性と効率性の両面を考慮することが求められます」と書いてあるように安全性と効率性のバランス感覚が必要です。
批判をする前に、このあたりは何度も噛みしめて読んでいただきたい。

年金運用というものは単年度の損益で一喜一憂しろという類のものではない、というのが大前提なのです。長期で運用する公的年金に対して、短期的な損得でギャーギャー言うのはやめていただきたいところです。
それこそ年金運用を不幸にします。





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