物事を比較するときに、本来とは比較されるべきとは違った比較方法を用いることで、自分に有利な(相手を貶める)結論を出そうとする話があったので、ロジックに気をつけようという話でちょっとご紹介します。


●ケース1:貯金が多いのは幸せ?不幸せ?
老後のお金が心配だといってお金のために我慢して働き続ける人って想像力が欠如してるって。一億円の貯金はあるけど日々の大半、誰とも口を利かない老後と、貯金は200万円だけど、毎日バイトで誰かと話をする機会のある老後とどっちが楽しいと?
※引用元:https://twitter.com/InsideCHIKIRIN/status/378789639043448832

上はTwitterであったツイートですが、これには酷い/悪質な論理的欠陥があります。

最初の文書で、お金のため・・・という話でお金に関することのような前フリをしておき、その後の文でも「貯金が1億円の人」と「貯金200万円の人」を比較しています。で、どちらがいいかという話ですが、ここにずるいロジックがある。

比較軸を「一億円の貯金はあるけど日々の大半、誰とも口を利かない」と「貯金は200万円だけど、毎日バイトで誰かと話をする機会のある」のように対人関係に置いています。
「貯金は一億円あるけど脳に障害を負って一切の意識も無く誰も見舞いに来ずに朽ち果てていく老後」と「貯金は200万円しかないけど、お金が足りなくなったらいくらでもお金をくれる金持ちサポーターがいて、みんなのアイドルな老後」みたいなもので「貯金関係ないじゃん!」って話です。

普通に考えると、貯金200万円で毎日バイトせざるを得ないような老人がいればそちらの方が不幸せなケースが多いんじゃないかと思ったりもします。貯金1億円もあっても当然バイトという選択肢もありますし、友人知人と遊びに行くこともできます。

こういう違う属性を勝手に足して相手を落とし込む論法は良く見られますが、騙されてはいかんですね。


●ケース2:勝手な階層化&レッテル張りで相手を貶める
お金との付き合い方というのは人それぞれです。とにかく、節約をして無駄なお金を使わないようにする人、メリハリをつけて自分の収入の範囲内で有効にお金を使う人。さらに、自分の持っているお金を超えて、将来のお金を使う人。
節約家とは、とにかく出費を少なくして手元にお金を残そうとする人です。
投資家というのは、自分の持っているお金の範囲で投資をして、さらにお金を殖やそうとする人です
投資家よりさらにお金を積極的に活用しているのが、事業家です。事業家は自分が持っているお金以上のお金を使う人です。
少なくとも節約家に未来はありません。自分の城だけを必死に守っている閉じた世界にいても、未来を変えることはできないからです。
投資家や事業家になるには、知識と経験が必要ですが、それほど難しいものではありません。自分の未来も、世の中を変えていくのもそんな投資家と事業家が担っているのです。
※引用元:http://www.shinoby.net/2013/09/3-47.html

節約家はダメで投資家や事業家は良いとしていますが、これもズルい論理展開の典型です。

ここは2つの罠があります。

まず1つは、本来は重なり合う3つを別のものとして分けている点です。

上の定義に従えば「節約家兼投資家」という人も多いはずですが、この話ではそれを無視しています。
節約家は「節約をして無駄なお金を使わないようにする人」で、投資家は「メリハリをつけて自分の収入の範囲内で有効にお金を使う人」なら2つを結合した1人の人物になります。
「節約をして無駄なお金を使わないようにして、メリハリをつけて自分の収入の範囲内で有効にお金を使う人」
うん、結合しても違和感ありません。

また、2つ目はレッテル貼りです。
節約家は「無駄なお金を使わない」というはずが「収入を伸ばすのではなく支出を減らすことだけに集中している人」と収入を増やすことを気にしていないという属性を勝手に足しています。
世間一般で「節約家=支出を減らすことだけに集中」なんてコンセンサスはないでしょう。節約家でも仕事等の収入を増やそうとしている人は多いはずですが、そういう要素をはずして「節約家=支出を減らすことだけ」と勝手な定義にしています。

また、事業家についても同じです。
「投資家から株式として資金を出資してもらい事業を立ち上げるのも事業家ですし、銀行からローンを借りて不動産投資を始める人も事業家」といわゆる事業を行う人を連想させる事例を上げていますが、「レバレッジという言葉がありますが、自己資金に借入したお金を合わせて投資をし、それによって成果を目指していく」という定義にしたがえばFXや株式の信用取引のように自己資本以上の資本で投資をする人だって多数いるはずです。

その時々で都合のいい解釈を与えるというのも典型的なズルい論理展開です。

どうも「事業家>投資家>>>>>>>>>>>>>>>節約家」とした思惑を感じてしまいます。


※参考:過去に書いた議論/比較に関するエントリー
  ・論理的に考える(不適切な比較対象)


≪2013/9/25 1:30≫
引用元情報追加


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