panama

「パナマ文書」

一部では大きな盛り上がりを見せており、あたかもここに名前のあった個人や企業が脱税のような税金逃れをしていたかのように糾弾する声もあります。

しかし、まず多くのケースでは合法的な節税でしょうし、通常の先進国においてはそんなに大きな問題とするような話とは思えません。(世間の声が大きくて、何らかの法改正等の動きにはなるという将来予測をしてはいます)

合法的な節税でもダメなのか。みんな節税していないの?

「政治家は富豪や大企業ばかりで、中小企業や我々庶民は…」という声もありますが、これは的外れでしょう。

タックスヘイブンの利用は大企業に限定されていません。中小企業も利用したければタックスヘイブン利用すればいいんです。
アメリカのデラウェア州はアメリカの大企業の約半数が本社を構えるとして有名なアメリカのタックスヘイブンです。ここでは零細企業であっても外国からも登記できますから利用できます。でも、日本の零細企業が利用するメリットはほとんど無いですよね。

中小企業には中小企業に適した節税方法がある

「会社名義でベンツを所有」「友人との飲み会の帰りのタクシーの領収書を貰って経費にする」
零細企業のオーナーがこのようなことをしているという話はよく聞きます。

一地域で細々と仕事をしている零細企業でも、グローバル大企業同様に海外法人を立ててタックスヘイブンを利用しようと思えばできます。ただ、数百万円の利益圧縮のために外国に法人を立てて…とやると節税額以上に費用が掛かってしまいそうですので、そのコストが割に合いません。そこでベンツを買うような話に落ち着きます。
一方、大企業の場合、ベンツの経費などでは十分な節税が行えません。そこで大企業の規模にふさわしい節税方法としてタックスヘイブンを利用します。

個人の資産運用やビジネスと同じです。資金量が少なければブックオフで仕入れて売るせどりは有効です。しかし、資金量が増えるとせどりは使えません。もっと金額の大きい商品を扱わないとうまく運用できません。

大企業も中小企業も自分の規模など状況に適した節税方法を利用しているだけの話です。


個人だって節税している

では庶民は…という話になってきますが、庶民だって節税方法はいくつかあります。また企業にはなく個人にはある優遇もあります。

株式や投資信託等の損失の繰り越し&損益通算は、この手の投資ブログの読者には有名な税金処理でしょう。今の利益と過去の損失を通算することで、今年の利益に対する税金を払わないようなことができます。

大企業が同じことをして利益が出た年に法人税を納めなかったというニュースが出た時(世界一トヨタ、5年間法人税を払っていなかった! どんなカラクリがあるのか、と怒りの声 (J-CASTニュース)、大企業叩きの声も聞こえました。しかし、これは中小企業もできます。また、個人は企業とは違いますが、各種優遇措置や控除はあります。

個人の場合、証券取引の損益通算以外にも多くの節税方法はあります。
タワーマンション節税はここ数年ホットだった相続税の節税方法です。他にはふるさと納税も話題の節税方法です。

投資関連に戻るとNISA確定拠出年金も節税の仕組みです。
大企業の節税に対して「本来なら納められていたはずの税金が納められない」と言うなら「本来、特定口座や一般口座を利用していれば納められていたはずの税金が非課税口座のせいで納められない」のです。


合法的節税は、プレーヤーに大きく文句を言うような話ではない

無数にある制度を調べ、その中で自分にとって一番有利なものを利用するという節税方法自体はそう大きく批判されるべきものではないでしょう。
個人レベルでは、ふるさと納税はかなりあくどい節税システムを作ったものだと思っているのですが、そういう制度である以上はある程度あきらめるしかありません。

スポーツの世界でもプレーヤーがルールを利用することでゲームがつまらなくなることもあります
例えば、サッカーの世界ではゴールキーパーへのバックパスがそうでした。自陣でボールを取られそうになるとゴールキーパーまでボールを戻してゴールキーパーがキャッチ。そして、また味方選手に渡して取られそうになるとゴールキーパーに戻して………このせいで90分のうちの多くの時間をゴールキーパーがボールを持っているという状況でした。
ここで「ボールをゴールキーパーに戻すチームが悪い」と言いたい気持ちも分かりますが、そうではなくそういうルールにしているのが悪いと考えるのが筋でしょう。(バックパスをゴールキーパーがキャッチすることが禁止されました)

本題に戻って……
節税についても、その節税がおかしいというのであれば、ルールメーカーに言うのが本来の筋です。


では、パナマ文書の問題点はどこにあるのか

タックスヘイブン利用の税逃れを批判していた人がやっていた

一つはこのケースです。イギリスのキャメロン首相が当てはまります。キャメロン首相はこれまでタックスヘイブンを利用した税逃れを行う企業などに対して批判的な態度を取っていました。しかし、そう言いながら自分もタックスヘイブン利用の”税逃れ”による恩恵を受けていたというのですから、批判されても仕方ありません。

利益誘導できる立場でタックスヘイブンを利用していた

もう一つはこのケースです。アイスランドのグンロイグソン首相(辞任)が該当しそうです。グンロイグソン首相は、タックスヘイブン経由で自国の銀行の債券を数億円分買っていたということです。
それを公表せず、首相としてその銀行の債務処理に携わっていたというのですから、自身の資産に対して有利なように対処しようとしていたと見られても仕方ありません。



大企業がその力によって自分に有利なようにビジネスを進めようとしているケースがあるのは分かります。競争優位な立場を利用しての下請けいじめなどはいけません。
しかし、それと共通ルールの節税スキームを使う話は別物です。安易な感情的な大企業叩きに使われるのは非常に怖い。


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