globe話としてバンガードのVTを取り上げますが、今回はアセットアロケーションの話です。

  • 質問: 「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)1本で世界分散投資OKですか?」
  • 回答:「はい」


〜〜〜〜〜〜終了〜〜〜〜〜

……では面白くありません。今から始まりです。


バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)は先進国・新興国の大型・中型・小型の株式に分散投資する非常に分散された株式投資のETFです。

VT】バンガード・トータル・ワールド・ストックETFのベンチマークは約8,000銘柄の大型、中型、小型株で構成されるFTSERグローバル・オールキャップ・インデックス。全世界の投資可能な市場時価総額の98%以上をカバーしています。VT1本に投資すれば、新興国から先進国まで世界中の株式市場への投資が出来ます!
SBI証券のサイトの紹介の褒め言葉にあるように、VT1本で世界中の株式への投資も可能といった優れものです。


しかし、それでも敢えて問いたいのは、「VT1本で世界分散投資OKですか?」
Vanguardのサイトを見ると、VTが組み入れている銘柄の国別の比率は以下の通り。
VT 構成国比率
※参考: VanguardのVTのサイト 2015年1月31日のデータ



世界各国株式の国別の株式時価総額比率も見てみます。ソースは2012年と少し古いですが、世界銀行のデータです。表としてはVTの国別構成比率と並べてみました。
VT 時価総額 構成国比率
*世界銀行のデータにはTaiwanという整理がありませんでした


アメリカが顕著ですが、構成比率は結構違います。アメリカにおいては「51.7% vs 35.6%」と16パーセントポイント以上の開きがあります。

「差(VT-時価総額)」を見ると、アメリカが16.11%も違うせいで、他の国は大体VTよりも時価総額の方が構成比率が高くなっていますが、日本/イギリス/フランスなど一部の国ではVTの方が構成比率が高くなっています。

全体的な傾向として、対時価総額で考えると、「VTは先進国の方が組み入れ比率が高く、新興国の組み入れ比率が低くなっている」と言えます。

浮動株調整が比率の違い

時価総額とVTの組み入れ比率が異なるのは、VTが連動を目指す指インデックスが浮動株調整をした時価総額インデックスだからです。
TOPIXやMSCIのインデックスもそうですが、このFTSEの指数も時価総額型インデックスですが、純粋な時価総額インデックスではありません。浮動株調整済みの時価総額インデックスとなります。

浮動株調整をした時価総額インデックスについては以前に書きましたが、端的に言うと、株主が固定されていて市場に出てこない株を除いた市場で流通する株式に限定した時価総額です。
NTTドコモのようにNTTが大きく株を持っているような会社は浮動株調整の時価総額では小さくなります。


浮動株調整は指数連動の運用をしやすくするため

何故、単純な時価総額比ではなく浮動株調整などをしているか。これは浮動株の割合に合わせると実務上の都合がいい。
時価総額比率のインデックスの場合、これに連動するインデックスファンドを運用しようとすると、時価総額が大きいのに浮動株が少ない銘柄の売買が難しくなります。時価総額が大きいからたくさん売買しなくていけないのに市場での流通量は低いので売買が難しい。
実運用の視点でからは浮動株の比率に応じたインデックスは非常に合理的です。


では、あなたのアセットアロケーションは?

先に書いたように浮動株調整のインデックスは運用者の実務としては非常に合理的です。しかし、個人投資家のアセットアロケーションが浮動株の比率と連動する必要性はありません。

世界分散投資と言いつつ、アメリカが50%超でOKですか?
時価総額比率と比較して新興国の組み入れ比率は低めでOKですか?

時価総額比率に連動することが正義ではありませんが(私も時価総額比にはしていない)、浮動株調整の比率に合わせる必要もありません。
主要な株式インデックスの多くが浮動株調整の時価総額インデックスですが、「先進国株式インデックス」「新興国株式インデックス」「全世界株式インデックス」の中身に少し目を向けて欲しいとも思います。


●関連:ETFでの新興国比率は実際の時価総額よりも少なくなる (海外投資データバンク)



【関連コンテンツ】