岩波書店の2013年度の社員採用が話題になっています。
岩波書店、採用で「著者か社員の紹介必要」(YOMIURI ONLINE)

「2013年度の社員採用は一般公募ではなく、岩波書店著者もしくは岩波書店社員の紹介を応募条件として行います。」
 (※岩波書店の採用情報より)

これに対して賛否両論ですが、私はコネ採用自体には賛成したいと思います。

「公平、公正、開かれた」採用活動は立派なお題目ですが、限界に来ています。

今やインターネットでの採用活動が一般化しており、「公平、公正、開かれた」採用活動では数人の応募のところに何百倍もの応募があります。お題目に従うなら、「応募者全員のエントリーシートの内容を読み公正な審査をして、各自に対して複数回の面接を実施して採用」ということでしょう。

インターネットの普及によって、学生は説明会にも簡単に申し込めるようになりました。エントリーシートも基本部分はコピペで大量に提出できます。1人の学生が何十~何百もの企業にエントリーする事態です。
そのため、岩波書店のように応募人数が募集人数の数十~数百倍と昔より膨れ上がりやすくなっています。そのくせ、母集団は昔と同じように、その年代の大学卒業生なので優秀さは変わりません。
これを昔と同じような方法で審査していたら、コストだけが膨大に膨れ上がっていきます。

仮に3人の募集のところに1500人の応募があれば倍率は500倍です。エントリーシートを1枚3分で読むとして75時間(4500分)です。ここで判定時間まで入れると100時間ほどでしょうか。
そして、半分の750人を面接に進めて15分の面接を行うと187.5時間(11250分)。交代時間などを考えると200時間は超えるでしょう。さらに2次面接、3次面接・・・とあります。1つの面接を複数人で実施すれば、時間×人数分の労働力を使うことになります。また、面接のための事前準備期間やその他の準備も必要です。

これだけの採用コストを投じて、昔と変わらぬ母集団からどれほどの人材を取れるのでしょうか?実施した審査は以下のような薄っぺらい内容です。
 ・エントリーシート
 ・15分ほどの面接×数回

この程度の審査で選ばれた人材が優秀でしょうか?


それよりも、信頼できる人物からのお墨付きの方が信頼できるでしょう。

以下はとある事例です。
Aさんが海外の大学を卒業して日本に帰国することになりました。すると、企業Xのアメリカにいる人が、「あのAが日本に帰国するぞ。彼は優秀だから何が何でも採用するべきだ」と日本法人に推薦してきました。それを受けて企業Xの日本法人ではAさんにコンタクトを取って採用しました。
Aさんの研究や論文などを知っていて彼の優秀さを長く見ていた人からの評価の方が、ペラペラのエントリーシートや数回の面接などより信頼できます。
「公平、公正、開かれた」採用活動では、そのような紹介は一切無視して、他の人同様にエントリーシートを書かせて同じように面接して、そのやり取りの中の内容で公平に判定しろということでしょう。しかし、このような採用はロクでもない。


自身の採用ネットワークの中だけで優秀な人材を確保できる場合は、採用枠を一般に開かなくてもよいでしょう。


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