Nikkei.comの「月間日経マネー 特選コラム」に内藤忍氏の「個人投資家の本当のニーズとは何か」というコラムが掲載されていました。

内藤氏は、【個人投資家は高いリターンの前に「納得感」を求めているのではないか。これが私の仮説です。】と言われています。図では、投資家の本当に求めるものとして、【低コスト < 納得感】とも書かれています。

分からなくありませんが、金融機関側の人がこれを言い出すと危険なサインです。


「個人投資家のニーズが納得感」と設定すれば、金融機関が考えることは納得感を与えることです。そして金融機関が儲かる商品で如何に納得感を与えるかが最大の目標になります。
「金融機関は現金を得て、個人投資家は納得感を得る」というWin-Winシチュエーションです。

例えば、手数料を一杯乗せた個人年金保険などは素晴らしい金融商品かもしれません。
投資家が元本が確保されていることに納得してくれていれば、個人投資家も満足で金融機関も満足です。金融機関がやるべきことは下手に手数料が高いことや他に有利な商品があることを知らせないことです。むしろ、「素晴らしい営業マンである私の言うことだけを信じていれば救われます」と語って信じ込ませることが推奨されます。個人投資家は「バカで知らなければ幸せでいられる」のです。

内藤氏も書かれているように、投資家と金融機関の利害は対立します。
そんな彼らによる丁寧なコンサルティングサービスが個人投資家にとって良いものでしょうか?
投資のとの字もわからないところに、経験もあり、話術も巧みなセールスマンが現れて懇切丁寧に投資の考え方を教えてくれ、具体的な商品まで薦めてくれれば涙して喜ぶかもしれません。

しかし、求めるものを与える行為は正しいことでしょうか?
アルコール中毒者が酒を求めている時に酒をあげることとが正しいことか。それとも酒を与えずに更正施設に入れることが正しいことか。

私は基本的には、間違ったものに納得感を持ってしまっている人には、正しい知識を与えることが望ましいと考えています。たとえ納得感や喜びを崩すことになってもです。将来的にはそれ以上のメリットが待っています。それこそが個人投資家に対してやるべきことだと思っています。
不当に高いコストによって低いリターンに甘んじている投資家がいれば、それを教えてあげましょう。その事実を知った時には、数年間の営業担当者への信頼が崩れ去り、現状の納得感を崩すことにもなります。しかし、それがその人のためだと思うのです。

低コストや高い利益で納得感を得られないのであれば、低コストや高い利益で納得感を得られるようにすればいいのです。
納得感を満たす方向に進むのではなく、正しい結果で納得感を持つように投資教育をするべきではないでしょうか。


今までのマネックス時代の話もありますので、内藤忍氏が今どのように考えられているかは分かりません。
しかし、一般的な話として、金融機関側の人が顧客のニーズを納得感と設定することには危険を感じます。


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