(「分配可能原資」はきちんと定められた用語ですが、これを投資家に対する毎月分配型ファンドの説明に使う場合はまず騙す意図がある詐欺師の言葉と思って間違いありません)

「毎月分配型ファンドの分配金が多いことは必ずしも利益が高いわけではない。元本の取り崩しの場合がある」というような説明がよくされるようになりました。これは毎月分配型ファンドを売りたい人にとっては不都合な説明です。
そのためか分かりませんが、「毎月分配型ファンドの分配金が多いことは必ずしも利益が高いわけではない。元本の取り崩しの場合がある」を受け入れつつ不思議な説明を付け加えて、結局は毎月分配型ファンドを買わせようとする輩も出てきています。


代表的なものが「分配可能原資」という言葉を使った説明です。
「分配可能原資」の説明は少し難しいのですが、簡単に言うと「会計上、過去に出た利益で分配せずに残っているお金」になります。これが問題です。
「過去に出た利益が残っている」と聞けば儲かっていると思うのが一般的でしょう。しかし、「分配可能原資」はそうではありません。
手持ちの債券を売って損をしても「分配可能原資」は減らないのです。儲けた分がひたすら積み重なります。だから「分配可能原資」はよっぽど分配金で吐き出し続けない限りは減りません。

そのため、基準価額3000円なのに「分配可能原資」4000円というようなファンドも登場します。どう考えても総資産が3000円×口数しかないのに、4000円×口数を分配金で出すことは不可能です。
基準価額3000円で分配可能原資4000円のように「分配可能原資」はただの会計上の数字に過ぎません。そんな数字を使って「まだ分配可能原資がX円あるからYヶ月は分配できる」なんて言うのは無意味です。


また、「分配金のうちどれだけがインカムゲイン(債券クーポン)から得られているか」を分配金の健全度としている説明も詐欺の類です。
 ●A:高格付けの年利1%の社債
 ●B:低格付けの年利10%の社債
上2つの債券があった場合、Bは債券価格が下がります。Bはキャピタルロスをインカムゲインに変えている債券になり、AとBの期待利回りにそれほど大きな違いはありません。
しかし、「分配金のうちどれだけがインカムゲイン(債券クーポン)から得られているか」という基準で見ると、Bはインカムゲインが多いので圧倒的に健全と判定されます。実はキャピタルロスが出てトータルリターンではAと変わらないにもかかわらずです。
このようにインカムゲインだけで考える分配金健全度は極めて怪しいものです。
むしろ、同じ額の分配金を出していても、デフォルトリスクやインフレによる実質価値毀損のリスクが高い危険な債券ほど分配金健全度が高くなる、という逆指標ですらあります。


ダメな分配型ファンドを否定することで、中立的な立場でアドバイスをしているかのように思わせながら「いい分配金ファンドを選びましょう」なんて言って買わせたい分配型ファンドに引き付けようとする輩には気をつけなくてはいけません。
一番怖いのは味方のフリをして近づいてくる輩です。


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