毎月分配型のファンドの信託報酬は高い傾向がある。なぜなら分配金の支払いにはコストがかかるので、それが信託報酬引き上げ要因になっているから」という話があります。

実際の投資信託のデータを使って比較してみます。

同じようなことはKapokさんもやっております。参考にしてください。→Kapokさんの比較

 
Kapokさんもやっているのに、何故自らやったのかというと…アセットの違いという要因を考慮して少し違う比較をしてみたかったからです。

リターンやリスクでもそうですが、平均的な信託報酬の水準はアセットによって違います。
一般的に国内より先進国、先進国より新興国の方が信託報酬が高くなります。また、普通株式/国債/高格付債よりもハイ・イールド債や複雑な証券の方が信託報酬が高くなります。

「毎月分配のエマージング株式ファンド10本」と「1年決算の国内債券ファンド10本」を比べて後者の方が信託報酬が低くても「1年決算の方が信託報酬は安い」という結論には結びつけられません。この信託報酬の差はエマージング株式と国内債券というアセットの違いと考えられます。


今回の比較ではデータをモーニングスターから貰うこともあり、モーニングスターで採用しているアセットカテゴリーごとで分けて比較してみることにします。

○ソースデータは2012年11月8日時点のモーニングスターに登録されているファンド
○ファンドタイプのカテゴリーは以下の4つを選択
  ・国内株式型
  ・国内債券型
  ・国際株式型
  ・国際債券型
○決算頻度は「毎月」と「1年ごと」
○DC区分のファンド、SMA区分のファンド、ETFを除外
○分析は35のサブカテゴリー(国内株式大型グロース等)で実施
○コストは「信託報酬等(税込)」の数字を利用 ←追記


まずは4つの大カテゴリで分けた場合、毎月分配ファンドと1年決算のアセット分布に大きな違いがあります。国際債券がほとんどを占める毎月分配と国内株式(を含め株式)が多い1年決算。だいぶ、ファンド構成が違います。
これはアセット毎に分けて分析する価値があるというものです。
bunpai_asset



まずは大カテゴリで信託報酬の平均/中央値を計算した結果が下記。
bunpai_Houshu_asset

平均値/中央値共に、国際株式クラスは毎月分配の方が信託報酬が低く、他3つは1年決算の方が安くなっています。(国際株式については後でまた触れます)。



大カテゴリで比較しましたが、大カテゴリでもまだ偏りがあります(例えば国際債券カテゴリーでは毎月分配型は「ハイイールド債」が多く、1年決算は「グローバル・除く日本」のように)。このようなアセットの違いが信託報酬に影響を与えている可能性も十分にありますので、次にサブカテゴリ単位で分析します。
世間一般でリスク、リターン、信託報酬などを比較する時には大体この単位で評価するのが一般的でしょう。

しかし、サブカテゴリーまで細分化すると、「毎月決算の国内株式中型グロース = 0本」のようにファンドが存在しないカテゴリーもあります(サブカテゴリーにどちらかのファンドが存在しなかったのが11カテゴリー)。ファンドがあっても数本のように統計データとして扱うには非常に心もとない本数しかないカテゴリーも多数ありました。
そこで、35カテゴリーのうち「毎月分配」「1年決算」共に10本以上あるカテゴリーのみを抜き出して信託報酬の平均/中央値を比較したのが以下の表です。
bunpai_Houshu_category


詳しくは表で比較してほしいのですが、敢えて下記にコメントを付けます。

●国内株式
「国内株式型大型ブレンド」しか残らなかったのですが、面白い結果です。
平均は1年決算の方が0.21%安いが中央値では毎月分配の方が0.32%安いという大きな逆転現象が起きています。
これは毎月分配型には2.31%というべらぼうに高い2ファンドがあって平均値を引き上げる一方で、1.15%〜1.16%と比較的低い水準の日経225通貨選択型が2シリーズで9本(4本+5本)入っており、この9本の後ろの2つが中央値に引っかかって中央値は低く抑えられています(1.16%の次は1.4%)。

●国内債券
これは両者ともにファンドの本数が少なく、そのほとんどが中長期債だったため、中長期債カテゴリーのみです。毎月分配に至っては17ファンド中17ファンド全てが中長期債カテゴリーです。
ここは1年決算の方が安くなっています。元々の信託報酬が低い分、大きな絶対値の差はありませんが、0.50%前後という水準で0.17%/0.06%というのはそれなりの差です。

●国際株式
国際株式型の各サブカテゴリーは4カテゴリーが残りました。ここは評価が難しい。
共に50を超えるというサンプル数で比較できた「国際株式型グローバル・含む日本」などはほぼ誤差の範囲ともいえる互角の水準です。
その一方で、「国際株式型グローバル・除く日本」は1年決算が大きく差をつけており、残りの2つではやや毎月分配の方が安いか…というところです。

●国際債券
ここは3カテゴリー残りましたが、全てで1年決算が圧倒です。毎月決算ファンドの約80%を占める国際債券ですが、信託報酬は高めな傾向のようです。



【総括】
基本4資産における「毎月分配vs1年決算」という比較をしてみました。これを見る限りは毎月分配の方が安い場合がありますが、やや1年決算の方が信託報酬が安く設定されている傾向があると言えそうです。(もちろん、運用スタイルの違いなどの要因もあるので、これで決定的なデータということは言えませんが、データ上は)

さらに深掘りするならば、2か月/3か月毎はサンプル数が少なすぎて比較に使いにくい(特に2か月はほとんどない)ですが半年決算を加えても面白い。基本4資産で500ファンド超と何とか使えそうな本数はありそうです。



【おまけ】 ←これが一番の大作
10本以下だったために比較対象から漏れたカテゴリーも含めた35カテゴリーの結果を以下に貼っておきます。これを見ると面白い分布の違いが見えてきます。
Bunpai_Houshu_fulllist

例えば、BRICsとしてもてはやされた4か国の株式に投資するファンドを見ると圧倒的に1年決算で設定されています。
これらBRICsに投資するファンドの信託報酬は1年決算の国際株式型ファンドの信託報酬平均より高くなっており、これが国際株式型で毎月分配型の方が安くなる一因ともなっています。
また、国際債券の分布も面白い。「グローバル・含む日本」となると毎月分配は92本に対して、1年決算は2本しかありません。「グローバル・除く日本」になると毎月分配は88本、1年決算が31本となっているにもかかわらずです。


【関連コンテンツ】