[2013/6/1 17:13]ドル部分のグラフの表記に誤りがあったので修正しました


先日は、以下のような日経新聞のコラムのロジックはダメだと突っ込みました。
 ・参考:外貨預金で含み損は待てばいいとか…ヤバイそれはヤバイって日経新聞

日経の記事では以下のような主張でした。

●外貨預金を持っている時、購入時より円安になれば、支払を外貨預金で払えば損失を抑制できる
●外貨預金を持っている時、購入時より円高になれば、支払を円預金で払えば良く、含み損は機会を待てばいい

これはダメなアドバイスですが、何故ダメなのか具体的な数字を使って書いてみます。

dollar_yen

AさんはT1(1ドル=100円)の時点で10万円の円預金と1000ドルの外貨預金を保有しています。(20万円持っていて10万円を外貨預金にしたイメージ)
一方、BさんはT2(1ドル=95円)の時点で10万円の円預金と1000ドルの外貨預金を保有しています。(19.5万円持っていて9.5万円を外貨預金にしたイメージ)

その後、Aさん/Bさん共に海外旅行に行った時にT4のように1ドル=97円になったとします。

日経新聞の「円安で外貨預金がプラス⇒外貨預金から出せば良い」「外貨預金がマイナス⇒円預金から出せば良い」理論に従うと、AさんとBさんの取るべき行動は違います。

●Aさんは1ドル=100円時代に外貨預金を始めているので外貨預金はマイナス ⇒円預金から払うべき
●Bさんは1ドル=95円時代に外貨預金を始めているので外貨預金はプラス ⇒外貨預金から払うべき

これでいいのでしょうか。

T4時点ではAさんとBさんの保有している資産は「10万円と1000ドル(=9万7千円)」のように同じです。
全く同じ資産を持っており同じ行動をするにもかかわらず、「片方は外貨預金を使うべき」で「もう一方は円預金を使うべき」という主張は明らかにおかしい。
このアドバイスには大いに矛盾があります。


さらに言えば、行動経済学では人間の心理作用として「利益は早く確定しがち、損益は引き延ばしがち」という歪んだ作用があります。それを是正するのではなく、助長するかのようなアドバイスは非常によくない。


【関連コンテンツ】