日経新聞のNISAで追い風吹いたバランス型投信という記事に2014年6月〜2014年11月の6カ月間に新規設定された投資信託の当初設定額ランキング上位15本がありました。
投資信託 設定当初額 日経新聞 http://www.nikkei.com
上位は「非」毎月分配型が並んだ。分配頻度が高い投信は節税メリットを享受しにくく、NISAには向かない。この点でも、制度開始が投信の売れ筋に影響を与え始めているといえる。2014年の新規設定本数は、NISAを意識した投信の設定が相次いだ2013年よりは減っているものの、2014年11月末時点で500本を超え、増加傾向は続いている。
解説にもあるように毎月分配型投資信託もありますが、上位の顔触れには「非」毎月分配型投資信託が多くなっています。NISA導入前までは通貨選択型やその時期のテーマ型の毎月分配型などが人気でしたが、景色が大きく変わっています。

長期投資では分配型よりも非分配型?

元本100万円の投資は5年間は非課税、ただし一度使った枠は再利用できないという仕組みのNISAでは利を伸ばす長期投資に妙味があるとされています。
個人的には5年が長期かと言われるとゴニョゴニョ……となるのですが、2013年末時点での投資信託の平均保有期間が2.0年(投資信託協会)ということを考えると、世間一般では5年は長期と言ってもいいのでしょう、

話が逸れかけたので戻します。
従来と比較すれば長期投資へ誘導しているとも言えるNISAの導入に伴って「非」毎月分配型投資信託が売れているのだとすれば、長期投資には分配金は不要という考え方があると言えるのかもしれません。


やっぱり営業力が大事?

しかし、先日の資金取り崩しニーズに応えている毎月払出しファンドの現状と分配金ニーズでも取り上げた野村アセットマネジメント第6回 投資信託に対する意識調査にもありますが、30代/40代と言った資産形成層でも毎月分配型は売れています。また、楽天証券の投資信託の販売金額ランキングで20代を確認してみましたが、1位から5位までは毎月分配型投資信託でした。
野村アセットマネジメント 投資信託に対する意識調査 毎月分配型投資信託
野村アセットマネジメント第6回 投資信託に対する意識調査
楽天証券 投資信託販売代金 20代 ランキング


日経で紹介されたランキングは当初設定額です。当初設定額は販売会社の影響力を強く受けることは知られており、過去にも設定来で1000億円以上を集めるような投資信託は何本かありましたが、大体は最大の証券会社である野村證券が本気で営業をかけた商品だったりします。
つまり、今回の当初設定額のランキングで「非」毎月分配型投資信託が売れたのも、顧客が自らの意思で「NISAで長期投資なら分配金が少ない方がいい」と選んだのではなく、販売サイドが「NISAなら分配が少ない投資信託だろう」として営業をかけた結果というだけのことかもしれません。


信託報酬は……高い……

トップ15の全ファンドで信託報酬は年率1%を超えており、上位5ファンドに至っては年率1.6%超です。ハイリスクな株式ですら年率の期待リターンが数%という世界でこの手数料は痛い。せっかくの期待リターンが大きく削られて、ボラティリティに賭けることになってしまいます。
MOTTAINAI


投資家自身の意識であれ、販売側の意識であれ、長期の資産形成には「非」毎月分配型投資信託がいいという感覚が出てきてくれたのであれば嬉しいことです。
ただし、依然としてそれは小さい火のようです。その先にもコストや投資先といろいろあります。「金融リテラシー」の時代から「金融ケイパビリティ」の時代へでも紹介したように、イギリスのFSAも、投資を含んだこの手の金融ケイパビリティ/金融リテラシーの啓蒙活動は長い期間が必要だろうといっていますし、長期戦です。





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