リスク管理

今や一般的になっている言葉です。しかし、リスク管理という言葉は案外正確に把握されていません。

リスクを「ありとあらゆる将来の不確定要素」と拡大解釈する人もいます。ありがちな勘違いの一つです。
リスク管理では、リスクの「把握・特定」と「対応」がセットです。つまり、把握・測定可能なものがリスク管理の対象であり、事前に想定できないものまでリスク管理の対象に含める必要はありません。

また、リスク管理ではありがちな誤った解釈は、「リスクに対応しなくてはいけない=リスクの影響を回避しなくてはいけない」となることです。こうなると思考が停止してしまいます。
しかし、リスクは完全に回避することはできませんし、全てを回避する必要はありません。リスクが実現しても影響が軽微なものであれば、あえて対策を取らずにその影響を受け入れるという方法もあります。
リスクに対する対応は一般的には以下の4つのカテゴリになります。
 (1)Avoidance(回避)
 (2)Reduction(低減)
 (3)Sharing (移転)
 (4)Retention(受容)

投資におけるリスク管理も大きく分けるとこの4つにカテゴライズされます。

(1)Avoidance(回避)
「元本割れしたくないから、1千万円以下の定期預金」「為替変動が怖いから国内債券」のような場合は回避に該当します。これは完全にそのリスクを排除しています。一番強力なリスク対応です。(厳密には銀行預金の元本保証も国の制度であって完全な100%ではありませんが、ここではその手の議論は割愛します)

(2)Reduction(低減)
「銘柄分散投資」「残存期間が長期の債券をラダー型で購入」などが該当しそうです。また、「リスク資産への投資金額を減らすことで、大損を避ける」も該当するでしょう。これは、リスクがあることは認めてリスクの影響は受けても影響度を下げようとする対応です。株価変動の影響は受けても多数の銘柄に分散することでいきなり倒産で紙切れのような事態を避けます。

(3)Sharing (移転)
保有ポジションに加えてコールやプットオプションを持つことで、ある水準に達した時にオプションで損失分を回避する方法などが該当するでしょう。その投資家本人にとっては損失を回避したことになりますが、Avoidance(回避)とは異なります。保有ポジションが損失方向に動くリスクを回避したのではなく、そのリスクが生じた際の影響をオプションの売り手に移転していることになります。

(4)Retention(受容)
言葉の通り甘んじて受け入れることです。株式投資をすると株が無価値になる可能性があります。それを知っての上で新興企業の有望企業に投資するのは受容です。分散投資においてもマーケットリスクは排除できないので、それを受け入れることも受容になるでしょう。


このようにリスク管理といった場合には上のような4カテゴリの対応方法があります。
リスク管理なんて言うと、いろいろ分析して難しいモノのようにも聞こえますが、知っての上での「全部受容」も立派なリスク管理です。

銀行や証券会社の営業マンの薦めにのって投資して損してから他の人にどうしたらいいのかを相談するのではなく、投資をする前に「自分が投資しようとしているものにはどのようなリスクがあるのか」を考え、そのリスクをどう管理するかを考えてから投資して欲しいものです。


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