rougo

先の日本の年金制度の問題点の1つは、明確に位置づけが説明されていないことの続きです。

日本の年金制度の問題点として以下の2つを挙げましたが、前回は上しか説明していませんでしたので、今回は下について書きます。
  • 日本における公的年金とはどういう位置づけのものなのか? という説明がない
  • 年金制度を維持していく仕組みが無い

今の日本の公的年金は、年金制度を維持していく仕組みがありません。

ものすごくざっくり書くと年金のINとOUTは下記が条件として設定されています。(OUTは法律では規定されていませんが、財政検証などでことある毎に代替率50%が目標に設定されています)


問題となるのはINとOUTの両方に制限をかけていることです。
INでは保険料額も国庫負担の割合も固定です。ですから現行の年金制度では、状況に応じて柔軟にINを変えることはできません。
OUTも所得代替率50%というボーダーを設定しているので、こちらも柔軟に変更することはできません。

これはダメダメ設計です。保険料・国庫負担・給付金と全ての変数に制約がついていては、制度に柔軟性がありません。


特定の変数に制約をつけるのはありです。
例えば「所得代替率は50%を担保する」とOUT側に制約をつけてもいいでしょう。しかし、その場合には給付が膨らんだ場合、それに対応するINを見合うだけ増やせるような制度でないといけません。
逆に「保険料は上げない」のように保険料を固定してもいいでしょう。しかし、その場合には「入ってきたお金の分しか給付できないから所得代替率なんて保証できない」のような仕組みにしないといけません。




現行のフレームワークの中で年金を維持できないだろうことは、多くの人は思っていることです。(財政検証で超甘々な試算を出していますが、信じる人はほとんどいない)
年金というのは長期でコミットされなくてはいけない制度です。民間の個人年金保険でも保険料と支給開始年齢/支給額の関係は明確です。

しかし、今の年金制度は長期的に制度を維持していくような仕組みを内包しておらず、「無理な時には、それから考える」というふざけたスタンスです。
次の財政検証までに所得代替率が50%を下回ると見込まれる場合には、給付水準調整の終了その他の措置を講ずるとともに、給付及び負担の在り方について検討を行い


民間の個人年金保険で「とりあえずは老後に1000万円払う予定の制度で行きます。でも5年ごとに見直して、ダメそうだったらその時にどうするか検討するね。もしかしたら追加で保険料払ってもらうかもしれないし、給付額減額するかも。または支給開始年齢を引き上げるかも。まあ、その時が来たらその時に考えるよ。アハハッ」なんてやられたら「ふざけるな」と言われるでしょう。

「とりあえず現状維持。困った時にはその時考える」なんてのは長期的にコミットするような制度でやるべき話ではありません。



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