Rich Wealth Gold Moneyとなりの億万長者 ― 成功を生む7つの法則」の共同著者であるトマス・J・スタンリー氏が先日、自動車事故で亡くなったというニュースがありました。
このニュースでお金持ちの話を思い出したので、「"本当のお金持ち"はケチ」について書いてみたい。
Googleで「本当の金持ち」などと検索すると、「本当の金持ちは、豪邸に住んだり高級車を乗り回したりと贅沢するのではなく、ケチである」のような主張がたくさん見つかります。

しかし、これには違和感があります。


そもそも「"本当の"金持ち」って何だろう

そもそも「"本当の"金持ち」なる言葉の定義がよく分かりません。
    • 金持ち=お金を持っている人
であり(時々は収入の多い人を指すこともあるがここではストックが多い人とする)、それに"本当の"をつけると何になるのか。本当の金持ちがいるなら本当ではない金持ちがいるはずですが、本当ではない金持ちとは何でしょう。

「本当の金持ち」という言葉から一つイメージできるのは、ちょっとお金を持っている程度の小金持ちではなく、莫大な資産を持っている超大金持ちという意味です。もしくは、資産を大量に持っているが借金も相応にあって純資産は多くない人を「本当ではない金持ち」とするか。
しかし、後者の場合はそもそも金持ちではないとすればいいようなもので、わざわざ「本当の金持ち」とする必要もなさそうです。


超大金持ちはケチなのか?

さて本当の金持ちが何かという話もありますが、ともかく金持ちの代表ともいえる超大金持ちがケチかを見てみます。

Forbusが発表した2015年版の金持ちランキングです。 (The World's Billionaires)
    1. ビル・ゲイツ: 792億ドル
    2. カルロス・スリム: 771億ドル
    3. ウォーレン・バフェット: 727億ドル
    4. アマンシオ・オルテガ: 645億ドル
    5. ラリー・エリソン: 543億ドル
    6. チャールズ・コーク: 429億ドル
    7. デイヴィッド・コーク: 429億ドル
    8. クリスティ・ウォルトン: 417億ドル
    9. ジム・ウォルトン: 406億ドル
    10. リリアンヌ・ベタンクール: 401億ドル
    11. アリス・ウォルトン: 394億ドル
    12. S・ロブソン・ウォルトン: 391億ドル
    13. ベルナール・アルノー: 372億ドル
    14. マイケル・ブルームバーグ: 355億ドル
    15. ジェフ・ベゾス: 348億ドル
    16. マーク・ザッカーバーグ: 334億ドル
    17. 李嘉誠: 333億ドル
    18. シェルドン・アデルソン: 314億ドル
    19. ラリー・ペイジ: 297億ドル
    20. サーゲイ・ブリン: 292億ドル
なお日本人では以下の2人がトップ100に入っています。
    • 41位: 柳井正
    • 75位: 孫正義

彼らは凡人とはケタ違いな資産を持った金持ちですが、彼らは質素なのでしょうか。

1位のビル・ゲイツの自宅はXanadu 2.0という愛称もついており、単体でWikipediaにBill Gates's houseという記事ができてしまうほどのもので、建設に63百万ドルもかかった豪邸です。
Xanadu 2.0
15 Most Expensive Houses in the World / The Celeb Worthより

2位のカルロス・スリム氏は44百万ドルでニューヨーク5番街という一等地に12ベッドルーム/14バスルームという豪邸をお買い上げしています。4位のオルテガ氏も豪邸にプライベートジェットにといいモノを持っています。
以前には上位にランクインしていたIKEAの創業者のイングヴァル・カンプラード氏は質素な生活で有名でしたが、それはイメージ対策としての仮の姿で、実際はものすごく贅沢をしていたという話も暴露されています。

日本でトップ100に入った2人にしても自宅は立派なものです。柳井氏は渋谷に2600坪の豪邸を持っています。孫氏は麻布に900坪の豪邸で、シリコンバレーには1億ドルを超える金額で購入したようです。

3位のバフェット氏は質素で有名ですし、ウォルトン一家も贅沢とは遠い。しかし、質素が特別な話題になるということは、普通の大金持ちは質素じゃないということとも取れます。

これらの人たちを見ていると、世界に名だたる大富豪がケチということはないように思えます。


そもそも「"本当の"金持ち=ケチ」は結果ありきの定義?

また、「"本当の"金持ち=ケチ」が、そもそも結果ありきの定義ではないのかという疑問があります。「本当の金持ちとはケチであるべきだ。ケチであるから本当の金持なんだ。だから本当の金持はケチなんだ」のような論理展開に思えて仕方ありません。

豪邸を持っていたりと贅沢をしていると判明したら「彼らは本当の金持ちではない」と除外していけば、最後に残るのは質素な金持ちだけでしょう。が、それでは「"質素な"金持ちは質素である」という意味のない説明にしかなりません。





ミリオネアの多くは倹約家

『隣の億万長者』では100万ドル以上の資産を持つミリオネアがどんな人たちかを調べています。その結果として、ミリオネアでは贅沢をしている人よりも贅沢をしていない人の方が多かったという結果が出ています。この結果に異議を唱えるつもりはありません。
しかし、これをもって倹約家が本当で贅沢派が偽物ということではありません。

絶対数の違いは、金持ちへのなりやすさの違いでしょう。
贅沢をして資産を築くのは難しい。贅沢をして資産を築くにはそれ以上に稼ぐ必要があります。100万ドル程度の資産であれば、一般的に手が届く収入&倹約で十分に実現可能です。

1年で60万ドル稼いで50万ドル使って…を10年繰り返すと100万ドルの資産を築けますが、年収60万ドルはかなりハードルが高い。それよりも「年収15万ドル/支出5万ドル」を10年続けて100万ドルの方が簡単です。
このように100万ドルと作る難易度の違いによって、高い稼ぎで到達する人よりも支出を抑えて到達する人の方が多いということであり、どちらが本物か偽物かという話ではありません。

隣の億万長者で閾値とした100万ドルで見た時に倹約家が多いのは、100万ドルは倹約で作りやすいからです。

これがビリオネア(10億ドル以上)のように閾値を上げていくと常人離れした稼ぎが必要になります。これでは倹約によって達成することはできません。大きく事業を起こして成功するなどの条件が必要になってくるので、違う風景が見えてくるでしょう。

日本人を見た時、サラリーマンがプロスポーツ選手より多いからといって「"本当の"日本人はサラリーマン」と言わないように、金持ちにおいてもその絶対数の多さで"本当"という言葉を使うことは違和感があります。



【関連コンテンツ】