福島原発の事故で、いろいろ原発に対する情報も報じられています。そして、私を含めていろいろな人がいろいろな原発に対する意見を言っており、福島原発の事故以来、原発へ否定的な意見が勢いを増しています。

しかし、この議論の中で、原発の技術と使い方が混同されているケースが散見されます。「原発という技術は、世間で言われているほど危ない技術ではない」と思うのです。

特に今回の福島原発の問題は、原発の技術的問題も原因の一端ではありますが、それよりも原発というモノの不適切な扱い方が原因であったとも思っています。

捕まえた野生のライオンを秋葉原に放てば、死傷者が多数出るかもしれません。しかし、ライオンを動物園の檻の中で適切に管理すればそのようなことはほとんど起こりません。
時には動物園から動物が脱走して市民を殺傷する事件もありますが、一般的なライオンや動物が危険とはされずに、管理体制の問題とされることがほとんどでしょう。どこぞの国の動物園から動物が脱走して人を殺傷してしまう事件が起きたから「脱動物園」を掲げるデモが起きたという話も聞きません、

原発もロジックは同じです。まず、今回の福島原発の問題の原因はどこにあったかがしっかりと検証され、原発(ライオン)という危険なモノをどう扱っていた結果、問題が発生したのかが検証されなくてはいけません。

原発が福島県双葉郡大熊町大字夫沢字北原22という場所で管理されていたのは適切なのか?ライオンが動物園で管理されていたのは適切なのか?
原発を管理する設備は適切な設備であったのか?ライオンを管理する檻は適切な檻だったのか?
何か原発に問題があったときの対応策は十分であったのか?何かライオンを管理する檻に問題が起きた時の対応策は十分であったのか?


今回の福島原発の問題は、いろいろなところでも語られていますが、これほどの大規模な津波を想定しておらず、その対策をしていなかったことが最重要ポイントです。原発を管理するシステムの電源が失われなければ、一定期間原発が止まって検査や整備の後に再開するだけで終わったはずです。原子力発電所の根幹を成す原子力発電という技術そのものは今回の地震や津波に対しては問題なかったということになります。周辺の管理技術がそこについてこれなかったのです。
こう考えると、"暫定的に"原子力発電という技術は問題がないという判断ができます。
何故、暫定的かというと、管理する技術が存在しないのであれば結局は制御不能なので原発は危険ということになります。(ライオンを入れる檻を用意できないのであれば、ライオンは危険)

そこで、次のステップとして、原子力発電周辺の管理技術について考える必要があります。
東日本大震災のような揺れ+津波に対する対策方法はいくつもあります。電力喪失に対応するには、言われているようにより高いところに電源を設けるなど、複数系統の対策があれば問題になりませんでした。
柏崎刈羽原発では断層の上にあったことが問題だということも分かりました。今の技術であれば、断層調査も昔より精密にできるのですからそのような危険な場所に建築することを避けることもできます。

このように考えていくと、原子力発電という技術そのものは適切な管理技術と組み合わせれば安全性が高い技術のように思えてしまいます。十分な体制で管理されていれば大きな問題が発生する可能性はきわめて低いと結論付けざるを得ません。

日本における原子力発電推進の方向性に問題があったという点はその通りでしょう。
過去に大津波があった海沿いに建設しつつ、津波対策は貧弱で非常用電源が一系統しかないような原発を推進した点については責められる点がありそうです。しかし、福島原発で今回の事故が起こったからといって、地震や大規模ハリケーンがほとんど起きないような地域で各対策が取られている原子力発電所まで含めた一般的な原発=危険というイメージで語られることは筋が違うでしょう。

技術やモノとその管理のセットで安全性です。モノが危険でも適切に管理されているのであれば安全性は高くなります。厳重な警備の上で巨大金庫の中に管理されたマシンガンと庭先に無造作に置いてあるチェーンソーでは後者の方が危険です。原子力発電所の事故イコール即原子力発電の問題というのは早計です。技術×管理=安全性です。

(そのような管理技術の問題も考えた上で想定されるリスクを許容できない、という結論に達したのであれば極めて合理的だとは思います)


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