最近の円高進行を受け、政府や日銀に対して何らかの対策を取れという意見も多くなっています。

この意見はどうなんでしょう?

確かに急激な円高は日本の輸出企業にとっては大きなダメージで、多くの悪影響があることには異論はありません。
しかし、悪影響があるからといって今の日本の政府や中央銀行がここから何らか大きな対策を取るべきかには疑問を感じています。


まず、日本の中央銀行たる日銀に今の円高に対応する策はあるのでしょうか?

金利引き下げ余地はほとんどありません。欧米各国のように危機前に数%もあれば金利を大きく引き下げられたでしょうが、元から0%台の日本では金利引き下げはほとんど使えません。
国債買い取りも毎月1兆8000億円=年20兆円強という規模で市場から買い取っています。2003-2004年の60兆円以上という保有残高には届いていませんが、2010年7月末の国債保有残高は約55兆円にまで増えています。
これらの政策を見ていくと、(2006、2007年あたりには多少の引き締め政策に傾倒しましたが)今までの日銀は世界的に見ても、すでに「低金利+量的緩和」政策を実施しています。
なお、国債買取に関してアメリカにふれておくと、2009年にFRBが実施した米国債買取が3000億ドル(現レートで26兆円程度)規模で、最近再開した国債買取でも市場の予想は年間で2000億〜3000億ドル規模とのことです。FRBの場合は事実上の政府保証といわれたMBSなどもあるので国債の金額だけで簡単には比較できませんが日銀に近い数字です。

欧米のように通貨安政策を取れと言いながら、為替市場への直接介入を要求する意見は話になりません。欧米諸国は為替市場へ直接介入をしているのか?




金利は最低水準、量的緩和もしている。国債はFRBと同じ規模で買い取り。これ以上何ができるでしょうか。

国債買取額を更に増やすのでしょうか?もちろんやろうと思えばできるはずですが、それで本当にいいのでしょうか。
中央銀行が国債を買い取りさえすれば問題が解決して万事OKなら世界各国の中央銀行が際限なく国債を買い取っているはずです。しかし、FRBもバランスシートを意識して大胆な買取策は打ち出せません。ヘリコプター・ベンも学者時代と違ってFRB議長になったとたんに現実路線に変わっています。

短期的に目先の円安誘導だけを考えれば、国債買取残高を大幅に増やすとか、ヘリコプターから金をばらまくような手段があるでしょう。輪転機をフル回転させて今年中に発行紙幣残高を今の倍にしてその増えた分を国民に全部ばらまくような手を取ったら円安になるのではないでしょうか。しかしヘリコプター・ベンさえも、過激な政策の副作用を恐れているように、為替さえよければ他はどうなってもいいというものではありません。

そんなに簡単にうまく円安誘導する政策があるようには思えません。今の為替の状況は劇薬を投入すべきまで危機的な状況なのでしょうか??


※今の政府や日銀の政策がベストだと言っているわけではありません


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