「10年更新」は誰にとって合理的なのか?』(生保のトリセツ)

上記は、生命保険を10年更新の定期保険で補償額を引き下げていく方法と収入保障保険を比較している大変興味深い記事なのですが、ありがちな重大なミスを犯しているために残念な結果になっています。

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詳しくは元記事を見て欲しいのですが、図のように「収入保障保険で毎月15万円ずつ30年にわたってもらえる保険金の合計額(5400万円)」と「定期保険で一括で貰える保険金(3800万円)」を比較しています。
そして、前者の方が多いという比較で「ほとんどのケースで収入保険が有利」と結論付けています。
しかし、これは大きな誤りです。

お金の価値を比較する時に欠かせない割引現在価値が欠落しています。
生保のトリセツの考え方は、現在の1万円も30年後の1万円も同じ価値という考え方です。これは非現実的です。
今の1万円を30年間運用すれば、30年後には1万円より大きな価値になっている可能性が高い。超低金利の今でさえ30年国債の金利は2%あります。

収入保障と定期保険の保険金を比較する場合は現在価値で比較する必要があるのです。(そうでない比較は無意味。もしくは、あえて割引現在価値を使わずに収入保障を有利と言うならば、騙そうとしていると怪しんだ方がよい)
上のエントリーで収入保障代表に使われたオリックスのKEEPを見ると30歳時点で一括で受け取ると4198万、40歳だと3046万とのことです。

つまり、生保のトリセツの記事中で取り上げられた収入保障保険の保険金はずいぶんと過大評価されています。スタートの30歳時点で言えば、5400万円ではなく4198万円です。


割引現在価値の考え方を知らないと、見事に金融機関のカモになってしまいます。
保険業界での長年の勤務経験があって個別相談に乗っているような方でも見落とされているものですが、割引現在価値は重要です。


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